エル・デスペラードの中にあるLOVE and HATE

エル・デスペラードの中にあるLOVE and HATE。目には見えない。触れられない。そんな感情が、新日本プロレスの後楽園ホール大会を支配した。

「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア27」2日目。聖地・後楽園ホール。例年との大きな違いは鉄柵がある、という点である。ある意味で“今”を最も表現していたものだったのかもしれない。

ただ、そんなことが気にならないほどにジュニア戦士たちは躍動した。中でも、一際大きな何かを抱えていたのがこの選手だったのかもしれない。

この日のエル・デスペラード選手には何かいつも以上に執念や怨念めいたものを感じていた。

惜しくも「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア27」欠場となってしまった金丸義信選手のお株を引き継ぐような、膝一点集中攻撃。

解説席に座っていた獣神サンダー・ライガーさんが「なぜ、試合を決めにいかないんだ?」と疑問符を浮かべる。

さらには椅子を取り出して、膝は一閃。完璧に膝を痛めつけた上でヌメロ・ドスを繰り出し、ギブアップを奪った。

これまでもエル・デスペラード選手と高橋ヒロム選手の愛憎入り混じる試合は沢山あった。

ただ、なぜだろう。その中でも特にこの試合は、エル・デスペラード選手の色が目立ったような気がしている。

彼の胸を埋め尽くしたのは、一つの言葉だった。

オマエ、オレのこと『べつに』って言ってたじゃん。大嫌いだって昔。俺は大好きだって言ってんのにさあ。それが終わったと思ったら『べつに』かあ? どうだ? 『べつに』っていうのはよ、好きでも嫌いでも興味がねえってことなんだよ。これで、また俺に興味持ってくれた?

「別に」。

沢尻エリカさん以来のインパクトが後楽園ホールに走った。

youtu.be

問題の動画がこれである。

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愛を、知りたいのです。

現在、大ヒット中の映画「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。

この物語は、1人の少女ヴァイオレット・エヴァーガーデンが“愛の意味を知る”というストーリーが中軸となっている。

家族愛、兄弟愛、恋愛...。多くの愛の形に触れることで、人と触れ合うことで、ヴァイオレット・エヴァーガーデンは決して目で見ることのできない愛の意味を学んでいく。

ただ、エル・デスペラード選手の愛はこの物語に登場しなかったなぁと今日の試合を見ながらぼんやりと考えていた。

色々な背景とか無粋なことは書く主義じゃない。なので、察して欲しい。この2人の間には何かがある。後に貼っているエルたんデスペラード選手のツイートを見ても「いつかのことだったり」と僕たちが知らない過去に何かがあったことは明白である。

愛であり、憎しみであり、歪な友情。狂おしいほどの愛。光と闇という決して混ざり合ってはいけない関係。ただ、それぞれがそれぞれの価値を高め合っているという関係。

2人にしか分からない、2人だけが理解すればいい世界がある。

 

俺の方が強かった

2年前の「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」で高橋ヒロム選手から勝利したエル・デスペラード選手はリング上でこう言い残していた。

オイ、ヒロム。あんなに待ってたのに、『大嫌い』なんてさみしいこと言うなよ(※場内笑&大拍手)。答え合わせしてやってもいいぞ(※場内驚き)。お前、(俺の正体が)『わかる』っつっただろ!? じゃあもう隠したってもう意味ねぇもんな(※場内騒然)。あ~あ~あ~あ~、んなワケねぇだろ、バカどもが!(※場内笑&大拍手) いつもいつも自分たちのハッピーエンドになると思うなよ。これが現実だ。俺のほうが、ヒロムより…強かった

出典:新日本プロレス 

そして、バックステージではこう語っている。

デスペラード「ああ、バケモンだな、ありゃ。昨日も言っただろ? 逃げも隠れもしない。それはなんでかわかるか? チャンピオンだもん。負けねえよ。このリーグ戦はシングルだけど、タッグのベルトは見栄えのために持ってきたから本当は意味はねえ。まあ、でもこいつらのおかげで助かった。やっぱり離せないな、こいつら。だが、どうしても欲しいものがある。優勝しただけじゃ手に入らないからな。でも、優勝すれば必ずその道が開けるはずだ。KUSHIDAとヒロムとマーティー・スカルもなんか似たようなことを言っていたな? ええと、ジュニアの誇り? てっぺんに上げる? おお、がんばって上げてくれ。お前たちが押し上げてくれたそのステージの中で俺は一番をもらうよ。俺がそのステージに上がるんじゃない。お前たちが押し上げてくれるんだ。ありがとう。助かるよ。愛してるぞ、お前ら。俺のために働いてくれ」

出典:新日本プロレス

そして、試合後には火照った身体を冷ますかのように、Twitterの更新を連発。ファンにこの日の試合の意味について改めてメッセージを送っている。

 

LOVEorHATE

好きでも嫌いでもどっちでもいい。ただ、お前の感情をこちらに向けたかった。

俺をもっと意識して欲しかった。そんな健気で屈折した感情がこの日のエル・デスペラード選手にはあった。

これは高橋ヒロム選手に対しての指摘だけでない、バックステージで語られたように歪すぎるほどの試合順を組んだ新日本プロレスへの宣戦布告でもある。

正直、「IWGPジュニアヘビー級王者」石森太二選手はこの状況に対して、苦言を呈していいと思う。エル・デスペラード選手が「石森が何も言わねぇから」と残したのもそういう意味だろう。

シングルのチャンピオンでもない。タッグではチャンピオンに連戦連敗。ジュニアの象徴であることには一切否定しないし、全くもってその通りなのだが、今回の「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア27」に関して言えば、試合順が露骨すぎた。

11月25日の新潟大会以外は全てメインイベントが高橋ヒロム選手。タイムボム一強体制に待ったを掛けるのはエル・デスペラード選手を置いて他にいないとも言える。

ただ、高橋ヒロム選手にしてみればとんでもないプレッシャーである。ヤングライオンとの公式戦以外は全てメインイベント。しかもこの大会で結果を残すことができなければ、東京ドームでの試合すら危うい。

正確に言えば、先日の「IWGPジュニアタッグ選手権試合」のように珍しく説得力が低い主張での挑戦は彼のブランドにも傷をつけることになる。

それでも何かを起こしてくれる。そんな高橋ヒロム選手に期待をしてしまうし、高橋ヒロム選手が輝けば輝くほど、その裏で暗躍しているエル・デスペラード選手が気になってくる。

次の「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア27」公式戦は11月20日の後楽園ホールだ。

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