ゲイブリエル・キッドの復帰と僕の話

ゲイブリエル・キッドが新日本プロレスへ戻ってきた。

上村優也、辻陽太と共に2020年、2021年を盛り上げた“ガイジン”のヤングライオン。

社会状況が激変したタイミングでも、自国への帰国を選ばず日本に留まり野毛道場を選んだ。

僕はゲイブリエル・キッドの日記が好きだった。

2020年7月〜2021年5月まで新日本プロレス公式スマホサイトで連載されていた“Gabriel Kidd: A Brit Abroad”。

彼のパーソナリティをウィットに富んだ表現だけ発信していたとても素晴らしい日記。こういったコンテンツは比べるものでもないのだが、内容・長さ・メッセージ性の3つで見ると、過去最も素晴らしいシリーズだったように思う。

野毛道場を離れるタイミングでブログも終了。その後、表舞台に出てくることがなかったため、彼はどうなってしまったのかと不安に思うこともあった。

ゲイブリエル・キッドはファンの前に再び姿を現した。

“ヤングライオン”ではなく、ゲイブリエル・キッドとして。そして、彼は18ヶ月間の想い出をリングで語った

 

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ゲイブのメッセージ

YouTubeで公開された動画には諸注意が入っていた。これからこの文章を読む方で不安を感じる人がいるかもしれないので、注意して目を通して欲しい。

「皆にオレの本音を話したい。何百回、何千回と どう言ったらいいか考えていた。オレが言いたいことをわかってくれる人とオレが言いたいことをわかってくれない人もいるだろう。でも、これがオレの本音だ。言わせてもらう。どこで、どのように伝えるか悩んだ。でも本当に伝えたいことは変わらない。

18ヵ月もの間、言葉のわからない国で、それもコロナ禍で暮らすのは大変だった。毎日、体力的にもメンタル的にもギリギリのところまで追い込まれていた。毎日だぞ。世界がロックダウンして、何もかも閉まってしまって。みんな、ステイホームしてネットフリックスを見て……。でも、オレはそれができなかった。オレは新日本の道場で修行していた。毎日だ。中には『お前は恵まれている』という人もいるかもしれない。でも、そのようなプレッシャーはだんだん重くなっていくんだ。そして5月……5月に……とうとう耐えられなくなった。

ある日、街を歩いていたんだが耐えられなくなって、東京のビルの屋上でもう生きたくないと思ったんだ。屋上から地面を見て、ここから飛び降りたら全てが解決すると思った。オレの気持ち、悩み、すべてが消える、と。

でも、その考えを止めてくれるものが2つあった。……一つはオレの母さんへの思い(涙ぐみながら)。そして、二つ目はプロレス! オレはプロレスにすべてをつぎ込んで、ずっと頑張って、ここでその人生を終わらせることができなかった。神に誓ってもいい。18ヵ月の間、家族と会えず、友だちにも会えない。毎日孤独の中 道場を掃除し、トレーニングをして、ちゃんこを作った。18ヵ月頑張った。18ヵ月もだ!」

※会場から「ゲイブ、大好きだ!」という声が飛ぶ。

ゲイブリエル「オレも皆が好きさ(※会場から拍手)。それから、遠い国で年老いたオレのおばあちゃんがどうしてるか心配だった。テキストやフェイスタイムでしかおばあちゃんと連絡が取れなかった。……でも、踏ん張って、進み続けることができた。イギリスにやっと帰ることができて、この感情や新たな経験にたいしてモヤモヤしたまま悩んだ。でも“この瞬間”を何度も思い描いて、前に進めた。いつ、どこで、誰の前でかはわからなかったけど、オレはまた新日本のリングに立つ、ということを原動力に前に進めた(涙を拭きながら)。

出典:新日本プロレス

youtu.be

 

Hard life

人はプレッシャーに耐えられなく時がある。メンタルも肉体も限界。何にも出てこない空っぽな状況。心に穴が空き、ストレスの原因と距離を置かなかければ絶対に回復しないまで追い詰められる時がある。

ゲイブリエル・キッドの告白を見て、僕もこの話を書かなければと思った。

僕は2度、精神疾患に掛かっている。

1度目は6年前。努力して入った会社で何もできなくなった。2度目は今年の出来事だ。

いい仲間に囲まれ、楽しい日々を過ごし、充実した仕事をしている時にアレは襲ってくるのだ。

リミッターを外したかのように働き、成果を出している時にアレはやってくる。

何もやる気がおきない。やるべきことと向き合うだけで....肉体が悲鳴をあげる。

辛いことなんていくらでも超えてきたはずなのに、どうしても無理。そんな状況。

本気で物事に向き合う大切さを社会人は説きがちだが、それは本当に恵まれてることなのだとこうした経験を通じて知ることになる。

 

誰かに頼ること

結局、立ち直るのは自分自身でしかない。まず、心も身体も休める。スマホの通知は全部切る。SNSも見ない。これが一番大事。何もしなくていい。したいことがあれば少しやればいい。やりたくないことは全部やらない。やりたいことだけやる。

そこから少し回復したと自覚が持てたら、食生活の見直しと運動、趣味、勉強に目を向けてみるといい。

アウトプットに偏りすぎた空っぽな自分に、空気と栄養と知的好奇心を詰め込む。でも、めんどくさいと思った日は何もしない。それくらいのスタンスで。

これはゲイブリエル・キッドも発していたが、誰かに話していいんだ。辛くなったらその気持ちをそのままに伝えたっていい。

ただ、辛いとSOSを発しても会社側からは受け入れてもらえないケースがある。

そこで受け入れてもらっていれば。こんな事態に陥ることはなかったと思う分岐点は必ずあるのだ。

正直言えば、僕は2回ともにSOSを受け入れられず、その後2週間以内に倒れている。

その2週間は無理をしただけで大した成果はない。回復が遅くなっただけだ。

つまり、SOSを発して受け入れられようが、受け入れられまいが関係なく病院に行ったり、必要な公共機関に相談した方がいい。

その方が結局、傷口は浅い。無理している時間は何も生み出せず、回復までの期間が長くなるだけ。本当に我慢しても意味がないのだ。

一度目、献身的にサポートしてくれる人のお陰で立ち直ることができた。

二度目はそういった人が周囲にいなかった(社会状況的にも会えなかった)ため、自分の身を自分で守った。

こんな経験は人生で1度もない方がいい。普段から楽しく、無理をしない生活をあなたにも送ってほしいと思って、今回はこんな話を書いてみた。

誰が悪いわけでもない。だから、誰か(団体を含めて)を軽々しく非難してはいけない。

ゲイブリエル・キッドのメッセージは自分の経験を通じて、誰かに頼ることの大切さを伝えるため。新日本プロレスがわざわざ字幕まで付けて配信したのは、より多くの人に届けるためだ。

「助けて」っていうのは恥ずかしいことじゃない。その一言がきちんと届く相手に届けば、あなたの世界はきっと変わる。きっとだ。

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