オスプレイVSザックの激闘に見る、“UNITED EMPIRE”の方向性
ウィル・オスプレイVSザック・セイバーJr.の激闘に“ユナイテッドエンパイア”の方向性が見えてきた。
2021年3月14日、「ニュージャパンカップ2021」の2回戦で“UNITED EMPIRE”ウィル・オスプレイ選手と“鈴木軍”ザック・セイバーJr.選手が激突した。
この試合がとんでもなかった。
普段はそこまで意識しているようにも見えないのだが、いざ試合となれば相手の技を徹底的に分析し、対策を取っている。ただ、それ以上に凄かったのは、この相手には負けないという執念だった。
肉を切らせて骨を断つ。
パワー勝負に持ち込めば確実に不利なことを承知の上で、ウィル・オスプレイ選手の攻撃を受けるザック・セイバーJr.選手。
必殺のザック・ドライバーすら布石にし、三角絞めを大本命に持ってくる。顔面にキックをもらい意識が半分飛んでいるような状態でも、脚を取りに行くなど、とんでもない執念を見せた。
一方で、ウィル・オスプレイ選手も次の試合のことを考えずに、この相手にだけは絶対に負けられないと、死力を尽くした。
イギリスマットで幾度となく(100回以上?)試合を重ねてきた2人が、今このタイミングで新日本プロレスで試合をしたことに敬意を表したい。
とんでもなく素晴らしい試合を見た。そして、この試合を通じて、圧倒的な個性はあるものの、色が見えてこなかった“ユナイテッドエンパイア”の方向が見えてきた気がした。
タイチ「結果はよ、俺たち負けちまったかもしんねえけどよ、こんなの勝った負けたより大きなモノ得たよ。ザックだって俺だってよ。トーナメント終わったかもしんねえけどよ、(※ザックに)またやり直そうぜ、2人で、ザック。2人でまたやり直そう……」
— 新日本プロレスリング株式会社 (@njpw1972) 2021年3月14日
全文は
⇒https://t.co/raSBOXmxvT#njcup pic.twitter.com/mIQTIVSBPY
ユナイテッドエンパイアの課題
2021年3月13日、タイチ選手が“ユナイテッドエンパイア”に対して辛辣な意見を発していた。
「プロレス界の歴史の中で一番つまらないユニット」である、と。
“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”や“バレットクラブ”、“CHAOS”。
これらのユニットは“反体制”をコンセプトに活動を開始。
結成当初は特に創始者のテーマがユニットの勢いを作るため、どれだけのエネルギーが迸っているのかが大切になる。
例えば、内藤哲也選手。「このままじゃダメだ」と渡ったメキシコで“制御不能” な生き方に開眼。
これが、彼本来の魅力を爆発させることになり新日本プロレスを代表するレスラーの1人となるまでスターダムを駆け上がった。
“バレットクラブ”も“ガイジン”が評価されないことに対して決起したユニットである。
ベビーフェイスで頑張っても、専門誌の表紙を飾ることができない。溜まりに溜まった鬱憤がオリジナルメンバーたちの原動力となっていた。
では、“ユナイテッドエンパイア”はどうなのか。
ウィル・オスプレイ選手が「俺はオカダの下じゃない!」と主張。グレート-O-カーン選手と結託し、ユニットがスタートした。
VSオカダ・カズチカ。“ユナイテッドエンパイア”の根幹にはこのテーマが存在していた。
だからこそ、グレート-O-カーン選手が凱旋帰国直後、ウィル・オスプレイ選手が東京ドームでオカダ・カズチカ選手に敗れて以降は、テーマ性が見えにくくなってしまった。
タイチ「(※控室に向かうザックの後姿を見送り)今までよ、プロレス界、いろんな軍団いろんなユニット、まあ生まれてきたな、長い歴史の中で。その中で、一番お前らつまんねえ。なにがやりてえのか、さっぱりわかんねえ軍団だよ。今までで一番な。なにがやりてえんだ、お前ら? ハゲと、デブと、テメエの女連れて売名行為か? それしか能がねえのか、お前ら? なにがやりてえんだ、お前ら? 全然結果も出さないでよ。どうせ明日も、ザックにやられて終わりだ。やめちまった方がいいんじゃないのか? 一番つまんねえぞ」
グレート-O-カーンの存在感
“ユナイテッドエンパイア”に注目が集まっていたのは、グレート-O-カーン選手の力が大きいと僕は思っている。
野毛道場を抜け出し、イギリスへ密航。無敗記録を樹立し、新日本プロレスへ逆輸入的な進軍を開始した。
リングの上では天山広吉選手からモンゴリアン・チョップを略奪し、「ニュージャパンカップ2…21」では内藤哲也選手をレフリーストップで沈めた。
一方でリングを降りれば、SNSを中心に話題を振り撒き続けている。ファンアートや動画、ブログにも寛大で、適宜自ら拡散している。
ファンとの距離が絶妙に近いグレート-O-カーン選手がいるからこそ、“ユナイテッドエンパイア”にも自然と注目が集まっていた。
ただし、ユニットとしての方向性には分かりにくさはあった。
小さくても自らの帝国を築く。
既に世界一のレスラーとして認識されているウィル・オスプレイ選手だけに、一度下がる必要があったのか?と考えるさせられる。
ただ、こうも考えられるのではないか。
新しいことをはじめる時。そんな簡単に物事は進まない、と。
これが余に「同盟を結びたい」と思わせた男の、力じゃ!!!! #njcup
— グレート-O-カーン👑 (@Great_O_Khan) 2021年3月14日
どうだ!帝国の盟主はカッケェだろ! pic.twitter.com/pmtiQb6Qtn
ユナイテッドエンパイアの方向性
今回の「ニュージャパンカップ2021」を通じて、これまで見えて来なかった“ユナイテッドエンパイア”の方向性に一つのテーマが見えた。
とてつも無い試合をするベストバウト集団。
ベビーフェイスやヒールといった概念にすら縛られない。ダークヒーロー路線でもない。
それぞれが全く異なる個性を発揮しつつ、それぞれの帝国を築いていく。そんな“混沌”とした雰囲気のユニット。
ウィル・オスプレイ選手の胸の中には、きっと“CHAOS”がある。
“ユナイテッドエンパイア”は反体制側にいる武闘派ベビーフェイス。
そう考えてみると、結成後も負け続けている彼らの戦績ですら、これからのサクセスストーリーにつながる布石なのだと思う。
ザック・セイバーJr.選手との死闘を乗り越え、優勝を目指すウィル・オスプレイ選手。
“ユナイテッドエンパイア”のためにもこれからが正念場だ。
★新着記事★
→【ランキング参加中】人気プロレスブログはここからチェック!【クリックで応援お願いします】