「俺の家の話」のスーパー世阿弥マシンについてプロレスファンが考える。
「俺の家の話」のスーパー世阿弥マシンについてプロレスファンが考えてみたいと思う。
“TOKIO”長瀬智也さん主演のドラマ「俺の家の話」第3話が放送された。
急展開に次ぐ急展開。観山家の状況は既に第一話とは大きく変わってしまった。
以前から、テンポがよくリズミカルな脚本に定評があった宮藤官九郎さんだが、本作でもその筆力を魅せつけてくる。
観山寿三郎(西田敏行さん)と志田さくら(戸田恵梨香さん)の関係も大きく変化してきおり、今後の展開からも目が離せない。
と、こういったお話はドラマを専門に扱っている媒体さんにお任せするとして...。
プロレスファンの目線で見た面白さを今回も追及していきたい。
まず、第3話で最初に「マジか」となったポイントは、武藤敬司選手と蝶野正洋さんが同時に出演を果たしたことだろう。
確かに第一話の冒頭で、ブリザード寿(観山寿一)は武藤敬司選手と蝶野正洋さんと試合をしたというエピソードが流れた。ただ、マジで出演してくるとは思わなかった。
あくまでもドラマなので細かい点に突っ込むのも野暮な話だが、さんたまプロレスは経営状況が芳しくないらしい。ブリザード寿に復帰を依頼した状況にも関わらず、闘魂三銃士の2人が解説席に座らせるのはギャラ的にキツいのではないか...。
と、思わずいい意味でのツッコミを入れたくなる余白というものが物語には大切なのだ。
ただ、各プロレス団体は現在の社会状況もあり、苦戦を強いられている。
会場を満席できない。物販はできても、サイン会、写真撮影会、握手会などは難しい現状だ。
もしも、「俺の家の話」を通じてプロレスに興味を持ったら今すぐに会場へ行こう!とは口が裂けても言えないが、その興味を出来るだけ長く持って欲しいと心から願っている。
プロレス団体によっては、オンライン配信もあるので、もしも興味を持った場合はそこからスタートしてみるのもアリだ。
それでは本題に入っていこう。
惜しまれつつ引退したブリザード寿が覆面レスラーとして復帰。その名もスーパー世阿弥マシン!謎の?覆面レスラーについて考えてみたい。
家業を継ぐために一度引退して、すぐにスーパー〇〇〇マシンとして復帰するプロレスラーあるある。第3話もひたすら身につまされました。#俺の家の話 pic.twitter.com/0F0akeBcOb
— スーパー・ササダンゴ・マシン (@abulasumasi) 2021年2月6日
彼がヒールになった理由
引退前の雰囲気を見る限り、ブリザード寿はベビーフェイスのレスラーだったように思う。
と、その前にこのコラムを読んでいる方がプロレスの知識が全くないことを踏まえて軽く補足しておく。
プロレスには善と悪という概念が存在する。
善はベビーフェイス、悪はヒールと呼ばれている。
ヒールは反則など手段を選ばずに攻撃をしてくる。ただ、悪いというよりも「悪いことをしてでも勝つ」ということをリングで表現している。
一方でベビーフェイスは反則行為を“ほぼ”行わない。正統派のプロレスでヒールの技を受け、最後に打ち破る。
また、正義が悪の道に走ったり、ヒールが正義に目覚めることも珍しくない。
裏切り、再結成、結託。さまざまな人間関係がリングを通じて描かれているのがプロレスの魅力なのだ。
今回、観山寿一はスーパー世阿弥マシンとして復帰する際、「ヒール」を希望していた。
サラッと言ったが明確に自分の意思を伝えている。この背景には、どこにも出せない己の感情をリングで爆発させたいというメッセージが込められていたと解釈している。
せめて、リングの上だけは自由になりたい。自分の全てを曝け出して好きなことがしたい、と。
長州力さんは「好きなことを仕事にしないことの幸せ」について語った。この言葉が年齢を重ねると胸に染みる。
好きを仕事にする
プロレスラーの人を見ていると、なんだかんだでプロレスが好きなのだなぁと思うことがある。
