棚橋弘至とSANADAの『G1』が素晴らしすぎた

棚橋弘至とSANADAの『G1』が素晴らしすぎた。

2020年10月14日。新日本プロレスが2020年7月に開館した横浜武道館での初興行を行なった。

新日本プロレスワールドで観戦していると通常の会場よりも少し絵面が暗い印象。これは、じっくりと試合を見て欲しいという横浜武道館からの要望だったことがメインイベントでハッキリと分かることとなった。

新日本プロレス初の横浜武道館大会。メインイベントは新日本プロレスのエース・棚橋弘至選手と“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”SANADA選手の『G1クライマックス』公式リーグ戦である。

第4試合でBブロック首位を走る内藤哲也選手が矢野通選手から勝利をしたことで、この一戦の意味が大きく変わった。

棚橋弘至選手はリーグ戦での脱落が決定。SANADA選手もこの試合に勝たなければ脱落が決定する。

この時点で棚橋弘至選手の目標はリーグ戦勝ち越しに変わったはず。試合前に気持ちを切り替えるはそう簡単ではないはず。にも関わらず、横浜武道館を明るく照らす太陽のように軽やかなステップで入場を果たした。

だが、結果として棚橋弘至選手は敗れた。そして、SANADA選手を称えるコメントを残したのだ。

 

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負け越しのエース

残念至極。SANADA選手に敗れた棚橋弘至選手は、最終戦でザック・セイバーJr.選手に勝利したとしても負け越しが決定した。

新日本プロレスのエースとしてど真ん中に返り咲いた夏から2年。

「G1クライマックス」覇者は東京ドームで勝てないというジンクスを打ち破る偉業を成し遂げた棚橋弘至選手ではあるが、2019年に続き辛酸を舐める結果となってしまった。

棚橋弘至選手は「コンディションはここ5年で一番いい」と語っていたそう。これは2017年からリアルタイムで追っている僕でも分かる。

筋肉の張り。肌ツヤ。引き締まったウエスト。キレている。明らかにキレている。

リング上の動きも軽やかでシャープに研ぎ澄まされている。

正直激太り期の試合とは色々な意味で本当に別物だ。

徹底した節制。大きすぎるストレスを鋼の意思で押さえこんだ日々。そこまで努力しても勝てなかった。リーグ戦の負け越しが決定してしまったのだ。

 

SANDAが一番すごいと思ってるよ

僕はこの日のバックステージを見る前に思ったことがあった。悲観することはない。周りが強かった。だから勝てなかっただけだ、と。

棚橋「(※コメントスペースにたどり着くと、力尽きたように大の字になる。『はあ、はあ……』と大きく息を切らせて、しばらく無言。そして……)はあ……『G1』公式戦で、何回、この立ち直れない姿を、はあ……見せてきたか。(公式リーグ戦)最終戦待たずにして、予選通過ができない。はあ……この結果、この現状は、受け止めないといけないし、これが今の新日本プロレスです、っていう現実を叩きつけられて、打ちのめされます。(※上半身を起こし、体育座りになって)ただ……俺じゃなくてね、相手が素晴らしいっていう言い方もできるよ。内藤、飯伏、オカダ……オカダはちょっと違うか、SANADA、EVIL……。俺は、個人的に、SANADAが一番スゲエと思ってるよ。俺が高校生で、プロレスファンで、棚橋vsSANADAを見てたら、きっとSANADAを応援してたんじゃないかな。ちょっと、ひね曲がったプロレスファンだったから(苦笑)。ただほんとに、これが現実。明日から、明日から、来年の『G1』に向けてスタート切ります。(※立ち上がって)いや、今からか。Right Nowだ。Right Now!(※と言い残して控室へ)」

出典:新日本プロレス

 

相手が素晴らしい。いや、ちょっと待ってくれ。

この日、SANADA選手に試合では敗れたものの棚橋弘至選手が負けた(棚橋超えを果たした)とは思っていない。※確かに僕もSANADA選手の応援もしていたが。

一撃必殺とも言えるSANADA選手のスカルエンドに対して、逆に足関節を仕掛けることで脱出。正直、僕はあの破り方をはじめて見てびっくりした。ただ、こうも思う。

スカルエンドは胴締め式ドラゴン・スリーパー(飛龍裸絞め)である。

棚橋弘至選手は藤波辰爾さんから受け繋がれるドラゴン殺法の継ぎ手でもある。本能ではなくロジックで返し方が分かっていた。

ここ一番でスカルエンドを破ることは精神的なダメージも計り知れない。全てを見越した上で、棚橋弘至選手は仕掛けたのだと僕は思う。

 

エースの系譜

棚橋弘至選手はタイプ的にSANADA選手が好きなのだろう。高い身体能力を持ちながら、クラシカルな試合内容や技にこだわるところ。

そこに立つだけで見るものの目を奪う圧倒的な華。そして、強い信念。

SANADA選手は以前、「頭から落とすだけがプロレスじゃない」と語った 。最終的に棚橋弘至選手が東京ドームで今後の新日本プロレスが進むべき道を示したわけだが、団体の課題に対して最初に異議を発したのはSANADA選手だったのだ。

棚橋弘至選手とSANADA選手の試合は正直、あの当時の試合と比較すれば地味である。じっくりじっくりとした一点攻撃。伏線を紡いで紡いでお互いのフィニッシャーにつなげていく。

ステーキ!ピザ!ハンバーグ!とメイン級の料理(誰が見ても盛り上がる技)が次々と出てくるわけではない。

「一汁三菜」

懐石料理の如く胃にも心にも優しい試合である。

危険過ぎる技、相手を破壊してしまうようなリスクのあることはしない。これまでに培ってきた技術と肉体を駆使して、相手よりも高みを目指す詰め将棋。そんな試合だったから、「いやー。これはいい試合だった...」という感想になったのだろう。

確かに棚橋弘至選手は『G1クライマックス』で2年連続で負け越しが決まった。ただ、レスラーとしての価値が下がったのかと言われるとそんなことは決してない。

むしろSANADA選手の格が上がったことでこの試合にはプラスしかなかった。

素晴らしい試合だった。本当に。来年の『G1クライマックス』で目指すのは優勝。棚橋弘至選手は最終戦から先を既に見据え始めている。

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