なぜ、内藤哲也はジャックナイフ式エビ固めを選んだのか?
今の高橋裕二郎と内藤哲也を見ることができた一戦だった。
僕が新日本プロレスにハマったのは2017年。内藤哲也選手が「IWGPインターコンチネンタル王者」として棚橋弘至選手を東京ドームで破た年。“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”ブームが日本全国で巻き起こっていた時代だ。
※今考えると異常すぎるほどの人気っぷり。それほどまでに当時の内藤哲也選手ひいては“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”はとんでもなかった。
なので、僕は“スターダスト・ジーニアス”時代の内藤哲也選手を知らない。“ノーリミット”時代なんてさらに昔になるので、映像でしか見たこと無い。
シングルプレイヤーとなった内藤哲也選手の公式映像はたくさんあるが、“ノーリミット”の試合は少なく、二人が組んでいたことは周知の事実ではあるものの、どんなタッグチームだったのかは具体的に説明することができない。それがもどかしかった。
内藤哲也選手の本を読むと高橋裕二郎選手はそんなに仲がよかったわけではないことが分かる。趣味も志向も全然真逆。
メキシコに馴染んだ内藤哲也選手に対して、全く馴染めなかった高橋裕二郎選手。一方で、アメリカに行った途端に高橋裕二郎選手がハネを伸ばし始めたのは有名な話だ。
少し先輩とのタッグチーム。今で言うところのマスター・ワト選手が上村優也選手とタッグを組むようなものか。
“ノーリミット”は高橋裕二郎選手が内藤哲也選手のリードで試合をしていたという。
試合巧者の内藤哲也選手がスピードとテクニックで相手を翻弄し、高橋裕二郎選手がパワーで仕留める。
そんな二人のチームはIWGPタッグとジュニアタッグを巻いた唯一の日本人タッグチームとなった。この記録に並んだのは“ヤングバックス”のみ。
日本人タッグチームでこの記録を作るチームはもう出てこないかもしれない。それほどまでに素晴らしいチーム。最高のタッグチーム。それが“ノーリミット”だった。
僕はSNSを閉じて、部屋を暗くして、ヘッドフォンをつけてモニターを食い入るように見ていた。
どんな表情で二人が入場してくるのか。どんな気持ちがあるのか。どんな策略があるのか。
そして、今の二人はファンに何を魅せたいのか。僕にとって初めての“ノーリミット”対決。それは高橋裕二郎選手のどこか哀愁と決意が感じられる入場からはじまった。
内藤「俺は今の高橋裕二郎を否定するつもりはない。だって、アレが今の高橋裕二郎なんでしょ? なら自分の信じた道を突き進めばいいよ。そしてまた俺の視界に入ってくればいいかな。アミゴ・パサード(昔の友達)。俺にとっては、外す事のできない人物なんでね」
— 新日本プロレスリング株式会社 (@njpw1972) 2022年3月2日
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アミゴ・パサード
肝心の試合内容についてはあなたの目と耳で体感して欲しい。僕が伝えたいのは、“ノーリミット”対決であり、二人の物語は全く終わら無かったということ。
デスティーノも東京ピンプス(ビッグジュース)もなし。二人のフィニッシャーはお互いに決まることなく、決まり手はジャックナイフ式エビ固めだった。
気づいた人も多いハズ。この技は内藤哲也選手が“ひとりロス・インゴベルナブレス”時代に使っていたフィニッシャーだ。
スターダストプレスを封印し、棚橋弘至戦でデスティーノを披露するまではこの技をよく使っていた。
内藤哲也選手にとって、この技は特別なのだ。この技で勝つことに意味があった。
“制御不能”になった自分のはじまりの技で高橋裕二郎選手を倒すことに意味があったのだ。
運命で終わらせない。今の俺はこの技からはじまったんだ、と。
内藤「すごく久々に今の高橋裕二郎を感じましたよ。若手時代を一緒に過ごし、一緒に海外遠征に出た、2年先輩の高橋裕二郎。当時は、彼の背中がすごく大きく感じてたよ。それがいつの間にか、小さく見えてしまい、そして視界に入らなくなってしまった」
内藤「俺は今の高橋裕二郎を否定するつもりはない。だって、アレが今の高橋裕二郎なんでしょ? なら、自分の信じた道を突き進めばいいよ。そして、また俺の視界に入ってくればいいかな。アミゴ・パサード(昔の友達)。俺にとっては、外すことのできない人物なんでね」
内藤「またシングルマッチで向かい合えるその日を、楽しみにしてるぜ。カブロン!」
アミゴ・パサード(昔の友達)。俺にとっては、外すことのできない人物なんでね。この試合に意味や特別な気持ちがあったのはやっぱり間違いない。
演技だとしても
「俺と内藤、二人でやらしてくれ!」
「今日だけ!」
「2人でやらせてくれ!」
どこまでが芝居なのか分からない。
EVIL選手、SHO選手と打ち合わせをしていて、あの懇願は最初から台本があったのかもしれない。
ただ、全てを欺くために二人にも言ってなかったのかもしれない。
二人が来るのは予定通り。ただ、あの展開・あの驚き・あの空気感を作るには、仲間すら欺いた可能性がある。
リスクがあった。何を甘いこと言ってるんだと懲罰の拷問を受ける可能性もあったと思う。
ただ、あまりにも必死な表情。本気の言葉に二人は退いた。
“キング・オブ・ダークネス”と“マーダーマシン”が退いたのだ。
仲間が本気で望むのであれば、それが例え本来の“ハウス・オブ・トーチャー”とは異なる道だとしても尊重する。そんな絆が感じとれた瞬間だった。
そして、多くのファンを自分の位置まで引きずり下ろした後に待っていたのは、金的攻撃だった。
全世界のファンが「マジか!?」となったと思う。僕も泣きながら爆笑していた。
これが今の高橋裕二郎なんだと。“俺たちの”高橋裕二郎はこうでなくちゃと。
勝つためには汚いことをする。それでいいんだよ。
例えトーナメントだとしても、勝った、負けた。そんな小さいことでプロレスをしていないのだから。
自分の生き方を貫くこと。ファンに何を伝えたいのか、伝えるのか。プロレスで大切なのはこの2つだ。
高橋裕二郎選手はこの日、最高の試合を魅せてくれた。
やっぱり高橋裕二郎は“俺たちの”高橋裕二郎なのだ。
「俺と内藤、二人でやらしてくれ!」
あの時の表情と言葉その後の流れが見れただけで、僕は大満足だ。
裕二郎「内藤、覚えてるか? 昔はよぉ、相手のこと一緒にベルトでぶん殴ったりよぉ、一緒に悪さしたよな。思い出せよ。内藤ちゃん、また一緒に、あ、来るか? HOUSE OF TORTUREに。また一緒によぉ、悪いことしようぜ! な!」
高橋裕二郎選手が提示したノーリミットの復活。そんなことになったら、僕はきっと泣いてしまうだろう。
★2022年3月4日更新分★
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