ケニー・オメガのインタビューを冷静と情熱の間で読む
ケニー・オメガのインタビューを冷静と情熱の間で読む。
プロレスというジャンルを追っていると日々、何かしらの新情報やニュースが届いてくるから油断も隙もない。
“レインメーカー”の帰還。“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”内藤哲也選手の欠場に続き、AEWのケニー・オメガ選手が東京スポーツのインタビューに答えていた。
タイトルは【AEW】副社長ケニー・オメガがインタビューで断言「プロレス界を救うのが俺の仕事」
2017年から2019年の新日本プロレスを語る上で間違いなく話題に出てくる“3代目 バレットクラブ”リーダーのケニー・オメガ選手。
反則行為を行わない、仲間の介入もない“ザ・クリーナー”のキャラクターはまさにダークヒーローそのもの。
また、飯伏幸太選手との再会後はDDT時代の金髪に戻し“ゴールデン☆ラヴァーズ”の“ザ・ベストバウト・マシン”としてフェイスターン。
ケニー・オメガ選手はオカダ・カズチカ選手の所有物だった「IWGPヘビー級ベルト」も手にするなど、新日本プロレスのトップに君臨していた。
2019年1月の東京ドームで棚橋弘至選手に敗れ、その後一度も姿を見せることなく新日本プロレスに去った。
“バレットクラブ”内のユニット“ジ・エリート”たちと立ち上げた新興のプロレス団体「AEW」は、潤沢な資金を武器に今や飛ぶ鳥を落とす勢いで勢力を拡大してる。
その「AEW」の副社長であり、“AEW世界ヘビー級王座”のケニー・オメガ選手が東京スポーツのインタビューに応じ、現在のプロレス界についてぶった斬った。
このインタビューをどう読むのか。色々な視点があると思う。
「待ってたよ!ケニー!頼むよ!」
「やっぱり好きじゃねぇなぁ...」
「ケニーにまた新日本のリングで戦ってほしい」
「アスリートプロレスはもうやめてくれ」
ケニー・オメガ選手については僕の中でも2つの感情がある。
一つはやはり彼の影響力、実力は凄まじかったということ。
日本語を巧みに話し、親日であることをアピール。また、激しすぎるアスリートプロレスとコミカルな試合の振り幅は多くのファンを楽しませた。
“ジ・エリート”のメンバーたちとの関係性や飯伏幸太選手とのストーリー。新日本プロレスのトップレスラーであるオカダ・カズチカ選手、内藤哲也選手らとの激闘。
そして、クリス・ジェリコ選手を迎え撃った一戦。
その全てがアメージングであり、彼はあの時新日本プロレスの中心にいた。
だが、棚橋弘至選手に敗れ、王座から陥落した後が問題だった。
新日本プロレスを批判するコメント残したのだ。
これが2つ目の感情だ。
今の彼があるのは新日本プロレスのトップで活躍するチャンスを得たからだ。
そりゃ契約関連で嫌なこともあっただろう。それでも、過去の組織を公の場でDisる姿勢は人間的に好きではない。
今回のインタビューもそう。理屈や指摘、自信の表れなのは分かるが、何か引っかかる。
ただ、それも「あの時の発言に引っ張られている」というフィルターが掛かっているのだと自分でも自覚している。
過去、現在、未来。
過去は変えられないので、今にスコープを当てる。
フラットな気持ちでこのインタビューを読むとどんな気持ちになるのか。改めてどう解釈するのか。少し読み直してみたいと思う。
【AEW】副社長ケニー・オメガがインタビューで断言「プロレス界を救うのが俺の仕事」 https://t.co/sRCFHIweaM
— 岡本佑介@東京スポーツ新聞社 (@okamotospo) 2021年9月22日
AEW成長の要因
まずはAEWが成功した要因について。
潤沢な予算に弱者の戦略をかけ合わせることで、一気にその知名度をぶち上げた。
ジョン・モクスリー選手やCMパンク選手、ブライアン・ダニエルソン選手など有名レスラーがAEWを求めたのは、「もう一回、こういうプロレスをやりたい」という“プロレスラー”の本能を刺激したためだろう。
細かいレギュレーションが一人の神によって決定されるのではなく、プロレスラーが団体のトップに立つことで、個性を尊重する方針を打ち出した。
いいレスラーが集まれば、客は集まる。世界一の団体では満足できなかった層は、そっちに鞍替えす可能性が十分にあった。
いいレスラーがいい試合をすれば、さらにその熱は加熱する。
世界で一つしかないと思われていた団体に追従できるギャラを提示できる点も街がないなく強いポイントだと思う。
――AEWが勢力を拡大中だ。成功の要因は
ケニー レスリングに対しこれまでと違う取り組み方をしていること、出場選手が非常に優れていることに尽きる。幸運にもそれがファンに理解され、もっと踏み込んで言えば、実際にWWEでやっていたレスラーたちも「もう一回、俺もこういうプロレスがしてみたい」と感じるようになってきたんだ。(ジョン)モクスリーもCMパンクもブライアン・ダニエルソンも、プロレスの本来あるべき姿を求めてここに来たんだよ。
ジェイとオスプレイ
インタビュー中、彼は新日本プロレスのレスラーの名を4名。DDTプロレスリングのレスラーを1名挙げた。
