EVILのことをずっと考えていたらようやくディック東郷と組んだ理由が分かった

EVILのことをずっと考えていたらようやくディック東郷と組んだ理由が分かった。

2021年7月に新日本プロレスが開催した夏の東京ドーム大会。そのエンディングで現れたのは直前で天敵・石井智宏選手を破った“キング・オブ・ダークネス”EVIL選手だった。

ファンは怒り、ミラノ・コレクションA.T.さんは男泣き。SNSでも阿鼻叫喚が飛び交う事態を受けて、“今の”EVIL選手について考えてみたいと思った。

パッと見る限り、全てがマイナスにしか作用していない。

イデオロギーも感じなければ、主張が弱く感じる。弱いではなく、共感性が薄い。

共感性。

そう、今のEVIL選手には共感性がないのだ。

“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”時代は、超人オカダ・カズチカ選手に「G1クライマックス」で土を付けたり、SANADA選手と「IWGPタッグ」を戴冠したりと言葉数こそ少なかったにせよ、ファンへ“ダークネスワールド”を見せてきた。

プレミアムな男の激しさと闇の王が持つ何とも言えない禍々しさ。この2つが合わさっていたのがあの頃のEVIL選手だった。

パワーと機動力。そこにダーティーさ。何がなんでも勝ちたい。そんな意志の強さも魅力的。

そういった全てを捨て去って彼はダークヒーローからヒールになった。

かなり久しぶりになるがダークヒーローについて改めて説明しておきたい。

ベビーフェイス、ヒールに加え、新日本プロレスでは“ダークヒーロー”という新ジャンルが定着してきた。

“ダークヒーロー”は端的に言えば、反体制の組織に属しながらも正しい主張でファンの支持を得てしまうタイプ。

かつての中邑真輔選手や制御不能となった内藤哲也選手、ケニー・オメガ選手(ゴールデン☆ラヴァーズ結成後はベビーフェイスに全振り)などが代表的だろうか。

“ダークヒーロー”は通常のベビーフェイスよりも人気が出やすい。

不良だけど勉強ができる。ちょっと悪くて無口だけど、実は皆んなに優しい。こんなイメージ。

例えば、SANADA選手。

実際は完全にベビーフェイスなのだが、“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”に所属していることで“ちょい悪感”がプラスされ、魅力が爆発した分かりやすいタイプだろう。

最近だとタイチ選手やザック・セイバーJr.選手の“デンジャラス・テッカーズ”もダークヒーローのタッグだ。

反体制側の矜持、絆、信念を見せる。そこにファンが共感している。

ではここからが本題。“キング・オブ・ダークネス”EVIL選手が極端なまでに支持されない理由について書いていく。

 

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感情移入させないこと

何かスッキリしないなぁ。

これがEVIL選手と狙いなのだ。

敢えて書くが、EVIL選手は“ダークヒーロー”から“ヒール”にターンしたことで今の地位を手に入れている。

“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”の4番手だった自分を変えるために選んだのがヒールの道だったのだ。

改めてダークヒーローについて。

  1. 主義主張が通った反体制側
  2. 反体制にいながらも正論だと感じる言葉を発する
  3. リングの上ではベビーフェイスよりもラフ寄りなファイトを魅せる

では、ヒールとは何か。

  1. 悪役としてベビーフェイスを徹底的に貶める
  2. 反則・介入何でもあり。とにかく勝つ

この2つが大きなポイントだとここでは定義する。何よりも本来は一番大切なのが「ファンに感情移入させないこと」ではないかと僕は思っている。

“バレットクラブ”のKENTA選手は東京ドームで内藤哲也選手を強襲した時点では完全なるヒールだった。

あそまでブーイングだけが飛び交うのは大仁田厚選手以来ではないだろうか。

そう思わせるほどの乱入をKENTA選手はやってのけたのだ。

ただ、ここからKENTA選手ならではの報告に向かう。前哨戦で内藤哲也選手を弄る中で彼の言葉は支持を集めだした。

今の彼にはダークヒーローがピタッとハマったのだ。

余談だが、キャラクター、今のファイトスタイルがバチっとハマるとレスラーは化学反応が起きる。

エル・デスペラード選手やグレート-O-カーン選手(まだまだ急成長中)がいい例だ。

生き様と言葉、キャラクターがリングへとシームレスにつながることで圧倒的な魅力を放っている。

 

