武藤敬司の“対抗戦”に対する考え方と矛盾する世界

武藤敬司の“対抗戦”に対する考え方と矛盾する世界について書きたい。

2021年12月2日、東京スポーツがプロレスリング・ノア所属である武藤敬司選手のインタビュー記事を公開した。

【ノア】武藤敬司が過熱する対抗戦に緊急提言「今は昭和じゃねえんだ。ハッピーな戦いを」。

その記事の中には昭和の時代とは違い、今回の新日本プロレスとプロレスリング・ノアの“対抗戦”はハッピーな戦いにしたいとあった。

団結とまではいかずとも、見ている人がハッピーになる戦い。

理屈は分かる。言い分も分かる。時代性的にはそちらの方がマッチしているとも思う。

ただ、これはビジネス側、背広組の発言のようだとも受け取れる。

ビジネスサイドはこの大会を通じて、明るく楽しい気持ちに...にと語る一方で、レスラー同士はバチバチに意識しまくっている。それが対抗戦の醍醐味。“あの時”の空気を吸うことが叶わなかった僕は、そういったバチバチとした見えない火花に期待しているところがあった。

武藤敬司選手が掲げたハッピーな“対抗戦”。

その裏でプロレス界ではなく、総合格闘技界を有名人である朝倉未来選手が「朝倉未来にストリートファイトで勝ったら1000万円」をAbemaで配信していた。

プロレスラブな男が令和の時代を解けば、格闘技界はバイオレンスな企画でファンを酔わせる。

今日はこのモラルと本能がせめぎ合う価値観について考えてみたい。

 

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ハッピーな“対抗戦”

結論から言えば、時代に合っているのはハッピーな対抗戦だろう。ただでさえ空気がよくない。いろいろな制約も多いし、エンターテイメントを通じて明るいニュースが求められる時代だ。

ただし、今回の座組みが“ハッピーな対抗戦”という言葉で済まされるとも思えない。

例えば、全日本プロレスやドラゴンゲート、DDTなど日本の各プロレス団体も参加し、一つのお祭りを作るのであれば理解できる。

いろいろな団体が集まって、最高の試合を魅せる。そんな興行。レジェンドレスラーまで登場して、最後は「ダー!」で締める。それくらいの多幸感が集まるような興行を作る可能性もゼロじゃなかったはず。

今回は新日本プロレスとプロレスリング・ノアの対抗戦だ。

メインイベントの勝者側が喜び、敗者側は下を向く。これは競技性や座組みとしてしょうがないのではないだろうか。

そうならない“作品”を作る道もある。だが、“対抗”してしまった以上、戦いのゴングが鳴る前からハッピーにと言われても中々そちらの方向に気持ちが向かないのも事実としてある。

「昭和の時代はそれでよかったかもしれないけど、今度は未来に続く対抗戦にしたいよな。外国人が入れるかどうかも分からなくなったわけじゃん。そんな今、見せるは団結…とまでは言わないけど、見てる人がハッピーになるようなものがいいと思う。今までの対抗戦って、応援してる団体が負けたファンは悔しくて帰ったじゃん。そうじゃなくてさ。フタを開けてみなきゃわかんねえけど、そうあればいいなと俺は思う」

出典:東京スポーツ

 

朝倉未来のケンカ企画

一方で先日、総合格闘家の朝倉未来選手にケンカで勝ったら1000万円という企画が話題になっていた。正式なタイトルは「朝倉未来にストリートファイトで勝ったら1000万円」。

総合格闘技のリングに上がっている選手と応募者がストリートファイトで激突する。

プロレスからUWFが生まれ、その流れがプライドへとつながり....と語りだすと、この本を読んだほうが早いのだが。

1984年のUWF

1984年のUWF

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改めてプロレスか格闘技か?という区分けではく、ストリートファイトが世間で話題に上がった(実際はストリートファイトの後に和解した動画を出すまでがセットの企画だったようだ)。

ここに現代の歪みがある。いや、歪みというか時代の流れと本能のギャップと言った方が正しいか。

ここ10年を見ても世界的に価値観が大きく変わっている。

それ以前の平成、昭和まで遡れば人の考え方だって今とは全然違って当たり前だ。

僕自身、このケンカ企画の結末についてはTwitterの速報で流し見した程度。

朝倉未来選手の相手となった僕も知っている芸能人(元芸能人?)の顔面は腫れ上がり、歯も抜けていた。

総合格闘家の暴力は相当バイオレンスな映像だった。

ただ、あれで盛り上がり、楽しむのが人間の本能なのだ。

よくアニメや漫画で裏格闘技場みたいなエピソードが出てくるが、今回のケンカ企画を完全にアングラ化したものだと言える。

ルールも何もないので、試合よりもifがある。そして、なによりも刺激的だ。

僕はディストピア的な企画だなと思った。

視聴者に暴力を楽しませることで“支配”することができる。快楽によって人を満足させる。不満を忘れさせることで、独裁や圧政を忘れさせる。

人間は暴力を否定する。だが、自分の関係のない暴力は極上のエンターテイメントとして楽しむことができる。

これは古代ローマ時代にもあったことである。

武藤敬司選手が「昭和とは違う。ハッピーな戦いを」と言っている真裏で、こんなバイオレンスな企画が話題になっていた。

価値観の矛盾。モラルと本能。今回の“対抗戦”はどうなるのが一番素晴らしい形なのだろうか。

 

世の中は矛盾だらけだ

「ハッピーな対抗戦」と言いつつ、実際に試合となれば全てをかっさらうのが武藤敬司選手でもある。

まさか2020年4月1日にWRESTLE-1が解散した後、プロレスリング・ノア所属となり、日の目を浴びていると誰が予想しただろうか。

天才・武藤敬司が昔から達観し、どこ吹く風と自身の世界観を作り続けてきたのは有名な話だ。

だが、彼は“最高の作品”を作るためであれば、相手を地獄にまで突き落とすことができる。

そう、高田延彦さんを四の字固めで倒した男なのだ。格闘プロレスを標榜するUWFインターナショナルの総大将を“四の字固め”で沈めたのは、我々のプロレスの方が上であるという宣言以外の何者でもないはず。

今回のメッセージを字面通りに捉えるか。それとも武藤敬司選手からの宣戦布告だと捉えるか。読者の読み解き方に懸かっている。

改めてになるが、僕は“ハッピーな対抗戦”と“バチバチの対抗戦”であれば、後者の方が盛り上がると思う。

ただし、レスラー同士が意識しあうことが大切なのであって、それぞれのファンがそれぞれの団体やレスラーを必要以上に貶したりすることではないと思う。

もちろん、自分の好きな団体だ。マウントだって取りたくなる気持ちは分かる。

その気持ちは、応援という形でぶつけるべきでSNSで相手レスラーの見えるところに怪文書を書き込むことではないと思う。

クソリプが良くないことであり、自分がされたら気分を害するとしても、やってしまう人がいる。

世の中は矛盾で溢れている。だからこそ、そんな矛盾を引っくるめて楽しめるような“対抗戦”になればいいなと僕は願っている。

★2021年12月5日新着記事★

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