石井智宏と永田裕志が紡ぐ、新日本プロレスのアンチエイジングに期待しかない
新日本プロレス、2019年の上半期はあらゆる世代が話題を牽引しているように思う。
ジェイ・ホワイト選手の「IWGPヘビー級ベルト」戴冠。タマ・トンガ選手による“Good Guy”→“Good But Guy”への変貌。試合内外を含めた「IWGPジュニアヘビー級王者」石森太二選手の台頭。
真壁刀義選手、矢野通選手、田口隆祐選手の新生・タグチジャパンによる「NEVER無差別級6人タッグ」。ナマハゲ選手の来日劇。
KUSHIDA選手の退団、飯塚高史選手による「雪の札幌での襲撃事件」と引退試合。
まだスタートして2ヶ月という期間ながら数多くのエピソードが生まれてきた。
中でも今、一番ホットな話題はこれだろう。
2019年のイッテンゴ「NEW YEAR DASH!」からスタートしたこの2人の因縁だ。
石井智宏選手と永田裕志選手である。
現在「CHAOS」と新日本本隊は共闘状態にあり、タッグマッチで同じコーナーに立つのは当たり前になりつつある。
そう、後藤洋央紀選手が2002年組の同期である田口隆祐選手とのタッグマッチに出場した今、新日本本隊と唯一組んでいないのは石井智宏選手のみとなった。
ここから石井智宏選手は一体どんな道を歩んでいくのか。
今ここでこの2人が交わる意味について考えてみたい。
ミスターIWGPが挑む
第三世代として新日本プロレスを長年支え続けてきた永田裕志選手。その実績は凄まじい。
新日本プロレスでは「IWGPヘビー級ベルト」を戴冠。「G1クライマックス」を制し、全日本プロレスでは「世界、アジアタッグベルト」を戴冠し、チャンピオン・カーニバルでも優勝を飾っている。
51歳が目前に迫っているものの、ミスターIWGPはまだまだ衰えを知らない。
そんな永田裕志選手が2005年に最高に気持ちいいシングルマッチを戦った相手が石井智宏選手なのだ。
新日本プロレス自体も元気がなくなってきた時代。永田裕志選手もヒール転向していた時期だろうか。もがき苦しむ中で今だけは今だけはプロレスに集中できている。夢中になっている。
そんな想いを抱かせてくれたのが石井智宏選手だったのだ。
だからこそ思う。
アクシデントがなければイッテンヨン「レッスルキングダム」に出場することすらできないところまで追い詰められた自分を、もう一度アンチエイジングさせる。
もう一度眩いばかりの光を放つための糸口として、石井智宏選手を選んだのではないか、と。
胸を貸す名勝負製造機
石井智宏選手はここ数年の新日本プロレスで最も存在価値を上げた選手と言えるだろう。
言葉でのし上がることも、危険な技で相手を必要以上に追い詰めることもない。
リングの上で魅せるプロレスの質だけで、ファンの支持を得ていった。
天龍源一郎さんと長州力さんかの寵愛を受けた唯一のプロレスラー。
その魅力は攻めと受け、どちらでも魅せることができる点にある。
チョップを受けてもビクともしない。痛がるリアクションを取ることで、相手を欺くなどの作戦は取らない。
「そんなもん全然きかねぇぞ」
という姿勢でドンドン前に出る。そんな彼の姿勢は世代を超えて見る人を魅了し続けてきた。
何度でも書くが2018年の「G1クライマックス」では全試合でベストバウトを実現していた。是非、時間を作ってあれば見直したいところである。
彼こそ真のベストバウトマシン
石井智宏選手の魅力はもう一つある。シングルマッチを通じて自分と相手選手、双方の価値を上げることができる点である。
どちらが勝利しても相手の格を下げることなく、お互いの格を高める。
無骨に見えてとことん器用に見えるのは決してセンスがいいからだけではない。徹底した練習に裏付けされる引き出しの多さが石井智宏選手の魅力だ。
だからこそ、どんな相手と戦ってもポテンシャルを最大限に引き出すことができるし、どんな相手ともベストバウトが実現できる。
頭から落とす試合だけじゃなくて、どんな試合でも対応できる。そう、魂と魂のぶつかり合いも得意な土俵なのだ。
今回、石井智宏選手は永田裕志選手にやたらと突っかかる。近年稀に見るほどに向かっていく。
飯塚高史選手の引退記念興行でも、YOSHI-HASHI選手の制止を振り切って永田裕志選手の前に立った。
その理由はこれしかないのである。
本気を見せてみろ
永田裕志選手を含む第三世代は一時期と比較して、明らかに試合数が減少している。
練習やスポーツジム、テレビ、アマチュアレスリングのコーチな。できること、やるべきこと、求められることは無制限にあるのだが、その本質にあるのはプロレスラーという生き方である。
セルリアンブルーのリングで爆発したい。昔のようにベルトを巻きたい。
そんな気持ちが石井智宏選手との因縁へと繋がったのではないだろうか。永田裕志選手は試合後にこう語っている。
「俺が老ているかどうか、知らしめてやりますよ」
そして、石井智宏選手はこう語っている。
「まだまだやり足りねぇ。次は沖縄か、おい!待っとけ!おら!」
珍しくないだろうか。石井智宏選手が試合後のコメントで自分から向かっていくような発言を出しているのだ。
内藤哲也選手に対しても、「散々テメェがやりてぇって言ったんだろうが!」という姿勢を崩さなかったのが、石井智宏選手だったはずだ。
なぜ、2人は引き寄せ合うのか。
活性化させる
新日本プロレスは2019年に入り、いいニュース以外にもたくさんのエピソードがあった。
僕もここでは言及しないが、色々な思いが溢れている。
そんなファンが求めるもの、見たい景色は何か。
そう考えてみると、バチバチにぶつかり合うシンプルな試合が見たいと僕は思った。
せっかくなら最近は中々見られないような2人の試合がいい。
数人の選手を頭に浮かべてみると、その中にやっぱり永田裕志選手と石井智宏選手が浮かんだ。
アンチエイジング。すなわち抗老化医学。老化を防ぐための行為を指す。
「NEW ERAを叫ぶ前に、まだまだ元気な世代のアンチエイジングはどうだ?」
旗揚げ記念日かそれともMSGか。いや、なんだったら2大会ともにスペシャルシングルマッチを開催してもいいだろう。
それほどに見応えのある試合が2人ならばできる。平成の時代を支え続けてきた永田裕志選手ならば尚更だ。
そんな気持ちで僕は今、新幹線で揺られている。
北に向かう列車の中から、石井智宏選手と永田裕志選手へ尊敬の念を込めて。