現在のEVILについて

話を本題へ戻そう。

今のEVIL選手の主張はかなり共感性が薄い。

鷹木信悟選手に対して、「ベルトの価値が下がっている」と指摘したが東京ドームでの試合を見る限り全くそんな気はしないためだ。

快男児・鷹木信悟だからこそ今の新日本プロレスのトップに相応しいと多くのファンが認めている。

また、先日の一夜明け会見でも鷹木信悟選手はEVIL選手に対して「おまえら、腐り切ってんだよ」って言葉が全く伝わらない、薄っぺらいと指摘していた。

ここでファンは鷹木信悟選手側に感情移入する。

その通りだと。EVIL選手の主張は弱いのだ。

例えば、「IWGPヘビー」の方が輝いていた。「昭和レスラーほどのインパクトがない」と指摘したらどうだろう。

人は歴史には勝てない。昔を知る人は「確かに」と思うかもしれない。

ただ、そういった仕掛けもしない。徹底的に自分へ感情移入させないスタンスを貫いている。

ここが日本人ヒールの難しいところだ。

“ガイジン”レスラーの場合、そもそも言語の壁があり感情移入しにくい。

言葉が分からないだけで興味の対象から簡単に外れてしまう。理解すべくこちらが歩み寄らなければならないためだ。

ちなみにヒールの“ガイジン”レスラーが日本語を解禁した時は一気に好感度が爆上がりする。

最近のザック・セイバーJr.選手がそれだ。

日本語解禁、ベビーフェイスのように受ける時間の急増。

“デンジャラス・テッカーズ”をダークヒーローとして加速させたのはザック・セイバーJr.選手の変化が大きいのだ。

EVIL選手は日本語で徹底的に筋の通らない発言を繰り返す。

試合もかつてのよつな熱く、激しいファイトよりも効率的に痛ぶるスタンスだ。

そんな試合をされた対戦相手は不完全燃焼のままリングを降りることになる。

昨日の鷹木信悟選手のコメントがこれだ。

鷹木「ああくだらねえ!! クソくだらねえよアイツは! ええ? これが、オイ、アイツらのプロレスか、オイ! 何がやりてーかサッパリわかんねーよ、オイ! ええ? オレが持ってることで(IWGP世界ヘビー級) ベルトの価値が落ちてる? ふざけんなよ、オイ! 価値のないオマエらがなあ、何言ってもな、 伝わってこねーんだよこのヤロー!! ハッキリ言ってな、オマエらのプロレスはな、つまんねーんだよ! クソつまんねーんだよ!! オイ! こんなんだったんならなー、Metlifeドーム、 別にEVILとやらなくてもいいんだぞ、オイ! なあ、西武ドームの前に、EVIL潰して、オイ、 違うやつとオレがこのベルトを賭けて、タイトルマッチやるよ! クソつまんねーんだよアイツら!」

出典:新日本プロレス

少し鷹木信悟選手についても触れよう。

鷹木信悟選手は反体制の“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”に所属しているものの、実質ベビーフェイスである。

棚橋弘至選手との東京ドーム決戦でさらに泊を付けたことで彼が暫定のチャンピオンだと思うファンもいなくなったはずだ。

彼にはもう一つ凄いところがある。

外様が、“レインメーカー”を倒してチャンピオンになり、新日本プロレスのエースを東京ドームで打ち破ったのだ。

ヤングライオン出身ではない外から来たレスラーが、ここまでのことを成し遂げた。

それなのにファンからは不満の声が出ない。ここに鷹木信悟選手が巻き起こした革命がある。

試合と言葉で民意を得た。その結果、生え抜き・外様の論争はなくなり“凄い者”が上に立つ世界になったのだ。

実力でトップまで上り詰めた漢からすると、今のEVIL選手が「クソつまらない」のも頷ける。

イデオロギーとイデオロギーのぶつかり合いにならないためだ。

鷹木信悟選手は“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”を脱退した理由を追求し、タイトルマッチを盛り上げたい。熱いEVIL選手を引き出して、試合を魅力的に仕上げだ上で仕留めたいのだ。

一方でEVIL選手はその気持ちをスカして痛めつけ、イラつかせるだけ。

ダークヒーローとして培った経験をゼロに戻し、ヒールとして生きる道を選んだ彼は、リング外で器用なことはまだできない。

そこに伸び代があるのたか、共感性は双刃の刃となる。

ヒールとは何と難しい生き方なのだろうか。

さらに今は会場で声が出せない状況。常に静寂。ブーイングが飛ばないのは致命的だ。

SNSでは心ない声ばかりが目立つ。そんな中でヒールの生き方を選んだ男を誰が否定できるだろうか。

www.njpwfun.com

 

唯一無二のヒールレスラー

現在、日本の“バレットクラブ”にはジェイ・ホワイト選手がいない。

彼は海の向こうで元“バレットクラブ”と絶賛交戦中である。その立ち位置は日本と大きく異なっている。

日本ではヒールだが、海外ではダークヒーローとなっているのだ。

そんな状況下でEVIL選手は新日本プロレスでたった1人のヒール道を貫いている。

ベビーフェイスの面構えじゃない。ダークヒーローには戻れない。

自分が生きる道はヒールしかない。

そう思った時にディック東郷選手へコンタクトを取ったのは自然な流れだったように思う。

ディック東郷選手は“生涯一ヒール”を貫いている漢だ。彼と組むことで“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”ではなく、“バレットクラブ”のEVIL選手が完成した。

“バレットクラブ”へ移籍した時点で決め台詞も熱さも捨てた。

たった一つ捨てなかったのは磨き抜いてきた技たちだけだ。逆に姑息な反則は増えても“技”が増えていない。

ダークヒーローからヒールへのターンは相当に難しいものだ。少しでも舵取りを誤るとダークヒーローに逆戻りしてしまう。

そうなると“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”を離脱した意味がなくなってしまうのだ。

新日本プロレスで唯一無二のヒールになる。闇の王が深淵で見つけた黒い太陽を手に入れるため、彼はファンの期待を裏切り続けるだろう。

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