石井智宏選手VS鈴木みのる選手のPOWER STRUGGLEは、アントニオ猪木氏に対するアンサーか?

石井智宏選手と鈴木みのる選手がいる限り、新日本プロレスは安泰だ。CHAOS対鈴木軍という枠を超えたプロレスラー同士のしばきあい。

これこそがストロング・スタイルであり、新日本プロレスなのだ。

そう感じせるほどの好勝負いや激闘だった。

好勝負連発となった『九州三国志 presents POWER STRUGGLE ~SUPER Jr. TAG LEAGUE 2018~』。

全ての試合がベストバウト級。ただ、一戦だけ取り上げるのであれば、僕はこの試合を選ぶ。

『ブリテッシュヘビー級選手権試合』王者・石井智宏選手VS挑戦者・鈴木みのる選手だ。

プロレスルールの中で行われる喧嘩。この試合を見ているとそんな気にさせられた。

そして、この試合から遡ること数時間前に出たアントニオ猪木氏のインタビューが頭をよぎった。

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おちゃらけはまかり通っていない

アントニオ猪木氏のインタビューは、現在の新日本プロレスファンが見れば違和感を感じるものだろう。

自身でも「試合を見ていない」と公言しているだけに、間接的に聞こえてるイメージだけで、判断してしまったのかもしれない。特にこの言葉に衝撃を受けた。

今は"おちゃらけ"がまかり通っているところがあるけど、基本、『レスラーは強くあれ』でしょ。それが『強くなくてもいい』と変わったことは、オレには理解できない。今のプロレスは『娯楽として楽しめる』という要素がすごく強いけど、オレは『大衆に夢を与える役割がある』と思っているし、そうじゃないといけない

“おちゃらけ”とほどのレベルを指し示すものなのどろうか。

辞書を引くと、「冗談を言って、ふざけたようにふるまう」とある。

いわゆる大会にアクセントをつけるコミカルな試合や先日のIWGPヘビー級3WAYマッチに対して、否定的な意見だということが分かる。

ただし、コミカルな試合をしている選手には共通点がある。皆、格闘技やレスリング、特定のスポーツで頭角を現していたアスリートなのだ。

コミカルな試合作りの難しさ

おバカなキャラで売っているお笑い芸人さんは皆、クレバーである。本物のバカ(いい意味で)か頭のキレる人材しか生き残ることはできない。つまり、天然か計算を極めた者しか生き残れない世界である。

では、コミカルな試合ができるプロレスラーに求めらるスキルとは何か。僕の中では以下3つの要素があると思っている。

  • 愛嬌のあるキャラクター
  • 要所要素で魅せる技のキレ
  • 実は強いというバックボーン

他ではない新日本プロレスのリングでコミカルな試合を行うのであれば、この3つの条件を兼ね揃えていなければならないと思っている。

当然、この3つがなくてもコミカルな試合を展開できるプロレスラーもたくさんいると思う。ただし、新日本プロレスという枠の中では、絶対に必要な要素なのだ。

何故ならば、コミカルな試合展開へと持ち込む相手は、ストロング・スタイルの血が流れている者ばかりのためだ。

 

燃える闘魂のメッセージ

それはジャイアント馬場とアントニオ猪木との違いでもあって。馬場さんは『パフォーマンスでも飯が食えるからいい商売だよな』という方だったけど、そうじゃないだろうと。見ている人の中には、『死ぬか生きるか』と悩んでる人もいる。

そのときにプロレスから元気をもらい、自殺しないで済んだという話もたくさんあるんですよ。そういうメッセージを届けられるような、強いレスラーによる闘いを見せなければいけないと思いますね

