ジェイ・ホワイトは“ヒール版棚橋プロレス”の継承者である
ジェイ・ホワイトは“ヒール版棚橋プロレス”の継承者として完全に覚醒しました。
2021年の「レスリングどんたく」が幕を閉じました。
初日は「NEVER無差別級王者」“新日本プロレスのエース”棚橋弘至選手をジェイ・ホワイト選手が退け新王者へ。
2日目は「IWGP世界ヘビー級選手権試合」でウィル・オスプレイ選手チャンピオンが“新日本プロレスの快男児”を討伐し王座を防衛。
ジェイ・ホワイト選手とウィル・オスプレイ選手。2人の“ガイジンレスラー”が新日本プロレスを牽引していると言っても過言ではないでしょう。
今日はそんな2人にそれぞれスポットライトを当てて考えてみたいと思います。
まずは、ジェイ・ホワイト選手。僕は彼について“ヒール版棚橋プロレス”と度々書いてきました。
天から受け取ったギフトではなく、どこまでも自分と向き合い、己を極限まで高めることに成功した“悪の逸材”。それが今のジェイ・ホワイト選手です。
彼の試合を見ていて、ピンと来る方も多いと思いますがとにかくプロレスが上手い。技の数は結構限られていて、汚い(上手い)ことはしても必要以上に危険な技は使わない。
外道選手を使いこなして「ズルい!」という瞬間はあっても「あぶねーーー!!」って時があんまりないんですよね。
ただ、一点集中攻撃が美徳とされるプロレスのお作法を敢えて守らずに、分散して攻撃することで棚橋弘至選手を追い詰めるなど技術、説得力に関しては申し分ありません。
世界の獣神サンダー・ライガー選手やミラノ・コレクションA.T.選手ですらその上手さを讃えていました(疑惑のシーンでブチ切れていましたが...)。
2018年から2019年にかけて新日本プロレスが進むべき道を再提示するために立ち上がったのは、棚橋弘至選手でした。
そんな彼のプロレスを継承したジェイ・ホワイト選手が2度目の“棚橋超え”を果たした。今回の福岡大会には色々な意味があると思います。
さて、今日は前編。ジェイ・ホワイト選手編です。彼は「NEVER無差別級王者」として、“これまで戦えなかった(戦わなかった)相手”と戦うことになるでしょう。
ジェイ「フィンレーよ、早く返事をしないとタグチに順番を越されてしまうぞ!(中略)それとも誰か他のヤツが割り込んできて、挑戦権を横取りされていいのか? お前がやらないと言うなら、タグチにチャンスをやる。さっさと答えを出せ、デビッド!」
— 新日本プロレスリング株式会社 (@njpw1972) 2021年5月4日
全文はhttps://t.co/HLtqwCsROx#njdontakuDay2 pic.twitter.com/OJFiXotbuj
勝負に勝つか、試合に勝つか
試合後、矢野通選手が語ったように棚橋弘至選手はタップアウトにこだわらず“ハイフライフロー”で3カウントを取れていたはずでした。この時、敢えて位置も膝狙いにしていましたし。
棚橋弘至選手は今回のサーキットでGTO(外道タップアウト)をテーマに、TTOのカウンターを狙っていました。今度は俺がお前をタップアウトさせるのだ、と。
ただ、その結果にこだわりすぎてしまった。ジェイ・ホワイト選手がついたのはそんな一瞬の隙にありました。
“TTO(タナハシタップアウト)”にこだわることなく、必殺の“ブレードランナー”で勝利。結果の前にはプロセスなどどうでもいいのだ。それがベビーフェイスとヒールの違いでしょう。
正々堂々を貫くのもプロレス。勝つために使えるものは何でも使うのもプロレス。合わせ鏡ようで少し違う2人を見ていると、棚橋弘至選手がずっとブーイングを浴び続けたままでヒールターンしていたらきっとこうなっていただろうな(ゴキブリマスクとも違う)と思わせる試合でした。
棚橋プロレスとは何か
翌日の試合でも元気に登場しつつ、全く足が動かなった棚橋弘至選手。一方で悪ぶりながらもマジで限界っぽい雰囲気のあったジェイ・ホワイト選手。
立場は違えど、本当の意味で“棚橋プロレス”を継承する者が出てきたのは、とてもうれしいことですね。
