純血と純潔。EVILがNYでダークネスワールドに染め上げたワケ

純血と純潔。EVILがNYで作ったダークネスワールドは闇の中にありながらもピカピカに輝いて見えた。

新日本プロレスは真夏の最強戦士を決めた後、イギリス、アメリカで興行を行っている。

日本のファンに魅せた熱狂の流れをそのままにはじまった「FIGHTING SPIRIT UNLEASHED」はアメリカの各会場がソールドアウトになるほどの盛り上がりを魅せている。

今回は前回書ききれなかったメインイベントについて書いていこう。

主役はタイトル通り「ロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン」“キング・オブ・ダークネス”EVIL選手である。

2019年はこれまで以上にパワフルかつ、感情の見えるプロレスに傾倒している印象のあるEVIL選手。

彼の中に芽生えている確かな新日本プロレス生え抜きの意地と誇りがそうさせるのか。時折、生え抜きに関するコメントも飛び出すようになったのは、これまでにない変化だと言えるだろう。

有言実行。この日はタッグパートナーに恋女房SANADA選手を迎え、メインイベントでオカダ・カズチカ選手、飯伏幸太選手と激突した。

勿論、これは単なるスペシャルタッグではない。

「ワールドタッグリーグ」を2連覇し、「IWGPタッグ王者」にもなった「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」の最強タッグと「IWGPヘビー級王者」と「G1クライマックス29」の覇者が相対するのである。

単純なシングルマッチの実力と実績、勢いで言えば、後者に軍配が上がるはず。ただし、タッグマッチとはそう甘いものではないと、改めて示す必要があったのだ。

NYをダークネスに染め上げ、テクニカルトラブルさえも闇を作るために必要なことだったと、ユーモアも忘れない闇の王。今日はそんな彼に迫ってみたい。

この日のEVIL選手は自分が3カウントを取る理由があったのだ!?

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レインメーカー爆発

この日のメインイベントで最後に入場を果たしたのが“レインメーカー”オカダ・カズチカ選手である。

大歓声のシャワーを浴びながらリングを目指す完全無欠の「IWGPヘビー級王者」。圧倒的な華の前にアメリカの仲間たちは酔いしれているようだ。

アメリカでのオカダ・カズチカ選手人気は凄まじい。2019年のイッテンヨンでお披露目となった腰に巻くコスチュームを取るパフォーマンスだけで、大歓声が巻き起こる。

そう、これが現代の新日本プロレスの象徴なのである。

カッコよくて、華やかでオシャレで。それでいて誰よりも強い。オカダ・カズチカ選手の人気は国内、国外問わず大ブレイクしている。

 

新日本プロレスの生え抜き

EVIL選手は、新日本プロレスのヤングライオン出身。つまり、EVIL選手は新日本プロレスの生え抜きにあたる。白と青、銀と金のコスチュームに身を包んだ“今年から所属”となった飯伏幸太選手に対して、熱いライバル心を燃やしている。

いや、EVIL選手にとってこの日のリングに立っていた自分以外のレスラーは皆、ライバルだった。

オカダ・カズチカ選手はヤングライオンとして新日本プロレスの血を入れたものの、そもそもの生まれは「闘龍門」である。龍と獅子のハイブリッドがオカダ・カズチカ選手の強さでたる。

飯伏幸太選手はDDT。同じ「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」、タッグパートナーのSANADA選手は全日本プロレス。つまり、新日本プロレスのメインイベントを飾っている4人の中で純血の新日本プロレス出身者はEVIL選手のみになる。

新日本プロレスが掲げている海外戦略。そこで必要なのは彼の日のストロングスタイルなのではないか。

器用な天才タイプが日本国内からも“黒船”として来航したとしても、生え抜きには生え抜きの意地がある。

そんな生き様を魅せつけることこそが、今のEVIL選手のテーマなのではないだろうか。

 

ストロングスタイル・エヴォルヴ

相方のSANADA選手が新日本プロレスの春に王手を掛けて以来、牛歩並みのスピードではあるもののタッグチーム内での差がついていったのは事実としてある。

例えば、“レインメーカー”を“EVIL”で切り返し、EVIL選手が「G1クライマックス27」で勝利を掴んだあの日だ。当時はEVIL、SANADAだった。

SANADA選手がプレイクしたのは2018のイッテンゴでオカダ・カズチカ選手に挑戦表明を果たして以降(SANADAが喋った!日だ)だろう。

あの好勝負を経て、「G1クライマックス28」に突入し、天才のセンスを爆発させた。

2018年にはSANADA、EVILの序列が当たり前になってきた。

一方で、EVIL選手はクリス・ジェリコ選手とのタイトルマッチを経験するなど、自身の価値を上げていったが、ザック・セイバーJr.選手の前に辛酸を舐めることも珍しくなかった。

ただし、プレミアムを超え、闇の奥底で生きることを決めた男はただでは起き上がらない。

石井智宏選手との試合を通じて、自分こそがストロングスタイルの継承者であると自己主張するようになった。ここから出た言葉が「ストロングスタイルスティルアライブ」だったように思う。

 

旅立ちの日。自分が3カウントを取ることに意味があった

新日本プロレスをダークネスに染め上げると豪語する今のEVIL選手はこんなことを気にしていないかもしれない。

ただ、こういったエピソードがあったことだけは伝えておきたい。

2013年10月14日。髙橋広夢選手をイギリスへ見送った後、渡辺貴章選手の壮行試合が行われた。天山広吉選手の復帰戦も兼ねたヤングライオンとしての大一番。

相手は「鈴木軍」の最強タッグであるKES(ランス・アーチャー選手&デイビーボーイスミスJr.選手)

キラーボムからの体固め。旅立ちの日に勝利を掴むことはできなかった。

これは、渡辺貴章選手がダークネスワールドに足を踏み入れる以前の話である。その後SANADA選手と共にKESと抗争を繰り広げ勝利を掴んだ。EVIL選手として強くなった。

運命の壮行試合でレフリーを務めたのはこの日がアメリカでのレフリー生活を引退するタイガー服部さんだったのである。

「闇の王」に湿っぽい言葉は似合わない。だが、この日のニューヨークをダークネスに染め上げなくてはならない理由は確かに存在していたのだ。

EVIL「今日、ニューヨークをダークネスに染め上げてやったぜ。飯伏が持っている権利証、この俺が奪い取って、東京ドームを、そして新日本をダークネスに染め上げてやるからな、よく覚えとけ。This is EVIL.Everything is EVIL.すべては……EVILだ!」

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