YOSHI-HASHIのベストバウトは石井智宏によって生まれるか?
新日本プロレス春の祭典「ニュージャパンカップ2019」の準々決勝がスタートする。
熾烈きわまる戦いの中、ベストエイトに残ったのは石井智宏選手、YOSHI-HASHI選手、オカダ・カズチカ選手、ウィル・オスプレイ選手。
棚橋弘至選手、ザック・セイバーJr.選手、コルト・カバナ選手、SANADA選手の計8人。
内藤哲也選手やジュース・ロビンソン選手、EVIL選手、デイビーボーイ・スミスJr.選手の一回戦敗退。飯伏幸太選手、鈴木みのる選手、ランス・アーチャー選手の2回戦敗退など思わず目を見張るサプライズもあるが、実力者が揃った形となっている。
この8強で、ある種他の選手とは異なる強いプレッシャーを感じている選手が一人いると僕は思っている。そう、「CHAOS」のYOSHI-HASHI選手だ。
なぜならば、準々決勝の相手が石井智宏選手だからかだ。
“名勝負製造機”。この二つ名に相応しい好勝負と激闘を「ニュージャパンカップ2019」でも石井智宏選手は繰り広げてきた。
新日本プロレスのプロレスラーであるならば、MSGが懸かった今回のトーナメントでテッペンを目指すのは当然のこと。
YOSHI-HASHI選手にしてもジェイ・ホワイト選手に借りというか何か心に抱えているものがあるだろう。
ただし、勝った負けたそんな小さいことで競い合わないのもプロレスである。
相手が石井智宏選手であるならば、結果以上にこだわらなければならないものがあるのだ。
名勝負製造機の軌跡
石井智宏選手は永田裕志選手とタイチ選手を破り、準々決勝へと駒を進めた。これまでの試合を見ても2試合共に大会ベストバウト休憩であり、誰しもが納得という形で勝ち進んでいる。
正直、僕はタイチ選手が勝利を掴むと思っていた。永田裕志選手との激闘を制した後の一戦。蓄積されたダメージが抜けきらない中でタイチ選手を迎える事は相当な覚悟が必要だったに違いない。
だが、新技の聖帝十字陵(ストレッチプラム)すらも解禁したタイチ選手を石井智宏選手は退けた。
もはやここまで来ると勢いが出てくると僕は思っている。
海外での人気も抜群な石井智宏選手であれば、MSGでの話題性もバッチリ。満を辞してベルトを巻くのはここなのかもしれない。
そんな気力みなぎる石井智宏選手の前に立つのがYOSHI-HASHI選手である。
応援したくなるという輝く才能。会場人気があるという事実の前にある、プロレスラーとしての実力を改めて試される時が来た。
2017年の対決
「G1CLIMAX 27」 2017年7月26日 宮城・仙台サンプラザホールで石井智宏選手とYOSHI-HASHI選手は激突している。
改めてこの試合を見てみた。
GK金沢さんが解説席に座ったこの試合。言葉の節々にYOSHI-HASHI選手への叱咤激励が混じっていた。
石井智宏選手が試合に求めるのは結果、内容、インパクト。この3つが揃わなければ、“”クソみたいな試合だ」と自分自身で一喝する。
石井智宏選手のテーマはブレることがない。真っ直ぐ素直に全力でぶつかれば、それ以上の熱で返してくる。
そんな石井智宏選手だからこそ、YOSHI-HASHI選手はベストバウトを見せなければならないのだ。
ロックアップから始まったこの一戦はエルボーや逆水平の打ち合いとなった。
先日の前哨戦でもそうだが、YOSHI-HASHI選手は逆水平であれば、石井智宏選手に打ち勝てるだけの力を持っているのである。
そして、石井智宏選手の弱点とも言える首と肩を一気に攻めることができるのが、バタフライロックである。
じわじわとダメージを与え、バタフライロックで勝利を狙う。今回もこの戦法が予想される。
だが、僕がYOSHI-HASHI選手で見たい景色は別にあるのだ。
あなたの耐え切る姿が勇気を生む
YOSHI-HASHI選手の試合を見ていて、あることに気付いた。割と早い段階で打ち合いを止めてしまう傾向があるのである。
逆水平やエルボーは打ち合えるが、その他の打ち合いが石井智宏選手と対峙するには短い。
GK金沢さんの言葉を借りるのであれば「足りない」になる。
無尽蔵のスタミナと鉄壁の打たれ強さを誇る石井智宏選手に勝利を掴むにはどこかで歯車を狂わせるしかない。
独特の間ですら石井智宏選手の前には意味を持たない。純粋に打ち合って、意地で上に行くしかないのだ。
復帰してからの変化
YOSHI-HASHI選手は2018年下期のの負傷によりしばらくの間欠場期間に入った。
2019年のイッテンゴで復帰戦を行なったが、ジェイ・ホワイト選手の前に砕け散った。
あの日、YOSHI-HASHI選手はオカダ・カズチカ選手を裏切るつもりだったらしい。公式サイトからは消えたが、ファンの間では周知の事実である。
結果、アクシデントにより裏切る事はなかった。今、裏切らなかった道を歩んでいる以上、裏切った道を超えるインパクトを残す必要があるのである。
だが、春を迎えた現在でも大きなインパクトを残すことができていない。
勝負はここだ。「CHAOS」の盟友である石井智宏選手を結果、内容、インパクトで上回り勝利すれば一気に潮目を変えることができる。
そのための意思表示として、石井智宏選手との前哨戦から熱くバチバチのスタイルを貫いている。
物事が変わるのは一瞬。YOSHI-HASHI選手が石井智宏選手を試合内容で超えることはできるのか。
運命のゴングが鳴るのは今日だ。