聖帝タイチが北海道の大地に散った時、あべみほさんの目に涙はなかった

2019年2月3日に行われた新日本プロレス『THE NEW BEGINNING in SAPPORO~雪の札幌2連戦~』。

2月2日の観客動員数4,868人に対し、6,089人(満員)という動員人数は新日本プロレスが盤石の体制を築きつつあるという証明だろう。

3日のメインイベントは『IWGPインターコンチネンタル選手権試合』王者・内藤哲也選手VS挑戦者・タイチ選手だ。

当日は『IWGPタッグ』、『IWGPジュニアタッグ』のタイトルマッチを懸けて4選手も激突した。

EVIL選手&SANADA選手VS鈴木みのる選手&ザック・セイバーJr.選手。

鷹木信悟選手&BUSHI選手VS金丸義信選手&エル・デスペラード選手。

激化の一途を辿る『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』と『鈴木軍』の全面対抗戦の行方は2戦が終わった段階で意外な結果となった。

そう、前哨戦では明らかに分があった『鈴木軍』タッグがヘビー・ジュニア共に敗北を喫したのである。

唯一シングルを戦うタイチ選手は不敵に「何かが起きるんだろ?」と言い続けてた。

そして、雪の札幌では何かが起こった。

この日、聖帝タイチ選手は、北海道の大地に散った。この時、あべみほさんの目に涙はなかった。その理由を考えてみたい。

 

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金丸義信という天才

内藤哲也選手VSタイチ選手の『IWGPインターコンチネンタル選手権試合』の前に、この日最も輝いていた金丸義信選手について書きたい。

凄かった、ただただ、凄かった。

最後の前哨戦が終わった後、ヒールマスターはこう宣言していた。

「鷹木信悟選手とBUSHI選手のチャンピオンらしい所を引き出す」

正直に言おう。僕は現在のチャンピオンはベルトを持っているものの、王者感がイマイチないなと思っていた。

『IWGPジュニアタッグ王座』と言えば、Apollo 55やゴールデン☆ラヴァーズ、タイムスプリッターズ、ヤングバックス、フォーエバー・フーリガンズなどの超名タッグチームが巻いてきたベルトである。

最近、上記したチームの試合を見る機会があったのだが、現在の新日本プロレスで対抗できるのは、金丸義信選手&エル・デスペラード選手しかいないのではないか?というほどに強すぎるチームばかりだった。

現在の王者といえば鷹木信悟選手頼りという感じが否めかった。

ほぼヘビー級の鷹木信悟選手がジュニアで戦いパワーで蹴散らす。誤解を恐れずに言うと、この印象しか残っていなかった。

たが、宣言通り金丸義信選手がエル・デズペラード選手が2人の王者らしさを引き出した。

BUSHI選手は髙橋ヒロム選手と組んでいた時代を合わせてもベストバウトだったように思う。

クールでカッコいいBUSHI選手が見せる本気の怒り。ガムシャラさ。普段とのギャップがある分、更に映えて見える。

これまでKUSHIDA選手にしか見せることなかった顔をこの試合で見せたように思う。

そして、この試合を支配していたのは金丸義信選手だ。細かいインサイドワークと美しい技の数々。熨斗紙の受けと旋回式DDTはもはや芸術品のように見えた。

この試合唯一の誤算はBUSHI選手が爆発したことだろう。普段通りの2人なら金丸義信選手とエル・デズペラード選手が勝利していたはずである。

その証拠にエル・デズペラード選手は一度負けただけだとバックステージで発言し、金丸義信選手もTwitterにこう投稿した。

BUSHI選手が鷹木信悟選手に遠慮することなく、今日のような炎を常に灯したファイトを常に繰り出すようになった時、このタッグチームは長期政権を築くのかもしれない。

 

飯塚高史を乱入させたのはタイチか?

『IWGPタッグ選手権試合』も『ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン』のEVIL選手&SANADA選手が勝利を掴んだ。

『鈴木軍』としては全敗は必ず防がなければならない。そして、地元の北海道で負けるわけにはいかない。

あべみほさんに招かれたタイチ選手は決意の入場を魅せた。

タイチ選手とあべみほさんのためだけに、北の大地で降った雪はヘビー級に転向後、約1年でここまで辿り着いた2人を祝福しているようで、寒さ厳しい大地で育った2人を象徴しているようにも見えた。

