金丸義信の2連勝に“崇高なる大泥棒”の面影を見た

金丸義信の2連勝に“崇高なる大泥棒”の面影を見た。

「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア26」の後楽園3連戦で2連勝を挙げている「鈴木軍」の“ヒールマスター”金丸義信選手。

一戦目は今回のリーグ戦で圧倒的な支持を得て主人公感のあるSHO選手を4分1秒リングアウト勝ちで撃破。

2戦目は前「IWGPジュニアヘビー級王者」として田口隆祐選手、獣神サンダー・ライガー選手から勝利を掴み、新日本プロレスジュニアをリボーンさせる存在として、注目を集めた石森太二選手を相手に、3分51秒で勝利を掴んだ。

明らかに短い試合時間。相手に全くペースを掴ませないままに試合を終わらせるプロレス力。

そう、僕は金丸義信選手に矢野通選手の試合を重ねていた。

プロレスの試合には勝った負けたではない要素がある。むしろ、その何かがなければファンからの指示を得ることはできない。

そのため、短時間決戦は喜ばれる展開になりにくいのである。

ただし、一部の例外がある。矢野通選手の試合は短時間でも見応えが十分にある。真夏の最強戦士決定戦である「G1クライマックス」で何度も1分以内の試合があったが、何度も見たくなるような頭脳戦でケリを付けているのだ。

飯伏幸太選手や柴田勝頼選手など新日本プロレスの猛者たちですら矢野通選手の前に掛かれば一瞬で敗れてしまう。

そんなアンタッチャブルな魅力が矢野通選手の試合にはあるのだ。

この比類ない領域に金丸義信選手が一歩踏み込んできた。今回は2試合を振り返りつつ、金丸義信選手の魅力について改めて考えてみたい。

f:id:yukikawano5963:20190524103104p:plain

劇的すぎるリングアウト

これまでにも棚橋弘至選手がバットラック・ファレ選手にリングアウト勝ちを収めたり、SANADA選手が矢野通選手に場外でパラダイスロックを仕掛けたりなど、時折リングアウト勝ちという結果はあった。

だが、金丸義信選手のリングアウト勝ちはあまりにも合理的であまりにも狡猾な勝ち方だったように思う。

ヒゲドライバーさんが作曲した入場曲に合わせて、会場が一体になる。闘志をみなぎらせてリングへと向かうSHO選手。その耳には怪我の跡があった。

リングインとほぼ同時にウィークポイントを狙う金丸義信選手。ほぼ何もさせずに後楽園の南側席へとSHO選手を連れて行き、ブレンバスターを見舞った。

立ち上がれないSHO選手。場外カウントが迫る中でも、19でリングインするだろう。そう思った矢先に金丸義信選手が仕掛ける。

ヤングライオン辻陽太選手をSHO選手にぶつけたのだ。

結果20カウントが入り、リングアウト負けが確定した。

金丸義信選手のコメントは以下だ。

おい、見たか? おい、こんな闘い方もあるんだよ。会見の時言ってやったろ? スパイスしてやるって。おい、見たか? あの小僧もまだまだだな。もっと頭使え。頭使って動け!
出典:新日本プロレス

まるで闘牛士のようにパワーファイターをいなし、ペースを掴ませることなく、勝利を奪う。

“ヒールマスター”の新しい一面が出た、この時は1試合限定だと思っていた。

 

リングにあるものは全て使う

石森太二選手は「バレットクラブ」に加入したものの、時折ダーティーファイトを行うだけで、反則行為を一切働かない。ある意味、人はリボーンしても本質は変わらないことを体現しているとも言える存在だ。

そんな彼が金丸義信選手の暴挙に腹を立て、報復行為に走ろうとした。金丸義信選手と同様に“スポーツドリンク”を口に含もうとした瞬間、レッドシューズ海野レフリーからストップがかかる。

「何で俺はダメなんだよ!?」

そんな一瞬の隙を金丸義信選手は突いた。口に含んだままだった“スポーツドリンク”を石森太二選手へ浴びせ、首固めへ。

虚を突いた展開にあっさりと3カウントが入る。

石森太二選手は「マジかよ!?何でだよ!?」と激昂すると結果は覆ることはなかった。

この試合を見て分かることはヒールマスターとは全てを伏線にしていたということだ。

前日、SHO選手をリングアウト勝ちにした結果を踏襲し、リングへ戻る石森太二選手に椅子を投げつけた。

そして、レフリーのブラインドをつきつつ自分はセーフティーゾーンで反則行為を働き続けたのだ。

現在のプロレス(おそらく変わることはないだろうが)にはビデオ判定が存在しない。

レフリーが見ていなければ、何も起きていないことと同意義なのである。

金丸義信選手は日頃からここ(腕)とここ(頭)が違うと語っている。

真っ直ぐに来る相手をさらっと交わして、あっさり勝つ。これがヒールマスターによる仕事の流儀なのだ。

 

 

やっぱり受け身がすごい

ここまで見事すぎる勝利について書いてきたが、最後にはやっぱり「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア26」で魅せる金丸義信選手の受け身について語りたい。

金丸義信選手の試合がなぜいつも盛り上がり、面白いのか。それは金丸義信選手の受け身の素晴らしさが牽引しているように思うだ。

相手の技をダイナミックに受ける。「新日本プロレスワールド」のTwitterで配信されている彼の受け身を見てほしい。

時間が許せば何時間でも見ていられるほど見事な受け身なのだ。

観客はこんなにすごい技なのか!と盛り上がる。対戦相手もこれは効いたな?と思う。

ただし、的確な受け身でダメージを分散させつつ、相手を観客を油断させているケースもあるのだ。

派手に喰らったフリをして、ダメージは最小に抑える。心理的優位に立つ高等テクニックが金丸義信選手ならば実現できるのだ。

これは矢野通選手にも通じる点がある。あれほどリングを支配し、自由に振る舞う矢野通選手の受け身は基本に忠実で美しいのだ。

また、短期決戦もそう。余程プロレスが上手くなければ、見事!と膝を叩ける内容でなければ、短期決戦をファンは許さない。

そう、金丸義信選手の2試合は文句無しの大勝利なのだ。

いよいよ、「ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア」後楽園ホール決戦は最終日を迎える。

3日目の相手はマーティー・スカル選手だ。ヒールマスターVS悪党。一体どんな仕掛けがあるのか。

今日も金丸義信選手の試合が楽しみで仕方ない。

→人気プロレスブログはここからチェック!

→NJPW FUNのTwitterフォローはこちら