棚橋弘至と令和3年1月18日の後楽園ホールに集まった396人

棚橋弘至と令和3年1月18日の後楽園ホールに集まった396人について書きたい。

たった今、新日本プロレスの「Road to THE NEW BEGINNING」後楽園ホール大会2日目が終了した。

メインイベントは棚橋弘至選手と鷹木信悟選手による「NEVER無差別級選手権試合」の前哨戦。脇を固めるのはマスター・ワト選手とBUSHI選手だ。

仕事を終えて帰宅。僕が新日本プロレスワールドを点けるといきなり違和感があった。

今日、お客さん少なくないか?

そこから試合が進むに連れて会場全体を映したシーンで驚いた。

言葉を選ばずに言えば空席がかなり目立つ。目立つというか、僕が新日本プロレスを見始めてからこんなにお客が入っていないのは初めてだった。

新日本プロレス公式はこの日の来場者は396人だと発表した。

もしも、社会的に何も起こっていなければ1000人少ない。普段よりも1000人も少ないのだ。

他責にするのは良くない。ただ、18時からの興行スタートは仕事終わりに急いで駆けつけても第一試合に間に合わない可能性がある。

当日券を販売していないため、急にスケジュールが空いていきたくなったお客が中に入れない。

また、こういった状況なので外出を控えている方だって多いはず。

人気が下がった訳でも自分たちの責任で大きなアクシデントが起こった訳でもない。

メインイベントを締めた棚橋弘至選手の胸中に浮かんだのは悔しさ、憤り...。だけではなく、こんな状況でも会場を足を運んでくれた396人、そして新日本プロレスワールドやサムライTVを見ているファンへの深い愛だった。

 

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会場で見るプロレス

ご存知の方も多いと思うが、僕は在宅で観戦する方が明らかに多いタイプだ。

会場での観戦と自宅でゆっくりしながら新日本プロレスワールドを見る。この2つを天秤にかけると僕の場合は、自宅観戦をしがちなのである(プロレスに限らずそうなのでそういうタイプなのだと思う)。

ただし、大切な時でタイミングが合う時は必ず会場へ足を運ぶことにしている。

“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”6人目のメンバーお披露目。KUSHIDA選手退団、飯塚高史選手引退など。

心のどこかでは、会場に行った方が楽しいと知っている。会場でしか感じることのできないカタルシスがあることを知っているのだ。

ネガティブな結果に終わったこの日、棚橋弘至選手のマイクで「行けばよかった...」と正直思った。

ハイフライ・フローで勝利した瞬間から、棚橋弘至選手は全然違った。

いや、正確には試合前から違った。

入場時から鬼気迫る表情。鷹木信悟選手を相手におそらく不利だと分かっていながらラリアットの応戦を挑む。

一方で、チャンピオンとしてチャレンジャーに打ち負けないと全身全霊の力を込めて耐えた鷹木信悟選手のことも忘れてはならない。何人ものレスラーを窮地に追い込んだドラゴン張り手(ビンタ)すら耐えきった。

「お前が偽りじゃないなら、もっと来い!再起なんて生易しい場所じゃねぇんだよ!!『NEVER』って場所は!」と言わんばかりに感情むき出しの応援。

鷹木式ツイスト&シャウトも炸裂。これからの時代を作っていくのは偽りのお前じゃなくて、俺なのだ!という気概を感じる熱いファイトを魅せる。

ここで黙っていないのが新日本プロレスのエースたる所以だろう。スリング・ブレイドをキメ、ハイフライ・フローを飛んだ。

これは前哨戦だ。タイトルマッチも決定しているため、無理をせずともいいシーンである。改めてテキサスクローバーホールドを使っても勝利を掴めたはずなのに、棚橋弘至選手は敢えて飛んだ。

その理由は久しぶりのエアギターの後に語られた。

「ワトもありがとう。今日はね、どうしてもハイフライフローで決めたい理由があって。それは、ハイフライフローを飛び続けてきた僕の記憶、それは新日本、新日本プロレスを盛り上げてきた記憶、そのものだから。だから、いまは我慢して、我慢して、悲しみも! 苦しみも! 悔しさも!!(涙声で絶叫)。全部! エネルギーに変えていきます!!(場内拍手)。というわけで、ちょっくら、NEVER、獲ってきます(場内拍手)。じゃあ、最後に! 会場のみなさん! そして、『(新日本プロレス)ワールド』をご覧のみなさん! 愛してま~す!!」

出典:新日本プロレス公式

※2019年11月18日が後楽園ホールで最後のエアギターだった説あり。確かにかなり久しぶりな印象があった。詳しい方がいれば教えて下さい....。

 