新日本プロレスはアントニオ猪木氏が創設したプロレス団体だ。つまり、これが新日本プロレスの原点となる考え方となる。

棚橋弘至選手は中身は変わっていない、包み紙を華やかにしたと語った。

つまり、新日本プロレスに全日本プロレスひいてはWWEのような彩りを与えたということだ。

では、強さとは何か。アントニオ猪木氏の時代から変わらない強さ、激しさを体現している選手は一体誰なのだろうか。

答えは簡単だ。この日の石井智宏選手と鈴木みのる選手である。

勿論、柴田勝頼選手や後藤洋央紀選手、SHO選手などからも同じ匂いを感じる。

ただし、誰を相手にした時でもストロング・スタイル、強さの世界に引き込むのがこの2選手だと思う。

イギリスのベルトを懸けたストロング・スタイル

石井智宏選手の試合は最高だ。そして、鈴木みのる選手の試合も最高だ。

名勝負製造機の2人が対峙した瞬間、平成の新日本プロレスではなく、昭和の新日本プロレスの景色に会場が変化する。

痛み、我慢、逆転。

アントニオ猪木氏が語る力道山プロレスを僕は生で見たことがない。

身体の小さな日本人が身体の大きな外人を倒す。これは分かりやすいアイコンを示した言葉であり、本質ではないと思う。

プロレスの本質は夢を与えること。ファンに一歩踏み出す勇気を伝えることにあると僕は思っている。

相手の技をすかさずに受けるのは、負けない強さを伝えるため。

カウント2.9で肩を上げるのは、ギリギリでも巻き返すことができることを伝えるため。

例え負けたとしても負けを認めないのは、いつか必ず勝つことができることを伝えるためだ。

勝敗を超えたメッセージをプロレスラーは発信している。

勝つことだけが全てではないということを、身体を通じて表現しているのだ。

 

アントニオ猪木氏の掌の上か?

今回のインタビューはいわゆる書籍の宣伝である。

2018年10月29日に発売されたばかりの以下の書籍だ。

猪木流: 「過激なプロレス」の生命力

猪木流: 「過激なプロレス」の生命力

 

『猪木流「過激なプロレス」の生命力』とは上手いタイトルをつけたものだと思った。

過激で強く、激しいプロレス。

75歳になっても、おそらくリングが恋しくて堪らないのだろう。

オレには自分なりのプロレス哲学があって、それを貫き通してきました。でも、最近は見方が変わってきたかもしれない。つい先日、ふと夜にテレビを見ていたらバラエティ番組に天龍(源一郎)が出ていてね。

昔だったらすぐにチャンネルを変えていたけど、このときの天龍を見て『人はそれぞれ必死になって生きているんだよなぁ』と思った。オレの思いとは違っても、みんながリングの上、あるいは離れてからも必死に生きていることに気がついたんです。

テレビやインターネットが普及して、レスラーたちが生きる選択肢も広がってきている。これからも常識を超えたというか、プロレスを違う視点からとらえる人が、新たなスター、さらなる熱量を生むかもしれない。まだまだ、プロレスは劇的に変化する可能性を秘めていると思いますよ

猪木さん、あなたの言っていることは正しい。既に、ファンはプロレスを新しい視点で捉え始め、インターネットを通じたプロレスラーの新しい道も生まれつつある。

ただ、大切なこと本質、つまりストロング・スタイルについては未だ議論が起こっている。

その一つの決着がケニー・オメガ選手VS棚橋弘至選手の決戦なのだ。

ただし、イデオロギー闘争以前の「強さ」という意味では、もう議論する必要はないと思う。きちんと歴史と伝統は引き継がれているためだ。

生え抜き、外敵、移籍。出自に関係なく新日本プロレスに心惹かれたプロレスラーは、「強さ」をきちんと持っている。表現の仕方が個性に応じて違うだけなのだ。

2人がイギリスで愛される理由

鈴木みのる選手の鞭のようにしなるエルボーやチョップ、張り手を受けると、石井智宏選手の動きは止まった。だが、鈴木みのる選手が頭を叩いた瞬間、スイッチが入っことが分かる。

「マグマが噴火するぞ」

攻撃を受けている石井智宏選手の方が前に出る。本来、下がるはずなのに、どうしてこんなことができるんだ。

今回の『ブリテッシュヘビー級選手権試合』を見ていて、何度も叫んでしまった。

そして、同じようにイギリスの人々も石井智宏選手と鈴木みのる選手の一戦に熱中しているらしい。

イギリスといえばEU離脱(ブレグジット)など、国として先行き不透明な情勢が続いている。

個人レベルでは対処できないほど大きな課題。心がずっと不安な時、プロレスファンが求めるのはいつだってストロング・スタイルなのかもしれない。

Catch the Moment。この瞬間にしかあり得ない熱を世界を捕まえたい。

石井智宏選手と鈴木みのる選手がイギリスで愛されている理由もここにあるのだ。

wpb.shueisha.co.jp

追伸

アントニオ猪木さんへ

あなたが作った新日本プロレス。今も、最高に面白いですよ。

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