なぜ、YOSHI-HASHIは後藤洋央紀との握手を拒んだのか

なぜ、YOSHI-HASHIは後藤洋央紀との握手を拒んだのか。

人は誰かを超えたいと強く思った時に一皮剥けるものだ。

「物事が変わるのは一瞬」

そんな言葉を何年も言い続けるも全く変わらなかったYOSHI-HASHI選手だが、今は長いトンネルを抜けたかのよう。

現在、彼の気持ちの入ったファイトは多くのファンを熱くさせている。

2021年10月4日。新日本プロレスの後楽園ホール大会「G1クライマックス31」のセミファイナルは“CHAOS”の同門対決でありタッグパートナーでもある2人が激突。

“NEVER無差別級6人タッグ王者”の後藤洋央紀選手とYOSHI-HASHI選手がシングルで約1年ぶりに対峙する形となった。

結論から書くと16分57秒で後藤洋央紀選手の勝利。

YOSHI-HASHI選手は序盤から後藤洋央紀選手の動きを見切り、徹底的に攻めまくるも、最後の最後で勝ちきれない結果となってしまった。

この日、明らかに後藤洋央紀選手は受けに回っていた。

ある種、YOSHI-HASHI選手の力量を改めて見定めているようで、パートナーとして彼の魅力を引き出そうとしているようにも映る。

敢えてこういう表現を使うのであれば、「余裕がある」ようにも見えた。

ただ、その流れが変わったのはYOSHI-HASHI選手が昇天・改を繰り出すまで。

ここから先は余裕が消え、一気に勝負を決めにいった印象だ。

GTWや本家の昇天・改を見舞い、最後はGTRでフィニッシュ。

パートナーを超えたいと願うYOSHI-HASHI選手だったが、やはり“後藤洋央紀”の壁は厚かった。

そう。後藤洋央紀選手は強い。

G1クライマックス“ガイジン”初優勝を飾ったケニー・オメガ選手だが、彼の魅力が爆発した優勝決定戦で対角線に立っていたのは後藤洋央紀選手である。

無骨そうに見えて器用。オリジナル技のデパートでありながら、相手レスラーを光らせることが非常に上手いのが後藤洋央紀選手なのだ。

そんな彼を本当の意味で限界まで追い詰めることができなかった。

悔しそうにリングを去るYOSHI-HASHI選手から異常なほどの悔しさが溢れていたのはそのためだろう。

「まだまだ俺は力不足だ」と。

 

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男の戦い

「ルパン三世のテーマ」にはこんな歌詞がある。

ジェンダー平等をうたう時代にはマッチしない表現かもしれない。

ただ、言葉の裏も考える気持ちを持って見てほしい。

「男には自分の世界がある」

女性にもあるよ、とそんな当たり前の話は置いておいて。

YOSHI-HASHI選手には自分の世界があった。パートナーである後藤洋央紀選手と握手をするのであれば、それは勝った時だ、と。

いい悪いの話ではない。自分の世界の話だ。

後藤洋央紀選手はオカダ・カズチカ選手とかなり久しぶりのシングルマッチを戦い破れた後、握手を受け入れた。

中邑真輔選手が“CHAOS”から離れた後、シングル、タッグ共にユニットを支えてきたのは後藤洋央紀選手だ。

柴田勝頼選手へ「今が一番楽しい!」と言い切ってから4年が過ぎてなお、充実した日々を送っているのは間違いない。

後藤洋央紀選手の世界では今のオカダ・カズチカ選手とは“まだ握手ができる”状態にある。

そういった余裕があるとも言えるし、そういった性格だと言える。

一方でYOSHI-HASHI選手は敢えてリーグ戦の最中は距離を置く。それは相手に本気で勝ちたいという必死な気持ちの現れた。

“レインメーカー”に戻って以降は常に冷静さを保ちつつ、憎まれ口もはばらかないオカダ・カズチカ選手。

それぞれの個性がある。それぞれの世界がある。だから、プロレスは楽しいのだ。

ちなみに僕は「ルパン三世のテーマ」だとジャジーな雰囲気あふれる“89”が一番好きだ。

 

