石井智宏VSザック・セイバーJr.の試合が盛り上がらないわけがない

2018年の新日本プロレスで好勝負を連発した選手を各ユニットから1人ずつ選出して欲しい。

もしもこのような質問が届いたら間違いなく、この2人がランクインすると思う。

『CHAOS』石井智宏選手と『鈴木軍』ザック・セイバー選手である。

バチバチの戦いとキャッチ・アズ・キャッチ・キャン。

全く異なる個性の2人ではあるが僕は共通点もあると思っている。

石井智宏選手はプロレスラーとしてはジュニア中に入っても上背が高いとは言えない。

ザック・セイバーJr.選手は上背こそあるが、細身であり、ミラノコレクションA.T.さん曰く「太れない体質」だそうだ。

プロレスラーといえば今でこそ変化してきているが、大きくてゴツいというイメージが潜在的にはある。

だが、2人は大きくてゴツいプロレスラーが群雄割拠するリングの中で確かな存在感を示した。

2018年には両者共に新日本プロレスの至宝『IWGPヘビー級ベルト』にも挑戦した。

そんな2人が再びイッテンヨン『バンドリ! ガールズバンドパーティ! presents WRESTLE KINGDOM 13 in 東京ドーム』で『ブリティシュヘビー級ベルト』を懸け激突するのだ。

厳しいトレーニングを積み、高い次元に到達することで、いわゆるハンデなんて関係ない。むしろ長所にできる。

プロレスを追求してきた2人が再び合間見える。

僕はこう思うわけだ。石井智宏選手VSザック・セイバーJr.選手の試合が盛り上がらないわけがない、と。

 

f:id:yukikawano5963:20181223004040p:plain

“名勝負製造機”前夜

2016年の石井智宏選手はファンから多くのブーイングを集めていた。『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』内藤哲也選手が『CHAOS』オカダ・カズチカ選手を破り、『IWGPヘビー級ベルト』を初戴冠。その後、挑戦表明を行ったのが石井智宏選手だったためだ。

「どの口が言ってんだよ!カブロン!」

当時の『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』と言えば、SANADA選手が加入し、4人体制となった頃。まさにスターダムを駆け上がっている時期だった。時限爆弾髙橋ヒロム選手の凱旋帰国はまだ先の話だが、爆発前夜の“制御不能”な男たちはセルリアンブルーのリングで独特な存在感を発揮していた。

その理由としては、まず新日本プロレスに生まれた久しぶりのユニットであること。次に内藤哲也選手にファンの多くが掌を返したという2点があると思っている。

中邑真輔選手、AJスタイルズ選手が去った新日本プロレスにおいて、新しく誕生したユニット。真の魅力を発揮した星屑の前にファンは魅了された。

「オカダの2億円プロジェクトは他のレスラーの気持ちを考えていない。棚橋弘至の言うことが正しい。新日本プロレスは棚橋弘至の言いなり」

トップ選手、団体批判はファンの本心に迫るものであり、ファンの圧倒的な指示を得た。そう、“制御不能のカリスマ”が生まれた瞬間に石井智宏選手は内藤哲也選手に挑戦したという見方もある。

前哨戦、本番と大ブーイングが彼を包んだ。結果もついて来なかった。170センチの元インディーレスラーに新日本プロレスの風が冷たかった時期だったのかもしれない。だが、石井智宏選手は何も変わらなかった。変える必要がなかったのだ。

当時、内藤哲也選手を贔屓目で見ていた僕は気づいていなかった。石井智宏選手のプロレスが非常に面白いことに。

あの日、パレハは「石井!」と叫んだ

2017年のことである。久しぶりに会ったパレハとプロレスや格闘技の話題で盛り上がった。想像格闘技、K-1に興味は移ったが、彼の原点はプロレスにあったという。久しぶりに会場でプロレスという話になり、両国国技館のチケットを取った。

セミファイナルは『東京ドーム挑戦権利書争奪戦』内藤哲也選手VS石井智宏選手。メインイベントはオカダ・カズチカ選手VSEVIL選手だ。

この日、僕はEVIL選手のTシャツを着て観戦した。パレハにも『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』が人気だという話をしていた。会場は圧倒的な大内藤コール。そんな時にパレハは石井智宏選手を大声で応援しはじめた。周囲のファンは全員「内藤!」と叫んでいる中で、だ。

彼に聞いてみた「どうして石井さん応援してたんですか?」

「石井さんはカッコいいよ。あれが僕の好きだったプロレスなんだよ!!!」

長州力と天龍源一郎のDNAを併せ持つ唯一無二の存在。上背にこそ恵まれなかったが、それこそが今の個性になっているとも思う。そして、2018年。石井智宏選手は“名勝負製造機”へとさらなる進化を遂げた。

 

2018年G1クライマックスの石井智宏

新日本プロレスは世界2位の団体であり、名レスラーが数多く名を連ねている超エリート集団だ。全体のレヴェルが高い中で、ファンの目を虜にするのはそう簡単なことであない。勿論、年間の試合数もかなりの数となっている。ペース配分を考えなければ、シリーズを乗り切ることすらできない。

