YOH「プロレスやってて、よかったです」と新生“3K”の変化
YOH「プロレスやってて、よかったです」に感動した。
2021年4月4日、新日本プロレスは「SAKURA GENESIS 2021」両国国技館大会を開催した。
メインイベントの「IWGP世界ヘビー級選手権試合」や“ユナイテッドエンパイア”のXなど注目の対戦カードが並んだ中、一際目を引いていたのが、“ロッポンギ3K”YOH選手の復帰戦である。
2020年6月23日。「ニュージャパンカップ2020」の一回戦で「前十字靭帯断裂」。長期離脱を余儀なくされる大怪我を負った。
彼にとって、人生初の大怪我であり入院だったという。
満を辞してセルリアンブルーのリングに帰還したYOH選手が一体どんなプロレスを魅せてくれるのか。
そんな楽しみを抱きつつ、僕も両国国技館へと足を進めた。
久しぶりの両国国技館。マス席は僕一人でゆっくりと座ることができた。
アーロン・ヘナーレ選手の登場で「マジか!?メチャクチャ変えてきた!」と思ったり、棚橋弘至選手の“JTO”など見どころのある展開が続き、いよいよセミファイナルへ。
いよいよYOH選手が10ヶ月振りの戦線復帰。一体どんな姿を見せてくれるのか...。
んんんん!?エントランスミュージックが違う!
数試合しか使われなかった新曲とも雰囲気が違う。エッジの利いたトラックにメロディアスなピアノの旋律。過去に聴いたことない雰囲気の入場曲。
凱旋帰国から使ってきたロッキー・ロメロ選手が用意したヒップホップとは全く違う楽曲が流れた瞬間に僕はピンと来た。
“ロッポンギ3K”のプロデューサーが変わった、と。
ロッキー・ロメロ選手からYOH選手へ。10ヶ月かけてたどり着いた新境地は、これまでの新日本プロレスに無かった唯一無二のスタイルだった。
金と銀。3Kサインでのハイタッチ。コールを受ける時に風を受けるスタイル。たくさんの事を変えてきた。
環境を変えずに自分を変える。YOH選手は一番難しいことにチャレンジしてきたのだ。
YOHの復活とIWGPジュニアタッグ王座戴冠を、CHAOSメンバーが祝福!
— 新日本プロレスリング株式会社 (@njpw1972) 2021年4月4日
YOH「心の底から思ったことがあります。パートナーが、SHO君でよかったです。ロッキーさんがいてよかったです。ROPPONGI 3Kで、CHAOSでよかったです。プロレスやってて、よかったです」
全文は
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コスチュームの変化
シングルはショートタイツ、タッグではロングタイツ。これまで使い分けてきたSHO選手がショートタイツでタッグを戦っている。
YOH選手はモノトーンのハーフタイツの下にロングタイツを履くツートンコーデ。
左腕だけのスリーブは棚橋弘至選手オマージュか。
“新生ロッポンギ3K”は2人の個性を尊重する。だからこそ、以前のような統一感をなくしたのだ。
そんなこともコスチュームから伝わってくる。
左脚の痛みに耐えながら
YOH選手が欠場中、SHO選手はシングルプレイヤーとして覚醒していた。
以前までの“ロッポンギ3K”は連携を意識しすぎて、シングルでの魅せている魅力が若干消えてしまっている時があった(それでも実績としては申し分ないのだが)。
“新生ロッポンギ3K”は基本的にそれぞれのシングルでの個性を活かしつつ、要所要所で連携を魅せるスタイルにチェンジ。
YOH選手は以前よりも受けの戦い方になり、よりベビーフェイス色が強くなった。脚の怪我あることでこれまでとは違った深みが試合ににじみ出てくる。
この日も“鈴木軍”はYOH選手の左足一点集中攻撃。場外にいてもコーナーで控えていても徹底的に狙われた。
これまでYOH選手は器用で雲のように掴みどころがなく、若干感情移入がしにくい面があった(ヤングライオン期間があったためあまり表面化していなかったが)。
ただ、復活したYOH選手には傷がある。傷や影が人の深みであり、生きた証だ。
ヌメロ・ドスや足4の字固めで弱点を攻められる。これまでのYOH選手にはなかった痛みがリングから伝わってくる。
あの怪我があったからこそ、プロレスラーとして化けた。確実にYOH選手は復帰前よりも魅力的になった。
DIRECT DRIVE
3KやストロングXといった合体技も披露しつつも、YOH選手が新技の“DIRECT DRIVE”で試合を決めたことからも、一人で局面を打破できるチームへと完全に生まれ変わった。
単純に試合を終わらせるフィニッシャーが3K、ストロングX、DIRECT DRIVE、ファイブスタークラッチ、ショックアローと多岐にわたる(ドラゴンスープレックスホールドも決め技になる)。
それでいて、ダブルニーやSHO選手を飛び越えてYOH選手がフライングエルボーを放つなどのムーブは健在。
