「まっする3~必殺技大乱発~」でマッスル坂井が描きたかったこと

久し振りの後楽園ホール。久し振りのプロレス生観戦。久し振りのDDT。

2020年11月9日に解砕されたDDTの「まっする3~必殺技大乱発~」に参加してきた。

とても素晴らしかった。『まっする』というブランドはこれからもっと、多くの人々を惹きつけ魅了していく。そんな気持ちで一杯になった。

今日は「まっする3~必殺技大乱発~」のメインイベントでマッスル坂井が描きたかったことについて考えてみたい。

究極的に突き詰めると、プロレスとは人の心を動かす何かだと僕は思っている。

あの飯伏幸太選手ですらプロレスにおいて身体能力は最重要項目ではないと語った。

人間離れした身体能力や身体性は観客に驚きを与えるに持ってこいの個性だ。

ただ、人の心の本質的に動かすには、別のものが必要になる。

そういった意味で、僕の令和2年のベストバウトは2020年9月21日に行われた「まっする3~必殺技大乱発~大公開通し稽古」平田一喜選手VS HARASHIMA選手なのである。

試合内容だけで言えば徹底的に平田一喜選手がHARASHIMA選手の攻撃を受けるというもの。

リングの上での単純な勝ち負けで考えると、平田一喜選手が勝利するイメージは全く湧かなかった。

ただ、僕はこの試合を何度見返しても目頭が熱くなってしまうのだ。

この瞬間、全力で生きているというライブ感。今しかない、限りある人生の中でも本当に大切な1ページ。

そんな言葉で表現できないような何かがあのリングにはあった。あの空気を作ったのは、観客、そしてリングをぐるっと囲んだDDTグループのレスラー(仲間)たちである。

 

カタルシスこそプロレスの醍醐味

「平田さん!」

「平田くん!」

「目を逸らすな!耐えろ!耐えろ!」

リングに飛び交う声、声、声。

平田一喜選手の背中を押す言葉一つひとつが本当に美しかった。

いや、リングで感情をぶつけ合っている2人を含めた会場全体が本当に美しかった。

それを肌で感じたからだろう。マッスルさかいさんは、通し稽古の本番を見送った。

あの2.9次元ミュージカルは再現できない。できなくはないだろうが、博打の要素が強すぎる。

台本にないドラマ。一度きりのアドリブに2度目はない。平田一喜選手が120%を出して、HARASHMA選手が応えた。

普段はダンスで会場を湧かせるポップスターがさらけ出した感情が生んだ感動とカタルシス。あの時間は演出でなんとかなるものではないのである。 

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助け合い、つなぎ合う気持ち

僕は今回のステージを作る上で、もう一つ問題があったと思っている。

シンプルなことだが、まっする3に対する期待値が爆上がりしたことである。

そう、僕ですら会場に足を運んだのだ。げんがい色々と制約があるのであれば、配信を観ればいいと思っていた僕がこれだけは生で見なければと後楽園ホールへ駆け込んだ。

まっする3にはそれだけの熱視線が注がれていたのである。

ただ、その期待(僕にとっての)を作ったのは平田一喜選手のアドリブである。

全く違ったアプローチ。違うテーマで2.9次元ミュージカルを作るのであれば、どんなコンセプトになるのか。

その答えとして用意してきたのが2.クインテットルールの団体戦だった(クインテットは桜庭和志さんがプロデュースしている大会である。桜庭和志さんはUWFインターナショナル出身)。

その内容は新日本プロレスとUWFインターナショナルの団体戦をオマージュしつつ、プロレスラーがプロレスルールではないもので、“真剣勝負”を行うというもの。

平田一喜選手がリング上で「まっする」の主役を演じ切ったことに対する感情を爆発させた9月の品川とは全く別のアプローチで結末を描こうとしたことが分かる。

DDT所属のプロレスラーは強いのか?そういった側面もあったとは思う。ただ、それ以上にレスラー同士の真剣勝負を通じた、人の心のつながりを表現したかったのではないか?

僕はあの5対5の団体戦についてそう解釈している。

 

団体戦の勝敗ではなく

団体戦の勝敗や動画配信サービス「DDTユニバース」をチェックして欲しい。

今、僕たちはこういった状況下で生きている。

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プロレスをやる方も見る方もさみしい。本当であれば声を出して選手を応援したいし、何も気にせずに笑ったり泣いたりしたい。

そんな僕たちの気持ちを代弁するかのように、「必殺技男子( フィニッシュダンシ)」と「パイプ椅子男子」は真剣勝負を戦い、リングを降りれば仲間のために声を張り上げた。

同じ気持ち気持ちでつながった仲間たち。直接手を貸したり、何かをしてあげることはできなくとも、応援したり、メッセージで心の支えになることはできる。

そんなメッセージを「まっする3~必殺技大乱発~」のメインイベントに込めていたのではないだろうか。

メインイベント後に登場した男色ディーノ選手のツイートには考え深いものがあった。

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