そして、内藤哲也選手がいつも通りゆっくりと入場をしている時に事件は起こった。

1984年2月3日。藤原喜明さんが長州力選手を襲撃したかのように、飯塚高史選手がラダーで内藤哲也選手を襲撃したのだ。

余談だが、ちょうど僕が生まれて3週間ほどの出来事である。

ニヤニヤしながらその様子を見つめるタイチ選手。会話ができない筈の飯塚高史選手をどう懐柔したのか。

最近、正気を取り戻しつつあるのではないか?という疑問も生まれているだけに、謎は深まるばかりだ。

35年の歴史にピリオド

「何が起きる雪の札幌」

その歴史を北海道生まれの飯塚高史選手が引退前に再現した。僕はこうも思う。

2020年の雪の札幌にはプラレスラー飯塚高史選手の姿はない。

ただ、次回以降の煽りPVとしては一生残るものになったのではないか、と。

もしも正気を取り戻した飯塚高史さんが来年の2連戦の解説席に座っていたらどうだろう。

「あの時、どんな思いで内藤選手に攻撃したんですか?」

「いやいや、それが全然身に覚えがなくて(笑)」

これを聞けるだけで、この襲撃には価値があったと思えるはずだ。

そして、この試合を内藤哲也選手が勝利したことで、長年存在した負の連鎖が断ち切られたようにも思う。

「何かが起きる」のは『ゴールデン☆ラヴァーズ』再結成のようなハッピーな出来事でもいいはずである。

 

スイングする2人

試合終盤、内藤哲也選手はリバースフランケンシュタイナー、ザック・セイバーJr.選手戦で飛び出した新技・バレンティア、そしてデスティーノという3連発でタイチ選手に繰り出しピンフォール勝ちを掴んだ。

襲撃事件やハードコアな机へのパイルドライバーなど、ハードコアな試合展開となったがリングの上ではスタンドマイク以外フェアな戦いだったように思う。

タイチ選手は師匠・川田利明選手を彷彿とさせるストレッチプラムを繰り出すなど、これまで以上の試合を見せた。

試合後、真壁刀義選手とミラノコレクションA.T.さんがタイチ選手を絶賛していた(反則行為以外)。

「力はある選手」

2人もタイチ選手の本気に期待しているのだ。

決意の込めた勇気ある一歩を踏み出すのは、またまだこれからだ。

そして、少し気になったのが、エル・デスペラード選手の試合中にも飛び出していたが、「こういう生き方を選んだ」というフレーズである。

真壁刀義選手は『鈴木軍』について、何かを掴んでいるのか。なぜ、フォローするような言い回しをしたのか。その謎は深まるばかりだ。

あべみほさんの献身

飯塚高史選手が内藤哲也選手を襲撃した後、タイチ選手にブーイングが飛び交った。

最近では「レッツゴー!タイチ」の方が大きくなっていた歓声が「タイチは帰れ!」のみになっている。

だが、あべみほさんは大声で「レッツゴー!タイチ!!!」と叫び続けた。

ディーバとしての献身。この日、『鈴木軍』は反則負け、とタイトル奪取失敗という状況であり、救出に来る可能性も低い。

そんな中、6089人を前に叫び続けたのだ。

あべみほさんのタイチ選手を支える姿はとても美しかった。

帰り際、重要な勝負に負けたタイチ選手を支えるあべみほさんの目に涙はなかった。

そう、彼女が泣くのはタイチ選手が大一番で勝った時にだけ流す、美しすぎる涙だけでいい。

そして、あべみほさんの深愛を全身に受け、聖帝・タイチ選手は次の狙いに向けて動き出す。

2019年1月13日、KUSHIDA選手はこう語っている。

「タイチ、この野郎。ジュニアで結果残せなかった男が、ヘビー級へ行ってベルト獲れるわけないだろ。そう、ヘビー級へ行って寂しかったよ。でも、うれしかったよ。NEVER(無差別級)のベルト獲って、ジュニアとタイトルマッチするんだろ? 約束は守れよ。しっかりチェックしとくから」
出典:新日本プロレス

聖帝が次に進軍する先は、もう決まっているのだ。広い海の向こうで、あの男も活躍を待っている。

鈴木軍全勝というif

最後にこれだけは伝えておきたい。

この大会の後『鈴木軍』のレスラーだけなく、あべみほさんにも妙なリプが飛んでいるのを見た。

これは彼女の有名税を超えている。明らかに悪質な行動である。

その様子を見ていると、『鈴木軍』が全勝して欲しかったとも思う。

「こんな奴らがいるからハポン軍団が弱くなったんだよ」

タイチ選手のドヤ顔を中心に、リングを牛耳る『鈴木軍』の姿も見てみたかった。そして、ファンの空気を変える「何かが起こってもよかった」のではないかと思う次第だ。

あべみほさんが可愛すぎるから、せめてSNSでは絡みたいと間違った方向に「何かを起こしてしまった」だけだと信じたい。

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