3Kとしての積み重ねてきたものはそのままに個性が浮き彫りになった2人のファイト。
SHO選手が鷹木信悟選手との戦いで身につけた“SHO式パンピングボンバー”が炸裂した瞬間に流れが変わった。
「のぶ!!!ノブ!!!立て!!!起きろ!!!」
エル・デスペラード選手が叫ぶ中、新技“DIRECT DRIVE”が炸裂。チャンピオンに返り咲いた。いや、新しく生まれ変わった3Kにとしての初のタイトルだ。
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“ロス・インゴ”と鈴木軍以外
ここからは、僕の本音を。
本音を言うと、YOH選手が環境を変えることを望んでいる僕もいた。
高橋ヒロム選手とエル・デスペラード選手がいる“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”と“鈴木軍”以外。
これからシングルやタッグでトップを狙うレスラーにとって2人の同じユニットでいることは、ネガティブな要素も強い。
滅多なことでない限り直接対決がない中で、同ユニットに身を置いてしまうとタイトル挑戦が遠のくという見方もある。
狙い目はジュニア戦士が未だに不在の“ユナイテッドエンパイア”。そして、田口隆祐選手とマスター・ワト選手の間に大きな年齢差のある新日本本隊だ。
YOH選手が大きく何かを変えるのであれば、“ユナイテッドエンパイア”あるいは、茨の道だと知りながら、“バレットクラブ”を目指す必要があった。
しかし、YOH選手は“ロッポンギ3K”としての復帰した。
その選択は中々できるものではない。もしもインパクトを残せなかった場合、一気に取り残されるリスクがあるためだ。
これは僕の想像だが、ここで“ロッポンギ3K”が終わってしまった場合、“ロッポンギ3K”としての直接対決が実現できなくなる。
タッグでもシングルでも“3K”はまだまだできること、やり残したことがたくさんある。
YOH選手が大きく環境を変えない選択をしたのは、そんな理由があったのだろう。
“DIRECT DRIVE”が炸裂した後、彼の素顔が顕になった。
パリピを脱ぎ捨て、飄々とした仮面をも取った。その下にあったのは本物のYOHだった。
試合に勝った後、YOH選手は涙を流していた。きっと、この10ヶ月間のエピソードが頭を巡ったに違いない。
YOH「ケガしてから、今日までたくさん悩んだし、たくさん悔しかったし、たくさん迷ったけど、でもその分、たくさん練習したし、たくさん考えたし、たくさん、支えてくれる人たちがいたから、ここまで来れました。たくさん不安だったけど、リングに上がったらそんなの関係なくて、楽しくて、そして心の底から思ったことがあります。パートナーが、SHO君でよかったです。ロッキーさんがいてよかったです。ROPPONGI 3Kで、CHAOSでよかったです。プロレスやってて、よかったです。感謝の気持ちを忘れずに、これからもプロレス、頑張っていきます」
そして、今日がゴールじゃなくて、今日が再スタートだから。さっきも言った通り、次、狙うのはIWGPシングルのベルトです」
ロッポンギ3K対決
「IWGPジュニアヘビー級王座」である“ロッポンギ3K”がシングル王座を懸けて激突する。
まさかの急展開にまだあたまは追いつかないが、SHO選手はYOH選手の復帰発表時から戦うことを希望していた。
タッグ王座の激突。パートナー対決。凱旋帰国後初対決。
盛り上がらない訳がない最高の展開は実現するのか。
エル・デスペラード選手は条件としてタッグのリマッチを提案している。
“ロッポンギ3K”がもう一度勝つことができれば過去最大級のチャンスが訪れる。
「プロレスをやってて、よかったです」
今までの殻を全部破って、最後に残ったのはベビーフェイスとしての生き様だった。
今日、YOHさんがリング上で言った、今ここでも言った、シングルのベルトを狙うって。あー……、このタイミング? でっかい会場、控えてるだろ、新日本。そこで、まだ何にも決まっちゃいねぇけど、会社がどうするのか、チャンピオンがどうするのか、何にも決まっちゃいねぇけど、もしYOHさんがシングルのチャンピオンになってくれたなら……これはただ、俺個人の思いだ。俺だけの思いだけど、このタッグチャンピオンベルト、巻いた同士で、シングルのベルト懸けて戦うってのもいいんじゃないか。YOHさん、何が何でもシングルのベルト、取ってくれよ
高橋ヒロム選手は「俺も悔しい」、「こういった勢いが一番怖い」と語った。彼の目にYOH選手が入ってきた来た瞬間だった。
今、YOH選手にはいい風が吹いている。僕は「プロレスをすきになって、よかったです」
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