KENTAと高橋裕二郎!「ケンさん、マジリスペクト」の理由
KENTAと高橋裕二郎!「ケンさん、マジリスペクト」の理由について考えてみたい。
2021年9月23日、新日本プロレスの「G1クライマックス31」大田区総合体育館 大会で“バレットクラブ”の高橋裕二郎選手とKENTA選手が激闘した。
“バレットクラブ”の同門対決と言えば、適宜“馴れ合い”を見せる傾向にあったが、この試合は頭からガチ。これマジ。
KENTA選手が高橋裕二郎選手に「Too Sweet」を迫るも無視。ピーターさんもそっぽを向いてしまう。
高橋裕二郎選手と言えば、“ハウス・オブ・トーチャー”を結成し、“バレットクラブ”内での立ち位置も少し変化したばかり。
このウルフパックの拒否は“ハウス・オブ・トーチャー”が影響してのことか。それとも真剣勝負の意味合いなのか。
その本質が見えないまま、闘いのゴングが鳴り響いた。
結論から言うと、この不安は杞憂に終わった。
最高の勝負をした2人は抱き合った。その後、高橋裕二郎選手は「ケンさん、マジリスペクト」と賛辞を送る。
本当に素晴らしい好勝負だった。
Take my hat off #Respect pic.twitter.com/Hb5YsFWbtK
— KENTA aka Lil’K (@KENTAG2S) 2021年9月23日
KENTAの勝因
どちらか勝ってもおかしくない好勝負をKENTA選手が制した。
その要因の一つがバックステージで明かされたのだ。
新日本プロレスワールドの“2代目”カメラマン。「太ってんなぁ!」の方がこの日の大田区総合体育館に駆けつけていたのだ。
そして、このバックステージでは敢えて、高橋裕二郎選手についての言及は避けた。
あそこまで高橋裕二郎選手の気持ちを引き出す試合をしたにも関わらず、「今シリーズの裕二郎は楽しみ」とだけ。
まるで「言葉にして語らなくても伝わったでしょ?」と言わんばかりの姿勢だ。
KENTA「(※コメントスペースに来るなり、太っているTVカメラマンに向かって)太ってんなあ! 勝っちゃったよ。またお前がいるから勝っちゃったよ。ちょっとどうなってんの? また太っただろ、お前。太ったろ? (※返事を求めるように語気を強めて)太ったろ? 太ってんな。座らせて(※と言って座る)。見た、今日の裕二郎? 違うわ。裕二郎に勝てたのは良かったな。楽しみ、今シリーズは。今シリーズの裕二郎は楽しみ。ほんで次はいよいよTOMO(石井智宏)か? TOMOだ、次。久しぶりだな、TOMO。あれだろう、みんな忘れかけてるけど、SHOとYOHが別れて、一番被害受けてるのTOMOだからな。3人で一緒だったんだから。それが急にピンにされちゃって可愛そうだろ。それでもああやって1人で女子ウケっていうか、その部門を俺が引き受けるっていう姿勢が見えるじゃん。そういうところが男なんだよ。好きなんだよ。可愛いな。久しぶりだな。でもな、TOMO、俺がここに来たばかりのころ、さんざん俺のことをバカにしてくれたよ。見下してくれたよ。あれ忘れてないんだよ。あれ忘れてないの。わかるよ。いい試合が見たい、激しい試合が見たい、あいつとあいつが高め合っていい試合をする。そういうのもいいのはわかるよ」
KENTA「でも結局さ、(※指で自分の胸を指して)ここじゃん、見たいの。俺はあいつが俺に発した言葉を絶対許さねぇから。それは見ているお前らもそう。何年か前、俺に言ったこと。Twitterで『KENTA死ね』って検索してみろ。いまだにたくさん出てくるから。なんかっていうとそれ見て、魂を燃やしてんだよ。それが日々、俺がこうしてやっていく上でのエネルギーだよ。なあ、TOMO、ガンガンやってやるよ。覚えておけよ。結局、俺が何を言いたいかって言うと、何が言いたいかって言うと、(※太ったTVカメラマンに向かって)っていうかお前に何が言いたいかって言うと、最初の頃はいじられても謙虚な感じだったのに最近は俺がいてお前がいたら、『今日はどんな感じでいじってくれるのかな?』みたいな顔してるところがちょっと腹立つから、初心忘れるなってこと! 分かった? 肝に銘じろよ」
リスペクトの意味
