あべみほ477日振りの新日本プロレス復帰と“家族”の物語

あべみほ477日振りの新日本プロレス復帰と家族の物語。

「痛みに耐えて、よく頑張った。感動した!」

2001年に貴乃花関が総理大臣杯を授与する際に小泉純一郎さんが発した名言である。

20年の時を超えて、この日の後楽園ホールを戦った全員に贈りたいメッセージだと試合が終わった瞬間に思った。

事前にTwitterで知らされていたが、あべみほさんが新日本プロレスに帰ってきた。

タイチ選手のディーバであるあべみほさんはずっと耐えてきた。

1年以上にわたって、一番近くで応援することを我慢してきた。

後楽園ホールのファンが彼女に向かって万雷の拍手を贈るとあべみほさんの目には涙が。

そして、姿を現す“聖帝”。新しいガウンに身を包んでいる“デンジャラステッカーズ”。

まるで、彼女の帰還に華を添えるように。

この一戦に懸ける想い。そんな全ての期待を一気にぶち壊すかのように現れる“G.o.D”タマ・トンガ選手&タンガ・ロア選手。

既に「IWGPタッグ」の最多戴冠記録を樹立。新日本プロレス最強のタッグチームであることは間違いない。

DOUKI選手と邪道選手がリングから姿を消したことが確認されて運命の試合がはじまった。

僕が今まで見た「IWGPタッグ選手権試合」で最高の試合がはじまった。

 

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愛を取り戻した聖帝

言葉を選ばずに言えば、タイチ選手は明らかに本調子ではなかった。

心肺機能が低下しているのか。通常では見られない息の上がり方は明らかにただ事ではいことが伝わってくる。

リング上でなんとなく伝わってきた事はタイチ選手の口から試合がに語られた。

苦しいよ、辛いよ。と。だから大切なのは気持ちなのだ、と。

「(ザックに)日本語、メッチャしゃべってんじゃん(場内拍手)。ちょっと、なんて言っていいかわかんねえけど、苦しかった。苦しかった、今日は。この前も言ったとおり、身を持ってわかったよ。いくら治ったっつってよ、やっぱ苦しいよ。苦しいよ、こんなによ。だけど、気持ちだよ、あとは。俺はザックとの約束を果たすために。今日、どうなってもいいと思った。だけど結果、これが戻ってきてよかったよ(場内拍手)。ザック、ゴメン、いっぱい待たせて(ザックは『イイヨ』と返答)。わかる? 日本語(笑)。(場内を見渡し)まあ、こうやって来てるけどよ、オメーらもいつどこで、俺みたいな目に遭うかわからねえぞ? ちゃんと家帰って、手洗いうがい、いっぱいしろよ(場内拍手)。夜の街に飲みに行くんじゃねえぞ。オネーチャンのとことか行くなよ。まあ、行ってもいいけど、気をつけろよ(場内拍手)。ザック、やっと戻ってきたよ、どうする?(ザックは『アトデ』と返答)。俺もわかんねえよ、この先。とりあえず、ザックとの約束を果たせてホッとしてる。それだけだ。あんなクソみてえなヤツらがよ、記録いっぱい塗り替えたかもしれねえけど、そんなもん、俺とザックで全部塗り替えてやるよ(場内拍手)。俺らが最強だろ。この先も俺とザックが、ここの中心になってやっていくから、オマエら、わかったか、コノヤロー(場内拍手)」

出典:新日本プロレス

 

日本を愛してくれた“ガイジン”

新日本プロレスのヘビー級レスラーで最も細い身体。この試合、何度彼が頼もしいと思ったことか。

タイチ選手が圧倒的な主人公感を纏ったことにより、パートナーであるザック・セイバーJr.選手にもこれまでと違う気持ちが溢れ出す。

2020年以降。ほぼフル出場を続けている“唯一のガイジン”レスラー。

言葉に出さずともずっと絶対に彼はずっと耐えていた。

母国ではない日本。変化し続ける社会状況。全く想像もできないほどのストレスに彼は耐えてきた。

それが試合にも現れていた。タイチ選手がピンチの時に何度も何度も登場。関節技でダメージを与えつつ、タイチ選手が回復する時間を作った。

自身の肋骨に異変があっても耐え切った。

痛みに耐えて、「ザックメフィスト」。

最後は「イクゾーー!!!」と叫び、2人の合体技「天翔ザックドライバー」を決めた。

その瞬間、タイチ選手がザック・セイバーJr.選手へ飛びついた。

抱き合う2人を見て、涙が止まらなかった。

そして、マイクパフォーマンスの後にデンジャラスデッカーズからベルトを渡されたあべみほさん。

こんな美しい光景が見ることができて、本当によかった。

 

家族、ファミリーになること

試合後のバックステージも素晴らしかった。

タイチ選手は明らかに試合途中で限界が来ていた。それを加味した上で、辛いことを体験したからこそ言える言葉とこれまででは絶対出ない言葉が飛び出した。

タイチ「本当にザックにはありがとうしかない。いつもザックは俺に優しい。どんな時でも俺に優しくしてくれる。こうやって今日も万全な状態を作ってくれて、もうちょっと先にあの時出てたら倒れてたかもしんねえな。今日で良かったよ。さすがだよ。それとザックにありがとうって当たり前のことだけど、絶対に言いたくねえけど、あんな奴らに言うつもりも言いたくもねえけど、G.o.D、お前ら……いやありがとうとは言わねえよ。だけど、俺がコロナに倒れて、お前らも知ってたんだろ、その情報は。よく逃げねえで日本で待ってたな、俺らの挑戦を。その気持ち、てめえらがどんな気持ちで日本にいたのか、さっさと帰ってもいいところをよ。お前ら、そんなツラして優しいんだな、本当は。俺には優しいんだろ。俺とザックのことをお前らは待ってたのか? どんなつもりか知らんけどよ、ありがとう……とまではいかねえけどよ、まあ今日はそう思ってやるよ。だから、またお前ら、明日か明後日か、また来るだろう? いつだって、またやってやってもいいよ、てめえら。まあ、ザックは嫌だって言うだろうけどな。G.o.D、ノーモア?」

出典:新日本プロレス

この日の対角線に立った“G.o.D”。彼らもタイトルマッチするまで日本に留まり続けてくれた。

一度帰ればこの日の試合は実現できなかったかもしれない。

色々なリスクを取って、“G.o.D”は“デンジャラステッカーズ”と戦うことを選んだ。

試合後にタイチ選手とザック・セイバーJr.選手、DOUKI選手、あべみほさんが見せた家族感。

その裏にもう一つのトンガ・ファミリーの物語があることを忘れてはならないのだ。

血のつながりがなくても“家族”になれる。

感謝の気持ちを忘れずに、誰かのことを思って戦う。ずっと耐えてくれたパートナーのために。支えてくれる仲間のために。

“愛を捨てた聖帝”がまた一つ進軍した日になったのは間違いない。

この日、ベビーフェイスでもヒールでも、ダークヒーローでもない第四のジャンル。悪のベビーフェイスが明確に生まれた日になった。

悪のベビーフェイス・タイチ選手。日本語を解禁したザック・セイバーJr.選手。

彼らがこれからタッグ戦線で魅せる黒と金の輝きに期待せざるを得ない。

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