エス・デスペラード、“2つの変化”が生んだリベンジのドロー

エス・デスペラードの“変化”が見えたリベンジの勝ち点1について書きたい。

エル・デスペラード選手と高橋ヒロム選手の「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア28」公式戦は30分ドローに終わった。

あれからもう1年。あの日からも大きく2人の関係は動いた。

前回の直接対決である「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア27」の優勝決定戦は、年間のベストバウト候補に数えられるほど壮絶な試合だった。

流れが大きく動いたのは高橋ヒロム選手がエル・デスペラード選手のマスクに手を掛けた瞬間だろう。

引き裂かれるマスク。現れる素顔。

エル・デスペラード選手は試合を止めないために自らマスクを脱いだ。

マスクマンのマスクを剥ぐ行為は、明確な反則行為であり、あのまま試合を続ければ高橋ヒロム選手が反則負けになる可能性が高かった。

そうならないために、自らマスクをとったのだ。

そこで現れた素顔は。エル・デスペラードだった。

髙橋広夢は高橋ヒロムになった。ならず者も既に別の人間になっていたのだ。

あの激闘から一年。

エル・デスペラード選手は高橋ヒロム選手ですらなし得ていない“ジュニア二冠王”へ。

“IWGPヘビー級&IWGPインターコンチネンタル王者”の飯伏幸太選手と最後の二冠戦を戦い、その後もメキメキと存在感を増し、今では新日本プロレスジュニアの顔とまで呼ばれるようになった。

一方で高橋ヒロム選手は怪我から復帰後も無冠の状態が続いている。

丸腰の高橋ヒロムか。チャンピオンのエル・デスペラードか。

再び交わった“同期対決”は壮絶な試合となった。

 

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30分の激闘

言葉ではなく痛みで相手の心を知りたい。

久しぶりだな同期。そう言わんばかりにバチバチと相手へ打撃を見舞う。エルボー、チョップ。

マウントを取られれば取り返す。

この痛みはお前だけの痛みだ。お前だけがくれる痛みだ。そう言わんばかりに激しい幕開けだった。

試合を動かしたのは高橋ヒロム選手。

久しぶりにD(もう1人の同期であるバッドラック・ファレ選手に爆散されたダリルのイニシャルを取った技)を繰り出すと、場外でエル・デスペラード選手を痛めつけていく。

2人の心の激しさを現すように、2人の胸は既に真っ赤に腫れ上がっていた。

 

吠える!高橋ヒロム

試合中盤。

エル・デスペラード選手は足攻めへとシフトする。

パートナーの金丸義信選手が膝へ与えたダメージを上乗せ。ここでもタッグの妙技が光る。

さらに場外でパイプ(パイプ椅子のパイプのみで)一閃。

ここから高橋ヒロム選手は左膝のダメージが顕著になる。

着地の衝撃がダイレクトに痛みへつながる。

サンサッフリップパワーボムの体制へ入るが、場外で着地した瞬間に痛みで技を解いてしまう。

そんな高橋ヒロム選手へエル・デスペラード選手は半端じゃない勢いのトペコン・ヒーロを見舞う。

試合の最終盤。高橋ヒロム選手が猛攻。Dでダメージを与えつつ、ビクトリーロイヤルからタイムボム2。

さらにエル・エス・クレロに入ったタイミングでドローのゴング。

しかし、高橋ヒロム選手は返せなかった。ゴングは聴こえているため、敢えて返さなかったのかは分からない。

ただ、後数秒あれば結果はどうなっていたのかは分からない。

エル・デスペラード選手の強さを目の当たりにし、お前との試合は楽しいと叫んだ高橋ヒロム選手。

彼の変化についてバックステージでその胸中を爆発させた。

以前はヒールとして美味しいところをかすめ取るような発言があったことに対して、今はジュニアを背負い、ジュニアへの気持ちを世間にぶつけている。

ここが素晴らしい、ここが輝いているのだと絶賛した。

ヒロム「(※『フヘヘヘ』と笑いながら引き揚げてきて、フロアに座り込み)ああ! 変わったな! 変わったな、デスペラード! 俺とKUSHIDAで、散々やり合ってた時に、“お前らで盛り上げたジュニアの舞台に俺は乗っかる”、お前はそういう人たちだ。ところが! ジュニア、ジュニアに対する思いだとか、そういうもの、思いっきり世間に、会社にぶつけるようになったな!

だから面白ぇんだ! だから今のお前は輝いてんだ! だからチャンピオンなんだ! お前はチャンピオンにふさわしい! 素晴らしい! 正直! 今日、楽しすぎて、この時間が止まらなきゃいい。本気でそう思った! お前がいたら、俺は楽しめる。新日ジュニア、ジュニアのことを思う人間がいればいるほど、俺は輝く。そして、心の底から楽しめる。俺自身が、俺自身が楽しまなきゃ、誰も楽しめないんだ!

それから、1.4、1.5、オカダ? 鷹木? オスプレイ? メインイベント? 偽物のベルト? NOAHと合同興行? 対抗戦? そんなもんな、関係ねぇんだよ。俺たちは『SUPER Jr.』しか見えてない。そして『SUPER Jr.』のその先の、ジュニアを盛り上げることしか見えてねぇんだ! 俺は宣言するぞ。この『SUPER Jr.』、完全に! すげぇ! メチャクチャ! 盛り上げて、優勝してやる!

そして、東京ドームのメインイベントに上がるのは、この俺だ! (※立ち上がって)真面目に生きたらバカを見る時代か!? 夢を見ちゃいけない時代か!? それだったらな、なおさら俺が、バカみてぇな夢を! 真面目に追いかけて! そして! 必ず叶えてやる!」

出典:新日本プロレス

 

ならず者の想い

チャンピオンとして全試合メインイベントを要求。まさにジュニアの顔として今シリーズに望んだエル・デスペラード選手だが、やはりチャンピオンとはマークされる存在である。

SHO選手には“ハウス・オブ・トーチャー”の乱入もあり敗北。徹底的に勝ちに徹した石森太二選手にも黒星を喫してしまう。

エル・デスペラード選手に勝てば「IWGPジュニア」への挑戦権利が手に入る可能性が非常に高い。であれば、ここに照準を合わせてくるのも戦略としては正しいのだ。

そして、今の彼に勝つことはそれほどの意味があるとも言える。

高橋ヒロム選手はエル・デスペラード選手について以前と考え方がまるで変わったと説いた。

心の変化は肉体にも現れる。エル・デスペラード選手は身長体重不明のため、明確な変化は分からないが、明らかに肉体が99キロを目指しているように見えるのだ。

ただし、重くなれば強くなるというものでもない。最適なバランス。連戦に耐えうるコンディション。その全てを考えながら細かく調整しているようにも見える。

キレと重さ。ジュニアは99キロまで。であれば、ウエイトをギリギリにしつつ、一番動ける身体を作ることができればフィジカルでアドバンテージを作ることができるのだ。

※実際、以前までと見比べてみると身体はデカく、厚みが増していることが分かる。

このやり取りとりが伏線になりそうだからプロレスは面白い。

心も身体も変化があったからこそ、昨年の優勝決定戦とはまた違った試合展開のドローが実現されたのだと思う。

高橋ヒロム選手ともはや対等。いや、すでに喰う準備は万端である。

以前のエル・デスペラード選手は月だった。だが、今はどうか。黒い太陽がジュニアを照らす太陽に並び立とうとしている。

★2021年11月24日 新着記事★

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