『ワールドタッグリーグ2018』開幕!鈴木軍対決が素晴らしい理由
新日本プロレス冬の祭典『ワールドタッグリーグ2018』が開幕した。
1リーグ制の導入。事前の記者会見無しと、これまでとは異なるスタートに戸惑うファンも少ないかなかった。だが、実際に神奈川県藤沢市で幕を開けてみれば大きく盛り上がる興行になったと思う。
僕は昼から現場に入り、終わったのが20時。電車に飛び乗り『新日本プロレスワールド』の視聴を開始してみれば目の前に『ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン』のキャップ、パーカー、Tシャツに身を包んだ男性の姿があった。
「トランキーロ」とばかりの満員電車は「スエニョ」の身体にはこたえる。
スマホに目を落とすと試合は丁度メインイベントの『CHAOS』VS『ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン』のメインイベント。車中で観戦しつつ、家路へと着いた。
今、全試合を見たのだが公式戦については後楽園ホール大会を見てから語りたい。ここからは特に印象に残った鈴木軍対決の素晴らしさについて語りたい。
鈴木軍VS鈴木軍
『ワールドタッグリーグ2018』の目玉カードである鈴木軍対決の前哨戦が行われた。
鈴木みのる選手&飯塚高史選手&エル・デスペラード選手VSランス・アーチャー選手&デイビーボーイ・スミスJr.選手&金丸義信選手である。
同門対決で印象的な試合と言えば『ジ・エリート』の一戦だろう。相手を気遣い、危険技はなし。コミカルな試合展開に持ち込むケースも珍しくない。
特に印象的だったのは、G1クライマックス28の日本武道館初日に行われた。ケニー・オメガ選手&ヤング・バックスVS飯伏幸太選手&マーティー・スカル選手&チェーズ・オーウェンズ選手である。
試合時間はなんと5分。僕はこの日会場で観戦していたのだが、正直もう終わり?と思ってしまった試合である。同ユニットの仲間は傷つけたくない。できれば本番まで『ゴールデン☆ラヴァーズ』は肌を触れ合いたくなかったのかもしれない。
ただし、鈴木軍対決は全く別の景色が広がった。
愛のかたまり
愛情の質の違い。これが『ジ・エリート』と『鈴木軍』の違いだ。
前述したG1クライマックス28の前哨戦や『IWGPヘビー急選手権試合3WAYマッチ』。もっと振り返れば『ゴールデン☆ラヴァーズ』VS『ヤング・バックス』。
仲間とは傷つけ合いたくない。ただ、やらざるおえない。その試合には、まるでオペラの悲劇のような雰囲気と悲痛感が漂う。
棚橋弘至選手が指摘したのはこの点にある。「ここは新日本プロレスだ」と。
では、新日本プロレスらしい同門対決とは何か。意外にもそれを実現したのがヤングライオン出身の生え抜き選手がボス以外“いない”鈴木軍だったのだ。
ボスを倒す気概
試合開始早々、KESが仕掛ける。明らかにボスを倒してのし上がる気満々とった表情が伺える。
当日の解説に入っていたミラノコレクションA.T.さんも語っていたが、KESは新日本プロレスで待遇がいいとはお世辞にも言えない。
体格、技のキレ。圧倒的存在感。シングルでもタッグでももっと上位戦線に居ていいはずの2人である。ただ、『ワールドタッグリーグ』以外の興行にエントリーされる機会は稀という状況にまでなってしまった。
ここからひっくり返すためには何必要なのか。
その一つの答えとして自分たちのボスである鈴木みのる選手を倒すことがあったのだと思う。
バチバチ過ぎる前哨戦。『IWGPジュニアタッグ王者』の2人がジョバーに徹する程の激戦となった。
一方で鈴木みのる選手、飯塚高史選手も容赦しない。
噛みつきまくり。反則しまくりである。
最後は鈴木みのる選手が金丸義信選手にクイックで放ったゴッチ式パイルドライバーでフィニッシュ。ボスが部下を可愛がった形となった。
ヒール対ヒールの図式
鈴木軍対決は大きく会場を沸かせた。これこそが新日本プロレスなのだ、とも感じる好勝負だったように思う。
手加減なんてしようものならボスに怒られる。何故ならば、藤沢市秩父宮記念体育館に集まったファンが望むのは本気のプロレスだからだ。
エル・デスペラード選手のスピアーが効かない。飯塚高史選手をブレンバスターの体制で固定する。
ランス・アーチャー選手とエル・デスペラード選手が衝突した際、プロレスラーでなければ、即病院送りだったに違いないほどの迫力が伝わってきた。
KESの2人が持つポテンシャルは計り知れない。それは誰よりも鈴木軍のボス・鈴木みのる選手はよく理解している。
本気のKESと鈴木みのる選手が戦ったらどうなるのか。また、鈴木軍同士の戦いはこれまでの新日本プロレスであまり見ることがなかった光景である。
金丸義信選手VSエル・デスペラード選手だって、もっと見てみたいと思った。
ヒール対ヒールと言えば単純な図式に見えるが、内情はそうではない。
高いテクニックや比類ないパワー。悪の個性がぶつかる時、また一つセルリアンブルーのリングに新しい熱が生まれるのだ。
そして、何よりも伝わってきたのがKESの二人から鈴木みのる選手へのリスペクトだ。
尊敬しているからこそ、超えたい。そんな気概がファイトからも伝わってきたのだ。
事実、リングの上でKESはラフファイトを行なっていない。“聖水”がなくなったのはあまりに残念ではあるが。
後楽園が楽しみで仕方ない
鈴木軍対鈴木軍の試合時間は6分37秒。近年の新日本プロレスだはかなり短い試合になる。ただ、中身は十二分に濃いものとなった。
明日の後楽園大会が今から楽しみで仕方ない。そう感じさせる前哨戦だった。
リングの上では様々な感情がぶつかり合う。
僕が今回学んだのは、尊敬している相手を超えたいという気概は、悲劇よりも尊いものだということだ。
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