日本人は飯伏幸太選手、オカダ・カズチカ選手、竹下幸之介選手。
そして、“ガイジン”はウィル・オスプレイ選手、ジェイ・ホワイト選手である。
「俺のレベルに達していない」というマウントのとり方にピクっとなった人もいるだろう。僕もその一人だ。
ウィル・オスプレイ選手はアスリートプロレスというジャンルにおいて、ケニー・オメガ選手に劣っているとは思わない。
ジェイ・ホワイト選手はその対局に位置し、日本人ファンの支持を得るストーリーは“かんたんに作れる”がそれをせずにヒールを貫いている。
※ヒゲを剃って、日本語を解禁。同時期にヤングライオンだったメンバーと組んで“ダークヒーロー”をやれば爆発的な人気が出るのは目に見えている。
ダークヒーローとヒールの違いについてはこちら。
――日本人や日本を主戦場とする選手では
ケニー もちろん飯伏(幸太)の名前は挙がるよね。米国に来たら、という意味ではオカダ(カズチカ)がすごく喜ばれると思う。竹下(幸之介)もファンの反応がすごくよかったし、また来てほしい人間だね。あと個人的に戦いたい相手は(ウィル)オスプレイとジェイ・ホワイトかな。彼らは新日本プロレスが「新しいケニー・オメガ」にしたかった2人だよね。俺のレベルに全然到達してないけど、今の新日本ではレベルの飛び抜けた選手だと思う。彼らとできれば、今の俺とレベルの違いを世界に見せつけるいい機会になるんじゃないかな。
ただ、一点あるのは最近、僕はケニー・オメガ選手の試合を見ていない(冷静に)。
新日本プロレスにいた当時よりもさらに進化しているのであれば、この自信も納得というところだ。
また、ここでも棚橋弘至選手の名前を出さないのは、違った意味で意識をしている現れだと思う。
AEWの日本進出
AEWはとてつもなくビジネスライクな団体なのだと思う。
いい条件があれば、感情を抜きにして物事を進める。そんなイメージ。
鈴木みのる選手からすれば「カネがよければ」やるだろうし、活躍の場を求める第3世代からしても、魅力的なリングだと思う。
最後にここ。
「メッキが剥がれた」発言だったり、ある団体は俺を使おうとしない発言について。
東京ドームで俺を使えば客が入る。対戦相手は飯伏幸太選手かオカダ・カズチカ選手。
見たいかと言われると、大多数の方が見たいと言うだろう。
僕は真ん中だ。AEWのリングにオカダ・カズチカ選手や飯伏幸太選手が上がるのはいいが、新日本プロレスで彼を見たいかと言われると、気持ちの整理が難しい。
棚橋弘至選手の矜持がビジネスに負けるのはちょっと見たくないのだ。
※ちなみに忘れがちではあるが、ケニー・オメガ選手が「IWGPヘビー級王者」だった時代は、アメプロ色が強まり、特に3Wayマッチには相当の批判が集まっていた。そういった過去がもうなかったことになっているのも気になる。
――新日本をはじめ日本の団体との関係性
ケニー 俺とヤングバックスが考える一つのゴールは、すべてのプロモーションに対してオープンな場所を提供し、みんなでベストなものをつくり出すことなんだ。鈴木みのるや小島聡に来てもらう機会もあった。今AEWに出てもらうことに何も縛りや障害はないんだ。ここに上がる自信がある選手はどんどん出てほしいと思っているよ。
(中略)
――厳しい見方だ
ケニー 楽な状況にいた時には気づけないんだ。悲しいことに、選手だけでなく、団体側も今、何が起きているかを理解できていない。俺一人だけでも救い出すことができるんだけど…どこかの団体は不思議なことに俺を使おうとしないんだよね。これを聞いて怒ってくれてもいいよ。でも俺のこと間違っていると言える? 俺はもうすでに証明したでしょ。AEWの成功とともに。日本のファンだってまだ忘れていないでしょ? 彼らの中で俺は今でも「ナンバーワンガイジン」じゃないか。
賛否両論を理解して
以上。冷静と情熱の間で読むと言いつつ、感情むき出しだった。
僕の場合、ケニー・オメガ選手がメチャクチャ好きだっただけに、新日本プロレスへのガチな批判が本当に嫌だった。
AJスタイルズ選手はいつでも帰ってきてほしい!と思う反面、彼に対してそういった気持ちになれないのは、こうして団体批判をしてくるためだろう。
ただ、一歩引いて考えるとこうも受け取れる。
確実に賛否両論が起こるのを見越して、このインタビューを出している、と。
彼は日本に根強いファンいることも知っているし、僕のようなスタンスの人間がいることも知っている。
支持とブーイングをダブルで集める。そう“ザ・クリーナー”はそういったダークヒーローだった。
再び、ケニー・オメガ選手が新日本プロレスに上がる時、迎え撃つのは誰になるのか。
“ザ・クリーナー”か“ベストバウトマシン”か。
はたまたやっぱり彼を使う日は二度と訪れないのか。久しぶりにケニー・オメガ選手のことを考える時間となった。
ただダニエル・ブライアン選手との頂上決戦は一人のファンとしてメチャクチャ気になっている(多分、AEW登録すると思う...)
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