馴れ合いでは強くなれない

話を戻そう。試合後、握手を求めた後藤洋央紀選手に対して、それを拒否するかのようにリングから離れたYOSHI-HASHI選手。

仲違いをした空気は全くなかったものの、なぜ握手を拒んだのか。

確実に何か理由があると思っていたら、バックステージでその胸中を語っていた。

YOSHI-HASHI「(※コメントスペースに座り込み)後藤さん。やっぱり、あなたの本来の荒々しさと強さはね、とてつもなかったよ。ただ、俺が最後、リング上でなぜ握手しなかったのか!? それは、この俺とあなたのシングルマッチに関しては、次、俺があなたを越えたときまで(握手を)待ってようと思ったから」

「俺も、それはね、悔しい。すごく悔しかった、今日、ホントに。同じコーナーでいつも組んでて、すごく信頼関係があると思うし、リスペクトしてるよ。でもね、お互いがタッグとしてこれからやっていく上で、こんなトコで馴れ合ったら、これ以上、上に絶対いけないと思う。俺と後藤さんは同じ立場。もちろん、タッグのときは助け合わないといけないけど、それでも闘うときはお互い意識して、どっちかは『絶対越えてやる』って気持ちがないと、絶対(タッグチームが)衰退すると思う」

「だから今日は、あなたとは、ホントは握手したかったけどしなかった。次、あなたとシングル(戦)して、俺があなたを越えたとき、そのときは思いっきり…あなたが拒んでも俺は思いっきり握手しにいくから。それまで、とりあえず『G1』(でのシングル戦)終わったけど、次、たぶん『(WORLD)TAG LEAGUE』、一緒に組むと思う。今日の俺とあなたの感情を、対戦相手にぶつけていこうと、俺は思いました」

出典:新日本プロレス

 

G1クライマックスとは何か

僕から見た「G1クライマックス」は年に一度行われるヘビー級の祭典だった。

夏あるいは秋の最強戦士を決めるリーグ戦。それくらいの認識でしかなかったが、レスラーからすると違った意味合いがある。

もっと、シビアでシリアス。

ヘビー級のレスラーにとって特別な舞台だったのだ。

そのことを改めて考えた時に、後楽園ホールでYOSHI-HASHI選手をくだしたオカダ・カズチカ選手の言葉が浮かんできた。

ただね、まぁ『G1』……『G1』なんですよ。負けて、温かい拍手はボクはいらないんじゃないかと。あれでね、『あーよかった、いい試合できた』と、そんな失礼なこと、YOSHI-HASHIさんにやるのは、ボクはどうかと思うし。叱ってやってね、まだまだ上でやんなきゃダメなんだと、そういう風に思う舞台が、ボクは『G1』だと思うんで。ま、今日のあの温かい拍手、YOSHI-HASHIさんは悔しかったんじゃないかと思うんで、ホントに、公式戦だけじゃなくてですね、まだまだ、CHAOSなんでね、(普段は)やる機会がないですけど、やっていけたらと思います。

出典:新日本プロレス

オカダ・カズチカ選手はファンへ提言を放っていた。

もっと厳しい目で試合を選手を見てほしい、と。

僕自身、出されたものを楽しむスタンスでここ数年プロレスと向き合ってきた。

ただ、そうじゃない見方も大切なのではないかと思った。

例えば、海外のサッカーチームのサポーターは不甲斐ない選手にブーイングを飛ばしている。

本気で応援し、本気で怒り、本気で喜ぶ。

感情をとことんまで揺さぶることがプロレスを本気で楽しむ上で必要なのではないか、と。

そういった姿勢をYOSHI-HASHI選手から学ばされた。

今大会、後藤洋央紀選手もYOSHI-HASHI選手も既に崖っぷちだ。

ただ、崖っぷちだからこそ見せられるモノがある。

「G1クライマックス31」も残り半分。まだまだ盛り上がる日々が続きそうだ。

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