DOUKIの11年が詰まった“魂”のシングルマッチ

DOUKIの11年が詰まった“魂”のシングルマッチは高橋ヒロムの勝利に終わった。

2021年8月27日。新日本プロレスジュニアのカリスマが帰還した日。

その対角線に立ったのは“高橋ヒロムが誕生した時”にともに時間を過ごしたDOUKI選手だった。

この試合をなんと形容すればいいのだろう。

一言で書くならば激闘だった。

30分一本勝負の試合で29分43秒。ギリッギリまで勝負は決しなかった。

最後は“TIME BOMBⅡ”。“TIME BOMBⅡ”なのだ。

実は“TIME BOMBⅡ”誕生後も高橋ヒロム選手は“TIME BOMB”で試合を決めることも珍しくない。おそらく“TIME BOMB”じゃ今のDOUKI選手は仕留められないと判断した結果、“TIME BOMBⅡ”を発動させたのだろう。

それほどまでに激しい試合だった。

“太陽”と“月”が高橋ヒロム選手とエル・デスペラード選手を現す言葉であるならば、この日のメインイベントを戦った2人を例えると何になるだろう。

“野生”と“養殖”。

DOUKI選手と高橋ヒロム選手の2人を例える上で、この言葉が一番しっくりくる感じがする。

ミラノ・コレクションA.T.さんが現役を引退した年にメキシコへ単身で渡ったDOUKI選手。

新日本プロレスの“ヤングライオン”を経て、海外遠征に行ったわけではなく、何の後ろ盾も無い片道切符は、新日本プロレスの聖地後楽園ホールへとたどり着いた。

しかも新日本プロレスジュニアの未来を背負う高橋ヒロム選手の復帰戦の相手という大役だ。

DOUKI選手からすれば、ここで勝利を掴むことで「IWGPジュニア」のタイトルマッチが見えて来る。いや、もしも勝利していたらタイトルマッチのカード変更すらあり得た。

一方で決して簡単な相手ではない、むしろ危険な相手であるDOUKI選手を高橋ヒロム選手が指名したのは、ゼロからもう一度はじめるためであり、“プロレスラー・高橋ヒロム”を取り戻すためだった。

 

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必死に生きる

DOUKI選手を見ていて、プロレスが上手いと思う以上に本気のファイトが印象に残る時がある。

言葉を選ばずに言うのであれば「次は無い」と言った感じ。

一回負けたら終わりのトーナメント戦を戦うかのように、貪欲に勝ちを狙っていく。これがDOUKI選手の絶対的な魅力だ。

例えば、普通に考えてDOUKI選手が後藤洋央紀選手から3カウントを奪う確率は相当低いはずだ。

単純なウエイト差やプロレスに存在する“ミエナイチカラ”である「格」だってある。

それなのに勝つんじゃない!?と思わせる力がDOUKI選手には存在した。

 

DOUKIボム

高橋ヒロム選手が日本で“DOUKIボム”を使用した時に、なんて危険な技を使うのだと思った。ただ、この技のオリジナルがDOUKI選手であることを知ったときに唖然とした。

「ここまで身体を張る世界で生きてきたのか」と。

言葉も通じない。そもそも知ってる人もいない。自分よりも後にメキシコへやってきた新日本プロレスから来たレスラーはCMLLのリングに上がるのを横目に見ていて、彼はどんな気持ちだったのだろう。

しょうがないなと自分の可能性を諦めるか。今に見ていろと牙を研ぎ続けるか。

DOUKI選手は後者を選んだ。“DOUKIボム”のように危険な技から華麗な“スープレックス・デ・ラ・ルナ”、“土遁の術”までオリジナル技をいくつも考案。

この日もDOUKIボムが猛威を奮った。

あそこまで危険なダイブをする必要があるのかと思うほどの鉄柵超え。

「今、俺は生きてるんだ!」そんなメッセージがビンビンに伝わってきた。

“野生”として生まれた男はメジャーとは違う場所で己を磨き続けて、世界2位のメジャー団体のメインイベントを務め、ギリギリまで追い詰めた。

2010年5月31日にタイチ選手はこんなブログを投稿している。この時から11年だ。

元パレハで現一般人の元ミラノコレクションATが、僕の住んでいる日本人ペンション、サンフェルナンドにある男の子を送りこんできました!
彼の名前は羽山達也くん18歳。
ミラノ氏の知り合いで、ルチャドールになりたくて単身メキシコに渡ってきたそうです。
まだ18歳なのに言葉も通じない異国の地でイチからやろうなんて凄いですね!

彼との面白エピソード(ミラノ氏の事も含めて)は携帯サイトの日記の方で詳しくお伝えします。
彼が来てからもう1カ月くらいかな。
毎日まじめにCMLLのルチャ教室に通い、毎日僕と一緒にジムで練習しています。
いつになるかわかりませんが、彼がデビューした時は皆さん応援してあげてくださいね。

もしかしたら2代目ミラノコレクションを名乗るのかも・・・
でも彼が尊敬、憧れているレスラーはOKUMURAさんだそうです。

ミラノ氏、残念!
達也、アレナメヒコでデビューできるまで頑張れ!

出典:新・石狩生活

 

夢の対決

2020年のインタビューでDOUKI選手は新日本プロレスで一番の標的は高橋ヒロム選手だと語っている。自身が10年掛かってやったことを2年でやってのけた、と。

ずっともがいている自分。チャンスを掴んで一気に上り詰めた高橋ヒロム選手。その悔しさを思いっきりぶつけたい。

DOUKI選手はずっと新日本プロレスのリングで高橋ヒロム選手とシングルマッチを戦いたいと熱望していた。

今を生きる男は時限爆弾の導火線となった。DOUKI選手の次に目指すステージに期待したい。

「オイ、DOUKI! オマエ、これでもリハビリ相手としてオマエを選んだと思うか? オマエは俺にとって唯一、初心に返らせてくれる男なんだよ(場内拍手)。高橋ヒロムという名の男が、メキシコで誕生したとき、オマエはいつも横にいてくれてただろ? 新しいスタートを切らせてくれて、ありがとよ(場内拍手)」

出典:新日本プロレス

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