ザック・セイバーJr.は新日本プロレスのトップ“ガイジン”になった

ザック・セイバーJr.は新日本プロレスのトップ“ガイジン”になった。

正直、ザック・セイバーJr.が「ここ」まで来るとは思っていなかった。

2018年、スルスルっとトップレスラーたちを倒し、「ニュージャパンカップ」を制覇。

この時点からシングルでの強さや特定のレスラーに滅法強い特性は浸透し始めていたが、今のような感覚はなかったようき思う。

感覚。言葉にすると安っぽさが出てしまうのだが、新日本プロレスのトップ“ガイジン”レスラー。そんな感覚だ。彼が“ガイジン”として団体を牽引している。強さや激しさとは別の引力。

今のザック・セイバーJr.には引きつける力がある。

潮目が変わったのは、タイチとのタッグチームに“デンジャラス・テッカーズ”と名前がつき、定着してきた2020年頃からだろうか。

社会状況の変化で“ガイジン”レスラーたちが軒並み新日本プロレスのリングに上がることができない中、なんと日本に住んでいることが発覚(2019年頃に一度口にしていた)。

彼とゲイブリエル・キッドの2人はセルリアンブルーのリングに上がり続けた。

このタイミングからザック・セイバーJr.は日本語を解禁した。

ヤバイヨ!オマエ!オレニホンゴ、ワカラナイ!

内藤哲也やEVIL、飯伏幸太を倒しまくっていた英国の若き匠。いつしか彼を支持する声が増え始めた。

そして、今。新日本プロレスのトップ“ガイジン”へと定着しつつある。

 

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技術が激しさを越える

2017年〜2019年まで主流だったアスリートプロレスとザック・セイバーJr.は対局に位置している。

「頭から落とすのだけがプロレスじゃない」

そう言い切ったSANADAと手が合うのは、彼らの根底にあるものが近いからなのかもしれない。

危険技を通じてファンのアドレナリンをドバドバ出していたあの頃の新日本プロレスと比較すると、玄人受けするプロレスではある。

ただ、いい意味で安心して見ることができる。

そして、何よりも圧倒的な技術がプロレスの定番を変えた。

ザック・セイバーJr.には特定のフィニッシャーがない。

正確には、流れるように形を変える複合関節技に正解がないのだ。

的を絞れないまま相手は泥沼に浸かり、破れる。ただ、英国の若き匠の真髄は別にあると僕は思っている。

 

個性を潰す

ザック・セイバーJr.は相手をリズムに乗せない。戦術的に技を受けることは勿論あるが、流れを渡すことはしない。試合の流れを読む力。相手の個性を潰す力。ここがザック・セイバーJr.の凄みだろう。

「G1クライマックス31」で内藤哲也、飯伏幸太、鷹木信悟を3タテした時もそう。彼らの長所を消し、見たこともないような関節技で勝利をもぎ取った。

実は2020年以降、ファイトスタイルも少し変化している。以前よりも相手が攻めている時間が増えた。ザック・セイバーJr.が受けに回っているシーンをよく見るようになった。

受けと日本語解禁。この2つが変化であり、今のザック・セイバーJr.の地位を作ったものだと思う。

関節技に特化したレスラーの中では細身の肉体が、相手の激しい攻撃を受ける。

ここにカタルシスが生まれる。細身の男でもでっかい男を技術で倒せるのだ、と。

 

メッセージ性

これは僕の考えだが、人気が出るための条件をザック・セイバーJr.は手に入れた。

一つは仲間との絆。

昭和のアイドル時代と異なり、平成以降はカリスマ性と同じくらい仲間との絆が大切だ。柴田勝頼に勝つため“鈴木軍”に加入。

当初はヒールユニットとしての色が強かったが、現在はファミリー感のあるダークヒーローへと変貌。タイチとの絆、金丸義信、エル・デスペラードとの信頼関係が、今のザック・セイバーJr.の魅力につながっている。

もう一つが“儚さ”。

以前、「NEVER無差別級6にタッグ」に挑戦した際、YOSHI-HASHIのバタフライロックを受けたDOUKIを真っ先に救出しようとしていた。

ウエイト差がどれほどキツイものかを自らがよく知っているからである。

関節技でねちっこく追い詰めていても、重い一発でひっくり返されてしまう。その「儚さ」が彼を応援したくなる気持ちにつながっていく。

そして、最後がメッセージ性だ。昨日のバックステージコメントを読んでみてほしい。

ザック「あのテンザンのオッサンはなんであんなにやる気になってんだ!? やたらゲンキだったな!? あぁそうか、相手はタッグ王者で次期IWGP世界ヘビー級王者の俺だったからか。あいつは年寄りだし見た目も酷いが頭だけは悪くないようだ。挑戦したくて俺に噛みついてくるんだろ? 喜んで相手になるぞ。さすがに元『G1』覇者で元IWGPヘビー級王者のレジェンドだし、引退前の最後の挑戦をさせてやるよ。テンザンに最後のチャンスをやる。でも、そのデカ頭じゃ救急車にも収まらないだろうから、病院の代わりに老人ホーム送りにしてやるよ、ダーリン。

ボーイズ(デスペラード&金丸)も明日はベルトの防衛戦だし、スズキグンにとっては重要なシリーズだな。そしてデスペと俺はシングル戦も控えてる。『POWER STRUGGLE』でスズキグンにはダブルチャンピオンが2人も誕生だ! でも、俺たちはまだまだこれからだ。

それから、ジャパニーズ・ドラゴン、タカギだけど、今日は俺との前哨戦じゃなくてガッカリしたか!? 俺は最初から前哨戦なんて必要ないけどな。お前はギブアップで俺に負けてるし、お前の手の内はもうすべてわかってる。準備することは何もない。前哨戦をやったって、お前は俺の何も暴けないさ。とうとうこの俺がトップの座に立つときが来たな。あと、タカギのコメントを読んだけど、違うIWGPのベルトがどうのこうのって文句を言ってたな。オスプレイはアメリカであの“バッタもん”のベルトを振りかざしていろいろやってるし、“カズちゃん”の狙いはなんなんだ!? オカダは記憶喪失にでもなったのか!? 4代目のIWGPヘビー級のベルトを持ってバカみたいに何をやってんだ!? タカギ、あんなバカたちのことは放っておけよ!

もし、ここに来てボブ・サップが2代目のIWGPヘビー級ベルトを持って登場したとしても、相手にするな! お前は俺とのタイトルマッチだけに集中してればいい! 筋肉は隆々だが、脳ミソは空っぽのようだな! “ランペイジ・ドラゴン”!? “D○○K HEAD DRAGON”だろ! あんな偽物のベルトを振り回してるヤツらには構うな。このZSJに全て任せておけ! 『WRESTLE KINGDOM』3連戦も迫ってきたことだ。『POWER STRUGGLE』で俺がIWGP世界ヘビー級王座を戴冠し、この“ソイボーイ・テッカーズ”がベルト問題にキチッとケリをつけてやる。じゃーな!」

出典:新日本プロレス

あんな偽物のベルトを振り回してるヤツらには構うな。オレを見ろ。オレがベルト問題にケリを付けてやる。

ジェイ・ホワイトもウィル・オスプレイもいない。その中で、ザック・セイバーJr.がいてくれて本当によかったと心から思っている。

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