SHO「いましか見てねぇんだよ!」“同級生”対決に感動
2020年12月2日。新日本プロレスの「大阪・大阪市中央体育館・メインアリーナ(丸善インテックアリーナ大阪)」大会で新日本プロレス生え抜き同士のメインイベントが行われた。
「ベスト・オブ・ザ・ジュニア27」公式戦。“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”高橋ヒロム選手VS“ロッポンギ3K”SHO選手の一戦である。
試合開始早々。ラリアットをぶつけ合う。
首元のテーピングが痛々しいSHO選手と前回の試合でロビー・イーグルス選手に膝を徹底的に痛めつけられ高橋ヒロム選手。
満身創痍。満身創痍だからこそ、出てくる魂の叫びがある。
ここで前提の知識を一つ。
高橋ヒロム選手とSHO選手はヤングライオン 時代、同じ釜の飯を食べた仲だ。
高橋ヒロム選手が寮長の時代。SHO選手はYOH選手、EVIL選手、高橋ヒロム選手と共に日々、切磋琢磨しながら己の牙を、爪を磨いてきた。
次ではなく、今しか見ていない。
闘志と勇気が時限爆弾の爆発力を上回った試合だった。
SHOがヒロムとの壮絶バトルにシビれる大勝利!
— 新日本プロレスリング株式会社 (@njpw1972) 2020年12月2日
デスペラードは無法ファイトで王者石森を屈服!
首位は石森、ヒロム、デスペ、SHOが並ぶ大混戦に!
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SHOのストロングポイント
SHO選手にはある特徴がある。日頃「僕にはパワーしかない。持ち上げるとかしか取り柄がない」と語っているが、僕はもう一つSHO選手の長所を知っている。
それは、分析能力である。
この相手に必ず勝つと決めた試合では、徹底的に相手の技を分析してくる。
この日もそうだった。タイムボム対策だけでなく、Dの悪夢についても徹底的に研究していた。
世界の獣神が「なんちゅう外し方だ!」と度肝を抜かれたあの形も最終的にはパワーでイケると考え抜いた結果だろう。
「ベスト・オブ・ザ・ジュニア27」で優勝するため。同じ歳の先輩に勝つため。
YOH選手が不在の穴(不安)を誰にも感じさせないくらい自分が強くなる。今回のシリーズを通じてSHO選手が更に強く、逞しい存在になりつつある。
来い!SHO!!
試合の最終盤。“鷹木式”左右のラリアット連打が高橋ヒロム選手に襲いかかる。
10発以上食らった高橋ヒロム選手はグロッキー状態。ここに追い討ち1発と後ろからラリアット。更には正面から(“SHO式パンピングボンバー”)を見舞う。
この時、高橋ヒロム選手は「来い!!!SHO!!!」と叫んだ。
明らかに余裕はない。こんなタイミングで発する言葉でもない。
この試合に勝つのであれば、避けなければならない1発なのだ。
高橋ヒロム選手は避けなかった。いや、避けられなかった。
ジェイ・ホワイト選手のようにへたりこめば、避けれたはず。それでも受ける道を選んだ。
あの1発を受けたら自分が負けるかもしれないと分かっていながら、である。
ここに2人の、2人だけのドラマがあるのだと思う。
では、ここでSHO選手が新日本プロレスでデビューを飾った時のインタビューを見てみよう。
——入門テストはどうでした?
田中 一応、1発で受かったんですけど、僕は体力というよりも、とにかく受験者の中で一番声を出していたと思います。声がガラガラになって、そのあと1週間ぐらい声が出なくなるぐらいでした。体力的な内容でいえば、プロレス学校で1年間やっていた小松(洋平)がダントツでできていたと思います。
——11月19日にデビューする同期ですね。
田中 そうです。自分は不器用なんで、入門してからも小松と比べられて。悔しい思いをたくさんしていました。あっちは最初からロープワークとかもできていましたから。
——やはりライバル視していますか?
田中 そうですね。歳は向こうが一つ上なんですけど、やっぱり同期なんで。普段は励ましあってますが、試合になれば別です。
——辞めようと思ったことは?
田中 正直、何度か考えました。それでも、同期の2人で励ましあったり、高橋(広夢)さんや渡辺(高章)さんに相談して励ましていただきました。
「ヤングライオン」
アマチュアレスリングを中心に他のスポーツを経験してきた才能の原石ですら何度も心が折れかけてしまう。
僕たちでは想像もできないような険しく過酷な崖を登らなければならない時期である。
そんな時に支えてくれたのが高橋ヒロム選手だったのだ。
そんな時代があったからだろうか。高橋ヒロム選手のバックステージが非常に印象深いものとなった。
ヒロム「(インタビュースペースにたどり着くと倒れ込んで四つん這いになり)こんなに、こんなに、こんなにも悔しくて……おかしいこと言うぞ? おかしいこと言う。自分で言ってて、変だと思う。こんなに悔しくて、こんなにうれしい負けは初めてだ。こんな思いになってしまったら、俺自体が許せない。
なんだ、この数カ月、あいつに何があった? 信じられないぐらい強い。今年、こんなに完敗だって思うのは2回目だな。でも、借りは返すぞ。SHO、そしてデスペラード、お前らに負けたままでいられるか。楽しみが増えた。それだけだ」
嬉しい負け。あの頃、「高橋さん!高橋さん!」と懐いていた同級生が「ヒロム!!!」と叫んで向かってくる。
プロレスラーはプロレスという競技の中で、技や攻撃を通じて心の会話を交わすという。
負けたことが嬉しいなんて、そんな素敵な関係他にあるだろうか。その気持ちがファンにしっかりと届くだろうか。
僕はプロレス以外でこんな気持ちになることはない。だからプロレスが好きなのだ。
※コスチュームのレガースはどれくらい硬かったのだろうか?
そして、何よりも「ベスト・オブ・スーパージュニア27」開幕前と後でどれだけSHO選手に対するが見方が変わったのか。
いつか、どこかで高橋ヒロム選手には語って欲しい。
そして、いつか、いつかこの日が来ることを願っている。
H.E.S.Y(ヒロム、EVIL、SHO、YOH)。あの頃、同じ時間を生きた男たちの絆は強く深い。
いましか見てねえんだよ!
試合後、SHO選手は「優勝、優勝、それしか見てねえ。今年の俺はNEXTなんか見てねえんだ。いましか見てねえんだよ!」と語った。
マインドフルネス。禅の世界では今に集中するということが書いてある。
今しか見ないことで、ゾーンに入れることができるようになったSHO選手。その今が、完全にNEXTへとつながっていくのだ。
「ベスト・オブ・スーパージュニア27」優勝へ、新日本プロレスジュニアを背負う男として、SHO選手がまた一つ大きな一歩を踏み出した試合となった。
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