だが、これは素人の考えだった。プロレスラーは超人である。石井智宏選手の『G1クライマックス28』はまさに超人っぷりを発揮した夏となった。

毎試合毎試合がベストバウト。飯伏幸太選手、SANADA選手、後藤洋央紀選手。そして、ケニー・オメガ選手。音楽アーティストのアルバムで「捨て曲なし」とうたっていたことがあったが、まさに全試合が神試合だった。

石井智宏選手はその圧倒的な試合内容からいつしか、“名勝負製造機”と呼ばれるようになった。宿敵であるケニー・オメガ選手は飯伏幸太選手と復縁した日から“ザ・クリーナー”を捨て、“ベストバウトマシン”と化した。その2人が『IWGPヘビー級選手権試合』を戦うことは運命だったのかもしれない。

そして、イッテンヨンでは『ブリティッシュヘビー級王者』として、ザック・セイバーJr.選手を迎え撃つ。

16歳でプロレスデビュー

ザック・セイバーJr.選手の実力は折り紙付きだったが、ここまで休息に存在感を発揮する日が来るとは想像できなかった。彼の潮目が変わったのは間違いなく、2017年の『鈴木軍』入り。そして、2018年の『ニュージャパンカップ』初出場、初優勝だろう。

ザック・セイバーJr.選手のキャリアは凄まじい。16歳でプロレスデビューを飾ると、ドイツ、スペインのリングにも進出している。

そして、プロレスリング・ノアを経て2017年に新日本プロレスへとたどり着いた。

彼のプロレスは関節技を主体に打撃を織り交ぜるスタイルであり、いわゆる派手さはあまりない。だが、『新日本プロレスワールド』や会場で試合を見ていると、一気に気持ちを奪われる。

「何がどうなっているのか分からないけどすごい」

サブミッションを愚直に追求した英国の匠は一気に新日本プロレスでの評価を得た。

衝撃の鈴木軍加入

2016年、柴田勝頼選手は年間15以上のタイトルマッチを行い、イギリス遠征で『ブリティッシュ・ヘビー級ベルト』をザック・セイバーJr.選手から奪取した。2017年2月にはイギリスの至宝を日本の“ザ・レスラー”が持っていることは納得がいかないと、ユニオンジャックの威信を懸けて勝負を挑んだ。

だが、この試合は柴田勝頼選手に軍配が上がった。

プロレスに取り憑かれたかのような強さを持つ柴田勝頼選手。一体どうすれば彼に勝てるのか?リベンジを果たすため来日を果たしたザック・セイバーJr.選手は『鈴木軍』に入ることで『ブリティッシュ・ヘビー級ベルト』を奪還した。

新日本プロレスの旗揚げ記念日に行われたこの一戦の解説を務めたのは、ミラノコレクションA.T.さんである。ジャベ(複合関節技)を強みにしていた彼ならではの解説。自分の想像を超える動きに対する驚愕。解説の凄みも同時に感じた名勝負である。

大英帝国の威信を懸けて宝を取り戻す

2018年4月にザック・セイバーJr.選手が保有していた『ブリティシュヘビー級ベルト』を奪取したのが、石井智宏選手である。

日本人が英国のリングに渡り、至宝を掴み取る。前述した柴田勝頼選手と全く同じシュチュエーションに、ザック・セイバーJr.が燃えない訳がない。

『鈴木軍』入りを果たしたあの試合のように、勝つためにあらゆる手段を取ってくる可能性は十分にある。

例えば、当日対戦カードが組まれていないTAKAみちのく選手や『ワールドタッグリーグ2018』でパートナーを務めたタイチ選手が試合に介入したとしても不思議ではないのだ。

ケトルVOL.46

ケトルVOL.46

  • 作者: ケニー・オメガ,棚橋弘至,獣神サンダー・ライガー,飯伏幸太,内藤哲也,鈴木みのる,永田裕志,KUSHIDA,鷹木信悟,タイチ,オカダ・カズチカ,うえむらのぶこ
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2018/12/15
  • メディア: 大型本
  • この商品を含むブログを見る
 

日本人と英国の“名勝負製造機”

石井智宏選手とザック・セイバーJr.選手のシングルマッチは『新日本プロレスワールド』だけで4試合ある。

初代IWGP USヘビー級王座決定トーナメント、2017年・2018年のG1クライマックス、『ブリティシュヘビー級選手権試合』 だ。

現在の戦績は2勝2敗の五分。ただし、タイトルが懸かった試合では石井智宏選手が勝利し、G1クライマックスではザック・セイバーJr.選手に軍配が上がっている。

これまでの流れという意味であれば、今回のタイトルマッチは石井智宏選手が有利という見方ができる。

ただ、前述したようにザック・セイバーJr.選手には「母国のベルトを取り戻す」という固い決意があるはずだ。

オリエンテーリング・ナパーム・デス。ザック・ドライバー。持てる全てを石井智宏選手にぶつけてくるだろう。

過去4試合。全てがベストバウト級。日本と英国の“名勝負製造機”の戦いに期待したい。

そう、石井智宏VSザック・セイバーJr.の試合が盛り上がらないわけがない。

→人気プロレスブログはここからチェック!

→NJPW FUNのTwitterフォローはこちら