“NEVER王者”棚橋弘至が見た、鷹木信悟の世界

 “NEVER王者”棚橋弘至が見た、鷹木信悟の世界について書きたい。

濃厚過ぎる35分40秒だった。

ガッツリと多幸感に包まれつつ、余韻に浸りたいという気持ちこそグレート-O-カーン選手にぶち壊されたが、この試合の価値が下がった訳では全くない。

2021年1月30日、新日本プロレスは、愛知・愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)大会を開催した。

改めて本当に凄い試合だった。

棚橋弘至選手の“棚橋プロレス”は相手の実力をこれでもかと引き出しつつ、自分が最終的に美味しいところをいただくというもの。

エースたる所以は、対角線に立つレスラーの実力も格も引き上げることにあった。

ただ、鷹木信悟選手の場合は違った。

これまでに見たことがない棚橋弘至選手が出てきた。

例えばラリアット。

棚橋弘至選手のラリアットといえば、2011年に小島聡選手と「IWGPヘビー級選手権試合」を戦った時に掟破りの一撃が思い浮かぶ...ってそれくらい使わない技なのだ。

また、普段は絶対に見せないヘッドバットも披露。

鷹木信悟選手が生み出した“激烈”な戦い。本当に後楽園ホールのバックステージで語った言葉が現実のものとなった。

「それが鷹木信悟の世界。NEVERの世界か。じゃあ、俺が飛び込んでくしかねえな」

棚橋弘至選手が「NEVER」の世界に飛び込んだ。

新NEVER王者・棚橋弘至。今の、NEVERの価値がストップ高になっている。

 

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最高も最強も独占

まずは、ちょっと違う角度からこの試合を考えてみたい。

棚橋弘至選手は以前、(今の新日本プロレスについて)お弁当の中身を変えずに外側の包装紙を変えたと語っていた。

そのまま解釈すると、中身の熱さ、試合の激しさはそのままに、時代にマッチした見た目にしたということだろう。

その時、間違いなく勢いがあったプロレス団体は「ドラゴンゲート」だ(10年以上前、僕がプロレスを見ていない時期に上司からお勧めされたほど)。

派手でチャラい。それまで男性しかいなかったプロレスの試合会場に女性を引っ張ってくるにはどうすればいいか?

その先陣を切っていたのが「ドラゴンゲート」。棚橋弘至選手もここから参考にしたものは少なくないと思う。

あれから10年以上が経ち、「元ドラゴンゲート」のトップレスラーだった鷹木信悟選手が棚橋弘至選手を迎え撃つ側に回っているのは非常に面白い。

ミラノ・コレクションA.T.さん(元ドラゴンゲート)が解説席に座っていた理由だって間違いなくあると思う。

結果は、2021年のベストバウト候補に入る一戦となった。

それぞれがそれぞれのルーツで培ってきた技の応酬。さらには掟破りまで何度も繰り出した。

 

怖い棚橋が出てきた

龍とドラゴンが最高と最強を懸けて激突する。

この試合が凄すぎた点は前述した通り、鷹木信悟選手がこれまで見たことがない棚橋弘至選手を引き出したことだろう。

例えば、キラー・棚橋。

悪には悪で対抗する。ヒールターンすることなく、その試合限定で雰囲気をガラッと変えて試合をする棚橋弘至選手特有のスタイルがある。

2020年にグレート-O-カーン選手の背後から椅子で襲撃をかけた時もそう。

ヒールを相手に冷たい気持ちなると飛び出すのが“怖い棚橋弘至”だったはずなのだが、“激烈”な戦いの中でその本性が少しだけ飛び出してきた。

背後から雪崩式のドラゴンスクリュー。あの技を決めた時の棚橋弘至選手の表情が本当にヤバい。怖い。

恐らく今回の試合が“棚橋ワールド”ではなく、“鷹木ワールド”で繰り広げられたことに起因しているのだと思うが、明らかに普段とは違う棚橋弘至選手だったことは間違いない。

 

プレッシャーに打ち勝つエース

今回、棚橋弘至選手は背水の陣だった。

「NEVERは獲って当たり前」と鷹木信悟選手を挑発しつつも、自らを追い込んでいたのは間違いない。

「IWGPヘビー級&IWGPインターコンチネンタルW王者」の飯伏幸太選手を「G1クライマックス」のリーグ戦で破っていることからも、持っているベルトの数と歴史は違えど、実力に差はないことは明白なのだ。

直接肌を合せ、人間性に触れ最終的には鷹木信悟選手に惚れた棚橋弘至選手。

「NEVERは手段」と言い切っていた彼が試合終了直後にもう一回というサインを出した瞬間、改めてプロレスって素晴らしいなと思った。

ここ数年で最高の前哨戦と最高のタイトルマッチだったように思う。いや、最高と最強は確かにこの日にあった。

が、グレート-O-カーン選手が全てをぶち壊しに掛かった。彼も帝国再建のため、茨の道を歩こうというのか...。

 

鷹木信悟から学ぶべきこと

高橋ヒロム選手が鷹木信悟選手について、解説席でこう語っていた。

「鷹木さんはテンションでなんとかしちゃうんですよ」と。

確かにこの日の鷹木信悟選手は大声を張り上げて自らを鼓舞し続けていた。

大声を出すカロリーを考えると黙って体力を回復させた方がいいと考えるのが僕のような素人なのだが、あの試合を見る限り全く逆に作用しているようにも見えた。

膝攻めの天才こと棚橋弘至選手に追い詰められた鷹木信悟選手はとにかく叫びまくっていた。

テンションを高めて本性と本能を曝け出す。その結果、対角線に立つ相手も丸裸にされる。

自分の技が鷹木式として奪われる。そのムーブ時代も本当の自分と向き合うための儀式。

“鷹木プロレス”とは風車の理論とはまた違った方程式で完成する世界観なのだ。

気分が優れない時、元気がない時。鷹木信悟選手のようにテンションを自ら上げてコントロールする術を学ぶことで、人生が明るくなるかもしれない。

そんなことをこの試合を見終わった後に思っていた。

そして、結果では負けたものの、爽やかなコメントを残してた鷹木信悟選手。本当に棚橋弘至選手が惚れるだけの魅力溢れる快男児だ。

鷹木「(※足を引きずりながらコメントスペースにやって来て、たどり着くとあぐらをかいて)いやあ、やられたね。見事にやられたな、棚橋弘至。絶対、負けたくない、負けられない一戦だったが……やられたよ。こんなこと言ったら柄じゃねえかもしれないけど、俺はうれしかったよ。うれしかった。目の前に、凄くて、強い棚橋がいたからな。試合中にも、ワクワク、ワクワクしたぞ。まだまだ俺も修行足んねえな。まあ別にこの1試合で、負けたからって、落ち込むことねえよ。言ってんだろ! 

俺のNEVERは、“NEVER BETTER”! 常に絶好調だ。いやあ、今日、1月だろ。2021年、あと11カ月あるんだ。関係ねえよ、今日の負けなんか。残り11カ月、暴れ龍のごとく! ベルトがあろうがなかろうが、闘ってやるよ。(※立ち上がりながら)オイ棚橋、俺は執念深いからよ、リング上で『もう1回やろう』って言ったこと、忘れんなよ! 出直しだ!」

出典:新日本プロレス

中邑真輔選手が「IWGPインターコンチネンタル」を白く染め上げたように、鷹木信悟選手の手によって「NEVER」の色がさらに輝いている。

新NEVER王者・棚橋弘至選手が見せるプロレスが今から楽しみだ。

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