ちなみに僕が思う“棚橋プロレス”とは...。
- 品がある(知性がある)
- 相手を引き出しつつ、自分もとことんカッコよく魅せる
- 必要以上の危険技を使用しない
- 起承転結が明確である
- 入場から魅せる
- 前哨戦でしっかりとテーマを設ける
- 試合を通じてファンに感情移入させる
この7つが当てはまるかなと。この7つを“逸材ブレンド”することで“棚橋プロレス”は誕生します。
「IWGPヘビー級V11」。「IWGP USヘビー級ベルト」以外は戴冠済み。棚橋弘至選手は“棚橋弘至”へ「変身」することで、一時代を築きました。
そして、この“棚橋プロレス”を悪の道で継承するジェイ・ホワイト選手が登場したのです。
“ヒール版棚橋プロレス”は上記に加えて8.合理的に勝つ(必殺技やセコンドの介入)が印象的です。
例えば、ブレードランナーはかわされたとしてもノーダメージ。ハイフライフローとここが決定的に違います。分かりやすく試合を終わらせるハイフライフローに対して、一瞬で試合を終わらせるブレードランナーはあまりにも対極的です。
また、ジェイ・ホワイト選手はセコンドの外道選手も上手く使います。相手を油断させてその隙も狙います。さらにはロープに足をかけて抑え込んだりもします。
“棚橋プロレス”はプロレス脳の高さを武器にしたプロレス。もしもキラー・棚橋が本格的に誕生していたらもっとエグいことをしていた可能性すらあります。
そうした“棚橋プロレス”の前には常に天からのギフトを受け取った漢が立ちはだかります。化け物を超えた存在。インベーダーです。
“レインメーカー側”の新世代
“100年に一人の逸材”の記録を止めたのは“レインメーカー”オカダ・カズチカ選手でした。
彼はギフトを受け取った存在でした。
圧倒的な身体能力とサイズ、プロレスセンス、天性の華。一言でいうとレベルが違う存在。
しかも、天からのギフトだけではありません。
歴史や発想も違います。中学を卒業後にメキシコへと渡り、ウルティモ・ドラゴン校長に見出され、新日本プロレスへと移籍。
闘龍門で生まれ、若獅子としてゼロから鍛え上げられた。そして、アメリカに渡ったことで“レインメーカー”が完成するに至ったのです。
ドラゴン殺法などの歴史を継承した逸材が円熟味を帯びた頃に現れた化け物を超える存在。
オカダ・カズチカ選手という若い新世代のスターが誕生したことで、新日本プロレスはプラチナ期に突入しました。
“バレットクラブ”や“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”など現在の新日本プロレスを代表する新ユニットも次々と誕生。
棚橋弘至VSライバルからオカダ・カズチカVSライバルへと時代が変わりゆく中で、それぞれの新世代が明確に誕生したのが2021年5月の「レスリングどんたく」だったと僕は思います。
明日は“レインメーカー”の弟である暗殺者から帝国の王へとクラスチェンジしたウィル・オスプレイ選手についてです。
さて、今日更新の前半はそろそろここまでです。
棚橋プロレスの継承者であるジェイ・ホワイト選手はいずれ、ウィル・オスプレイ選手とぶつかることになるでしょう。
「IWGP世界ヘビー級王座」の初防衛を達成したウィル・オスプレイ選手と前代未聞の4冠王(グランドスラム)を成し遂げたジェイ・ホワイト選手。
新型のアスリートプロレスと棚橋プロレス。
“ユナイテッドエンパイア”と“バレットクラブ”。
新世代の戦いはこれからはじまるのです。
真の条件
最後に。
実は“棚橋プロレス”には最後にもう一つの要素があると僕は考えます。それは、愛です。
新日本プロレス、プロレスに対する愛。それが“逸材”として自分を追い込み続ける原動力なのです。
ジェイ・ホワイト選手が今は絶対に出さない言葉。彼の本質にあるものは愛に違いありません。
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