プロレスラーは現役が長い。武藤敬司さんがプロデュースしているプロレスリングマスターズなら登場するレスラーの年齢層はベテランの域を通り越している。
ただし、年齢を重ねたら重ねたなりのプロレスが存在している。
技のキレやスピードが、かつてよりも劣っていてもそれ以外のところで魅せることができる。これがプロレスだ。
ただ、そんなプロレスという生き方を選んだ長州力さんが「好きなことを仕事にしないほうが幸せ」と語ったのが非常に引っかかる。
ある意味でYouTuberのキャッチコピーだった「好きなことで生きていく」の真逆のメッセージ。
「俺の家の話」はコミカルに描いてこそいるが、話のテーマ自体は半端じゃなく重たい。
だからこそ、好きなことを仕事にしない意味について深く考える必要があるのだ。
ただし、再びブリザード寿はリングへと帰ってきた。スーパー世阿弥マシンとして。
ファイトスタイルを分析
能の世界に戻ったことで、ブリザード寿時代とは、別のファイトスタイルに変貌したスーパー世阿弥マシン。
お面(オーバーマスク)を付けた状態は静。外した状態は動を表現している。
能で鍛えた体幹を武器に相手の技を交わしたり、受け流したりする様はかなり異様な雰囲気。一方で、一度お面を取ればヘッドシザースホイップなどのルチャ(メキシコのプロレス)殺法を繰り出すなど、軽快な動きを魅せる。
スーパー世阿弥マシンは長瀬智也さんがスタントなしで演じているらしいが、本当に凄い。
彼が今回の役にどれだけ懸けてきたのかは、試合からもビンビンに伝わってきた。
余談
入場はWWEのASUKA選手と新崎人生(白使)さんを混ぜたような入場。家業を継いでの復帰はスーパーササダンゴマシン選手を彷彿とさせる。
色々なものがミックスされてオリジナルになる。これもプロレスなのだ。
#俺の家の話 視聴。
— 高木三四郎 SanshiroTakagi (@t346fire) 2021年2月6日
長瀬智也さん扮する世阿弥マシーンのティヘラ(飛びついてのヘッドシザースホイップ)、キレイでしたね!スタントなしでご本人がやられてるとの事でしたが跳躍力と体感が強くないとなかなかできない技です。来週もどんな技が出るのか楽しみです! pic.twitter.com/zh6ylIQKvd
引退からの復帰について
最後にブリザード寿の復帰について。
プロレスとは世界で唯一というほど復帰に寛大なエンターテインメントである。
引退記念ツアー(レスラーの引退を記念して、全国を回りながら工業を行う)や引退記念試合を大々的に行ったとしても現役復帰が許される。
この背景には、全日本プロレスでキャリアをスタートし、FMWを立ち上げ“涙のカリスマ”と呼ばれた大仁田厚さんの影響が大きい。
「今度こそ本当に引退じゃ!」を何度も繰り返した挙句、プロレスラーを廃業した今でもノーギャラの“ボランティアレスラー”としてリングに上がり続けている。※近年では安田大サーカスのクロちゃんと試合をしている
つまり、あれほど大きな決断をして引退したブリザード寿が復帰するのはプロレス界では決して珍しいことではないのだ。
ゆくゆくはスーパー世阿弥マシンの正体がブリザード寿だとバレるエピソードまで用意されている可能性がある。
プロレスファンの方以外にお伝えしておくと、マスクマンが覆面を脱ぐ時。これは何かを決意し、行動する瞬間なのだ。
三沢光晴さんはタイガーマスクの覆面を取り、全日本プロレスの新時代を築いた。
スーパー・ストロング・マシンさんの「しょっぱい試合ですいません!」の時もとんでもない展開だった。
スーパー世阿弥マシンも動く時がきっと来るはずなのだ。
余談だが、観山寿一はマスクを脱ぎ忘れるというエピソードを既に数回披露している。
そんな彼が敢えて脱ぐということの意味、しっかりとその目に刻み込んで欲しい。
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