エースの涙と過去の記憶

40を過ぎて泣く男。最近、棚橋弘至選手は涙脆くなったなぁとは思う。

脳科学的には年齢を重ねたのが理由になるわけだが、そんな理屈をすっ飛ばして大切なものがあると僕は思う。

子供の頃、「強くあるために泣くな」と親に叱られたことがある。この指摘に僕は当時から違和感があった。

何かに感動した時だったり、自分ではない何かのためにだったら泣いてもいいのではないか。

鍛え抜かれた肉体と決して諦めない強い精神力を持った棚橋弘至選手が人目を憚らず感情的になって涙を流している。

その光景を見ると、やっぱり人は泣いてもいいのだと心から感じた。

棚橋弘至選手がマイクを掴んで、この客席についての気持ちを語り始めたくらいから、僕も泣いてたんですよ。何で、後楽園ホールに行かなかなったんだろうって。

そりゃ、色々な理由を付ければ行かない方がいいし、冒頭で書いた通り、僕は自宅観戦がメインのタイプだったりもするし。

でも、行ける時はやっぱりいいったほうがいいかもなって。そう思わせる魂が棚橋弘至選手の言葉には詰まっていた。確かに今は声も出せないし、制限も多いけれど。敢えて、棚橋弘至選手がハイフライフローを飛んだように、敢えてこの状況だから試合を観に行くという考え方もアリかもしれない。

 

NEVERに行く理由ができた

棚橋弘至選手と言えばやはり「IWGP」だろう。

鷹木信悟選手が新年早々「NEVER無差別」の新しいチャレンジャーとして棚橋弘至選手を指名したところから生まれた因縁だが、どうしても棚橋弘至選手と「NEVER無差別」には距離があったように思う。

ただ、この日を境に潮目が変わった。

「NEVER ギブアップ」

どんな状況でも諦めない、再起を懸けるのは棚橋弘至選手だけではなく、新日本プロレスも同じだったのだ。

ここで棚橋弘至選手が鷹木信悟選手に勝利すると新しいブランドと物語が生まれる。

NEVER王者・棚橋弘至。

もしも、この状況が生まれた場合、「NEVER」の創始者が黙ってないだろう。

ノーオクパードでノーカンサードな内藤哲也選手が久しぶりに「NEVER」に目を向けるキッカケとなるのは間違いない。

棚橋弘至選手は「チャンピオン・内藤哲也にチャレンジャー・棚橋弘至」が挑む展開を「二冠王」時代にやりたかったと語っていた。

「IWGPインターコンチネンタル」で何度となくあったシュチュエーション。ただ、あの時とは既に状況が全然違う。

スターダストが作った遺産を制御不能なカリスマが取りに行く。この展開は熱くないだろうか。※内藤哲也選手と高橋ヒロム選手も地方でしか見せないようなじゃれあいをこの日見せていた。理由もなくやる2人じゃない。きっと、棚橋弘至選手と同じ気持ちが2人にもあったのだろう。

棚橋弘至選手だからこそできる新しい「NEVER」が必ずある。2021年1月18日の後楽園ホールと逸材の涙から、新しい物語が進み始めた。

最後に。“レインメーカーショック”が起こる直前の2010年〜2011年に放送されていた仮面ライダーオーズ/OOOのOPテーマを久しぶりに聴いたらぶっ刺さったので、ここに歌詞を残しておく。

要らない持たない夢も見ない
フリーな状態... それもいいけど

運命は君 放っとかない
結局は 進むしかない

大丈夫。明日はいつだって白紙(Blank)
自分の価値は 自分で決めるものさ

Anything Goes! その心が
求めるものに
正直になればなるほど
Life goes on! 加速ついて
止められなくて負ける気しないはず!

1からのスタート そこから
足し算を飛ばして かけ算で駆け上がっていって
Anything goes! Goes on...

大黒摩季 Anything goes!

2019年以降、長くシングルのベルトを戴冠していない棚橋弘至選手。自由でいろいろなことにチャレンジする姿もいいけれど、やはり運命は彼を放っておくことをしなかった。

現役で居続ける限り、彼の再起と新日本プロレスの再起は同義である。

棚橋弘至選手には第三世代やライバルたち(中邑真輔選手、後藤洋央紀選手ら)と共に奇跡的なV字回復を実現させた歴史が彼にはある。

今はオカダ・カズチカ選手や内藤哲也選手、飯伏幸太選手、高橋ヒロム選手など、頼もしい後輩たちが沢山いる。

今度は超満員札止めの後楽園ホールで「愛してます」と叫んでほしい。そして、その時には僕も会場に足を運んでいたいと思った。

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