クリス・ジェリコ選手の手によって、IWGPインターコンチネンタルベルトは生まれ変わる
2018年現在、新日本プロレスには4本のシングルベルトが存在している。
- IWGPヘビー級ベルト
- IWGPインターコンチネンタルベルト
- IWGP US ヘビー級ベルト
- NEVER無差別級ベルト
ベルトを巡っての好勝負が繰り返されるセルリアンブルーのリング。当然、“ベルトの価値”も試合を彩る重要な要素である。
“ベルトを価値”を上げられるのは戴冠しているレスラーのみ。勝つだけでは不十分。挑戦者の個性を引き出し、好勝負を行うのがチャンピオンとして相応しい戦い方だ。
事実、IWGPヘビー級チャンピオンとして、V12を達成したオカダ・カズチカ選手は「受け」を主軸に置いた試合をしていたように思う。
自身とベルトの価値を高め、新しい景色をお客様に魅せる。これがチャンピオンの宿命なのだ。
そんな中、不可思議な道を歩んでいるベルトがある。
現在、クリス・ジェリコ選手が保有するIWGPインターコンチネンタルベルトだ。
誕生の経緯とキング・オブ・ストロング・スタイル
2011年1月、新日本プロレスがアメリカで自主興行を行ったことをキッカケに誕生したのが、IWGPインターコンチネンタルベルトだ。
初のチャンピオンはトーナメントで決定した。矢野通選手を破ったMVP選手が最初のチャンピオンとなった。
ちなみにレインメーカーになる以前のオカダ・カズチカ選手も、同トーナメントに参加していた。
IWGPインターコンチネンタルベルトの運命が変わったのは、2012年7月だろう。
中邑真輔選手が後藤洋央紀選手を倒し、第4代王者となった試合後、事件は起こった。
新王者は新設されて1年ほどのベルトに対し「10円玉」と揶揄し、デザインの変更を言い放ったのだ。
NWFヘビー級ベルトを封印した現在のロックスターは、IWGPよりも上の価値を目指す“白いベルト”を生み出すために、再生を要望した。この時、中邑真輔選手がベルト自体を封印していれば様々ドラマは生まれなかっただろう。
中邑真輔選手が新日本プロレスを退団した2016年まで、“中邑色”に染まったベルトはIWGPヘビー級ベルトとは異なる輝きを放ち続けた。
桜庭和志選手や飯伏幸太選手、AJスタイルズ選手。数多くの選手が白いベルトの価値を認め、ベルト戦線に挑んでいった。
“制御不能なカリスマ”による破壊行為
中邑真輔選手の退団後、“中邑色”に染まった白いベルトが最も注目を集めたのは、2017年の内藤哲也選手が起こした破壊行為だろう。
「俺はこんなベルト欲しいなんて一言も言っていない」
こう切り捨てた内藤哲也選手は、ベルトを踏み、投げるだけでなく、最終的には破壊行為にまで走った。
常軌を逸した行為。会場人気NO.1の男に対して、再びブーイングが巻き起こった時期だった。
この背景にはIWGP USヘビー級ベルトの新設が存在している。
内藤哲也選手は、IWGP USヘビー級ベルトの誕生が理解できなかった。そもそも海外向けに作られた白いベルトが存在しているにも関わらず、何故新しいベルトが誕生させる意味があるのか。理解と納得ができない故の行動だったという。
確かに妙な話だ。海外向けに作ったIWGPインターコンチネンタルベルトの権威はどこにあるのか。
誰にも正解が見えない暗闇に明かりを灯したのが、“100年に1人の逸材”棚橋弘至選手だった。
“ガイジン”レスラーならではの喜び
クリス・ジェリコ選手はインタビューで、IWGPインターコンチネンタルベルトへの愛着を語った。
“ガイジン”レスラーがIWGPのベルトを戴冠することがいかに難しいのか。その険しい道を知っているからこそ、IWGPインターコンチネンタルベルト用にファーストクラスのチケットを用意するというリップサービスも飛び出したのだと思う。
クリス・ジェリコ選手が来日してから、26年の月日が流れた。60回以上の来日を経て手に入れた新日本プロレスの至宝は、彼にとって大きな価値があったに違いない。
WWE・インターコンチネンタル王座を含めるとクリス・ジェリコ選手にとって10度目の戴冠。Y2Jは一体どんなチャンピオンロードを魅せてくれるのか。
どうなる?白いベルト
クリス・ジェリコ選手は対戦したみたい相手として、オカダ・カズチカ選手、棚橋弘至選手、飯伏幸太選手、そしてEVIL選手の名を挙げた。
ケニー・オメガ選手とのリベンジマッチを除けば3選手共に日本人レスラーである。
僕はここで、“キング・オブ・ストロングスタイル”とも“制御不能のカリスマ”とも違う“Y2J”が作るIWGPインターコンチネンタル王座としてのあり方を感じた。
新日本プロレスの“日本人”レスラーを世界へ
これまで“白いベルト”は大関のベルトという認知が一般的だった。だからこそ、中邑真輔選手も内藤哲也選手もどうすればIWGPヘビー級ベルトよりも注目を集めることができるのか。この点にこだわってきた。
クリス・ジェリコ選手は2人と違う考え方で、今後の防衛ロードを歩む予感がする。
それは新日本プロレスの“日本人”レスラーを世界に発信し、新日本プロレス自体の価値を高めるということだと思う。
・IWGP USヘビー級ベルトは、“ガイジン”レスラーを中心に「NEW JAPAN PRO-WRESTLING(NJPW)」を広げるためのベルト
・IWGPインターコンチネンタルベルトは、クリス・ジェリコ選手が“日本人”レスラーと戦うことで、「新日本プロレス」の名前をより普及させるために存在するベルト
この棲み分けが進むと考えられる。
クリス・ジェリコ選手はケニー・オメガ選手、内藤哲也選手とハードコアマッチを繰り広げた。あの試合展開は“あっちの団体”では不可能なことである。
「新日本プロレスは、非常に刺激的でレベルの高いレスラーの戦いが繰り広げられる最高の団体だ」
世界2位のプロレス団体を自身の手で飛躍的に成長させる。これが、クリス・ジェリコ選手のモチベーションなのではないだろうか。
そのためには、世界がまだ知らないレスラーと戦う必要がある。
十分な力を持ちつつ、未だその価値が世界に轟いていない選手。そう、“闇の王”とクリス・ジェリコ選手の戦う日は近い。
新日本プロレスの海外戦略は加速している。
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