試合に敗れた高橋裕二郎選手。だが、結果よりも試合内容に満足することができたのかその表情は明るかった。
さて、あの試合に存在したテーマとは何か。この点に迫ってみよう。
先日、内藤哲也選手の「G1クライマックス31」全戦欠場が発表された。
彼との公式戦をもっとも楽しみにしていたのは高橋裕二郎選手である。これは言い切ってしまっても問題ないだろう。
“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”の結成後初。約7年振りとなるシングルの直接対決。
2人のヒストリーが爆発する。後楽園ホールのチケットが完売した公式戦を超えるスペシャルマッチだ。
発表後、すぐにチケットが完売したことは本人たちの耳にも入っていたはず。気合が入らない訳がない。
高橋裕二郎選手は初戦で飯伏幸太選手を破り、勢いをつけた状態。これは分からんぞ...と思った矢先のアクシデントである。
「マジかよ...内藤チャン」
“プロレスラー”高橋裕二郎としてそんな言葉は表に出さずとも、落胆の気持ちは少なからずあったに違いない。
そんな高橋裕二郎選手の気持ちを察してか、全ての感情を曝け出すようなファイトへと導いたのがKENTA選手だ。
高橋裕二郎選手の心を引き出すように、技を受け、攻撃を繰り出す。
試合中盤に出したフロントのネックロック(エル・デスペラード選手いわく地味で苦しい)以降、さらに空気が変わった。
「裕二郎!やるんだろ!お前!」と挑発し、蹴りを一発。
そこから高橋裕二郎選手の目の色が変わる。
考えるのは目の前の相手に勝つことだけ。リーグ戦の行く末すら関係ない。
「鉄也!バカちんが!」
欠場してもなお、存在感のあるレスラー。それが内藤哲也選手なのだ。
ちなみにリスペクトは日本語で尊敬しているという意味合いで使われる言葉。
海外ではちょっとニュアンスが違っている。“バレットクラブ”の日本人メンバーとして長年戦ってきた高橋裕二郎選手なだけに、その辺りのニュアンスを込めて「リスペクト」というワードを選んだのだと思う。
このシーン動画で見ると、一度バックステージを離れて、戻ってきてから大切なメッセージを出していることが分かる。
大怪我を負って、ほとんどのファンを敵に回してなお現在の地位にいるKENTA選手。そんな彼へいろんな意味を込めてのリスペクトを贈った高橋裕二郎選手だった。
裕二郎「PIETER、今日試合したケンさんをなんて呼んでんだっけ?」
PIETER「ケンさん?」
裕二郎「違うでしょう、PIETER。ケンさんのことをケンちゃんって呼んでるじゃん」
PIETER「ケンちゃん?」
裕二郎「今日は俺とケンちゃん、どっちがカッコ良かった?」
PIETER「裕二郎さんのダンス、最高にセクシー!」裕二郎「これマジ」
結局、何が言いたいかって言うと、ケンさん、マジリスペクト」
人生は面白い
この日の高橋裕二郎選手の対角線に立ったのが“同級生”のKENTA選手でよかったなぁとつくづく思う。
2人の関係は少し特殊だ。新日本プロレスとしてのキャリアは高橋裕二郎選手の方が遥かに長い。
一方で、KENTA選手のプロレスデビューは2000年。大卒でデビューした高橋裕二郎選手は2004年である。
以前から高橋裕二郎選手はKENTA選手のことを「さん」付けで呼んでいた。KENTA選手は「裕二郎」と呼んでいる。
同じ歳のちょっと複雑な関係。ただ、それは表面上のものであって、本質的には同級生なのだ。
近年、高橋裕二郎選手の試合でここまで彼を引き出したのはちょっと例がない。
「諦めていると思っていたけど...」とエル・デスペラード選手が語ったように、この日の高橋裕二郎選手は伝わってくるファイトを魅せた。
新日本の門番としてバレッタ選手と戦った時とも違う。今の高橋裕二郎選手だからできる本気の試合。
色んな問題やどうしようもない気持ちを抱えながらも、本気で向かっていくファイト。
だからこそ胸を打つのだ。
この試合を見て、僕もこの言葉しか出てこなかった。
「ケンさん、マジリスペクト」
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