石井智宏と飯伏幸太の一戦と『半沢直樹』。
石井智宏と飯伏幸太と『半沢直樹』について書きたい。
2020年10月26日は新日本プロレスを観て、テレビドラマ『半沢直樹』を見た方も多かったのではないだろうか。
北海道での戦いを終え、新日本プロレスは一気に西へと移動。新日本プロレスに何かが起こる場所。兵庫県は神戸ワールド記念ホールなのだ。
近年では高橋裕二郎選手がバレッタ選手とシングルマッチを戦ったり、ジェイ・ホワイト選手がプロレス界を驚倒する大事件を起こした場所でもある(外道選手の裏切り&YOSHI-HASHI選手も本来であれば裏切る予定だった)。
そんな神戸で行われた『G1クライマックス30』のAブロック公式戦だが、これがまた素晴らしい試合の連発だった。
「テメェ、やる気あんのか?だから内藤とこんな差をつけられたんだろ?」と高橋裕二郎選手が一番言われたくないであろう挑発を敢えて行ったタイチ選手(試合後のバックステージねではキチンと恩返しのコメントを残していただけに無意味な挑発ではなかったようだ)。
鈴木みのる選手とジェフ・コブ選手の試合もそう。プロレス王はアマチュアレスリングのオリンピアに対して、グラウンドでの勝負を仕掛けた。
そして、休憩を挟んだ公式戦の3試合目。飯伏幸太選手と石井智宏選手の試合がこれまたとんでもない展開になった。
倍返しだ!
まず、なぜ飯伏幸太選手は石井智宏選手に勝利することができたのだろうか。
その秘密は『G1クライマックス30』開幕直前インタビューにあったので新日本プロレス公式スマホ会員の方は改めてチェックいただきたい。
飯伏幸太選手と石井智宏選手はとにかく「やられたらやり返す」展開が続いた。
石井智宏選手が逆水平チョップを放てば、飯伏幸太選手はミドルキックで返す。
座りながら平手を見舞えば2発で返す。
飯伏幸太選手がカミゴェのモーションに入れば、何度も頭突きでカウンターを合わせた。
とにかく1発足りたりとも返さずにはいられない。
そんなバチバチのしばきあいは15分も続いた。見応えがありすぎた試合。この試合は現代型プロレスの最高峰と言っても過言ではないと僕は思っている。
間を詰めた試合(演出)
ここからは少し『半沢直樹』の話を。
この話はいつか書こうと思っていたのだが、今回の『半沢直樹』を見てある種の違和感を覚えた方は居なかっただろうか。
これは僕の感想だが、とにかく今回の『半沢直樹』は面白かった。いや、面白すぎた。
毎週、毎週完璧すぎる。あまりにも見応えがありすぎて、「もう終わっちゃった」と思うことだって珍しくなかった。
『半沢直樹』が圧倒的だったのは、間を魅せられる役者を使っているにも関わらず、そうした間を全て無くした台本と演出、編集にあると僕は思っている。
テレビ放送されているシーンに一切の無駄がない(無駄=必要ないものではない)。
本編に関係のない(薄い)サイドストーリーはほぼ展開されない。あくまでも『半沢直樹』に直接関わってくる伏線のみである。
一般的なドラマであれば及川光博さんが好演した渡真利忍に関するエピソード(奥さん登場など)などを挟んでもいいはずである。
ただ、『半沢直樹』はそれをしない。
圧倒的な演技力を持つ役者が画面にドアップで映し出され、見栄を切る。それも連発で。
誰が見ても分かりやすく、誰が見ても痛快で誰が見ても引き込まれる。
名シーンだけを摘んだかのような編集。これが今の時代に1時間テレビの前に視聴者を釘付けにする戦略だったのかもしれない。
現代プロレス
以前、新日本プロレスでは「アスリートプロレス」という言葉が横行していた。
高い身体能力を武器にとにかくド派手な技を連発する。初心者にも分かりやすく、見栄えも完璧なプロレスだ。
僕はこのアスリートプロレスについては、いくつかの課題を感じていた。
まず、確実に選手生命を削る試合になるということ。次に、戦略性が薄くなり、身体能力が上回るものが強いように見えてしまうことだ。
僕はアスリートプロレスとデスマッチはある意味で近いところに存在すると考えている。
大仁田厚選手はデスマッチにヒューマニズムを持ち込んだ。
そして、アスリートプロレスを新日本プロレスに持ち込んだ男はヒューマニズムに加えて、ストーリーテーリングに注力していた。
東京ドームという大舞台でアスリートプロレスで伝説を作り、恋人と再会し...というような具合にだ。
その進撃に棚橋弘至選手が待ったをかけたのは周知の事実。棚橋弘至選手が大切にした歴史と伝統のあるプロレスは今、飯伏幸太選手へと引き継がれようとしている。
アスリートプロレスと歴史と伝統のある新日本プロレスのハイブリッド。激しくスピーディーだが、伝統を引き継いでいく。これこそが飯伏幸太選手が目指す“神”のプロレスなのではないかと僕は思う。
★第4試合
— 新日本プロレスリング株式会社 (@njpw1972) 2020年9月27日
「G1 CLIMAX 30」Aブロック公式戦
飯伏幸太vs石井智宏
“やられたらやり返す!”の好試合! 飯伏の大技が炸裂!
※9.27『G1 CLIMAX 30』神戸大会を新日本プロレスのスマホサイトで独占詳報中!https://t.co/KorOyxGbAo#njpw #G1CLIMAX30 pic.twitter.com/r8xPsin0C3
美学がある
最後に。なぜ、人々はこんなにも半沢直樹という男に魅了されたのか。
半沢直樹には自分の中で大切にしている確固たる信念がある。どんな困難が訪れようとも自分自身に誓ったことだけは裏切らない。
新日本プロレスに参戦しているレスラーたちもそうだ。それぞれの信念を懸けてリングに上がっている。
だからこそ、僕たちはこんなにもプロレスに魅了され続けているのだろう。
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